あなたの周りに、やってもらって当たり前という態度の人はいませんか。
それは職場の上司や同僚、あるいは大切な友達かもしれません。
もっと身近な家族、例えば旦那や彼氏、さらには親や子供との関係で悩んでいる方もいるでしょう。
人に感謝できない心理はどこから来るのでしょうか。
その背景には、個人の育ちや環境が影響していることもあります。
このような態度を放置すれば、関係が悪化し、孤立という悲しい末路を辿る可能性も否定できません。
中には、本人の性格だけでなく、改善が難しい病気が隠れているケースも考えられます。
この記事では、やってもらって当たり前と感じる人への具体的な対処法について、その心理や原因から詳しく解説します。
- 「やってもらって当たり前」な人の心理的背景がわかる
- 関係性別(家族、職場など)の具体的な接し方が学べる
- 感謝の気持ちを育むための長期的なアプローチを理解できる
- 自分自身のストレスを軽減するヒントが得られる
「やってもらって当たり前」な人の心理と原因への対処法

この章では、「やってもらって当たり前」という態度の根底にある心理や、その価値観が形成されるに至った原因について掘り下げていきます。
相手の行動の背景を理解することは、適切な対処法を見つけるための第一歩です。
- 人に感謝できない心理は?
- 「やってもらって当たり前」は育ちが関係するのか
- 親の過干渉が子供に与える影響
- 感謝を知らない人の悲しい末路とは
- その思考は改善の余地がない病気か
人に感謝できない心理は?

人に感謝できない、あるいは「やってもらって当たり前」と感じてしまう心理の根底には、主に2つの対照的なパターンが存在します。
一つ目は、これまで何でも与えられてきたことで「特権意識」が根付いてしまったパターンです。
幼少期から親に手厚く保護され、欲しいものは何でも手に入り、失敗する前に先回りして助けられてきたような環境で育つと、「他者は自分のために何かをしてくれるのが当然」という価値観が形成されやすくなります。
このタイプは、悪気なく他者への要求が高くなりがちで、与えられることを愛情だと捉える傾向が見られます。
二つ目は、一つ目とは正反対に、これまで十分に与えられず、むしろ自分が「やってあげる側」として頑張り続けてきたパターンです。
特に長子(長女)に多く見られる傾向で、幼い頃から親や兄弟の世話をするなど、常に我慢や自己犠牲を強いられてきました。
この場合、満たされなかった愛情や承認欲求が心の奥底に溜まっており、その渇望感から、いくら他者に何かをしてもらっても「これくらい当然だ」と感じてしまうのです。
自分の頑張りが評価されなかった過去があるため、他者の努力に対しても厳しくなりがちです。
これらの心理的背景には、自己肯定感の低さが共通して隠れている場合があります。
特権意識タイプは他者からの奉仕によってしか自分の価値を測れず、自己犠牲タイプは他者からの尽力によって過去の自分の苦労を埋め合わせようとするのです。
| パターン | 主な特徴 | 心理的背景 |
|---|---|---|
| 特権意識タイプ | ・他者への要求水準が高い ・与えられることを愛情と考える ・悪気がないことが多い | ・過保護な環境で育った ・失敗経験が少ない ・他者からの奉仕で価値を感じる |
| 自己犠牲タイプ | ・何をしてもらっても満足できない ・他者の努力を認めにくい ・不満や悲しみを抱えている | ・愛情や承認欲求が未充足 ・長年「やってあげる側」だった ・過去の頑張りを補償してほしい |

「やってもらって当たり前」は育ちが関係するのか

結論から言うと、「やってもらって当たり前」という価値観の形成には、その人の育ち、特に幼少期の家庭環境が大きく関係しています。
人間の基本的な価値観や他者との関わり方の雛形は、主に親との関係性の中で築かれるためです。
前述の通り、親が子供に対して過剰に尽くす「過干渉」な育て方をした場合、子供は「自分は特別で、周りが世話を焼いてくれるのは当たり前」という考え方を身につけてしまう可能性があります。
親が子供の失敗を恐れるあまり、何でも先回りして問題を解決してしまうと、子供は自分で困難を乗り越える力や、他者の助けに対する感謝の気持ちを学ぶ機会を失います。
逆に、親が子供に無関心であったり、子供に過度な責任を負わせたりする環境で育った場合も問題が生じることがあります。
例えば、本来は親が担うべき家事や兄弟の世話を押し付けられてきた子供は、「自分はずっと損をしてきた」という強い不満を抱えることになります。
この満たされなかった思いが、大人になってからパートナーや友人に対して「今までしてもらえなかった分を返してほしい」という過剰な期待や要求につながるのです。
このように、甘やかされすぎても、厳しくされすぎても、他者との健全なギブアンドテイクの関係を築く上で土台となる「感謝」の感覚が歪んでしまうことがあります。
なお、親の養育態度(とくに過保護・過干渉)が若年成人の自己肯定感に影響しうる、という結果が示されています。
親の過干渉が子供に与える影響

親による過干渉は、子供の健全な成長に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、自立心や他者への感謝の気持ちを育む上で大きな障害となります。
過干渉な親は、子供の人生のあらゆる側面に介入しようとします。
例えば、友達付き合い、部活動、進路選択、さらには就職や結婚に至るまで、子供自身の意思を尊重せずに親の価値観を押し付けようとします。
これは「子供のため」という愛情から出発していることが多いのですが、結果として子供から自己決定の機会を奪うことになります。
自分で考えて行動し、時には失敗から学ぶという経験を積めなかった子供は、次第に「自分一人では何も決められない」「誰かが何とかしてくれるだろう」という他者依存の思考に陥りがちです。
社会に出て困難に直面したとき、自分で解決策を探すのではなく、親やパートナーといった他者に責任を転嫁したり、過剰な助けを求めたりするようになります。
この結果、恋愛関係や結婚生活において、パートナーに対して親と同じような無条件の愛情や奉仕を求めてしまうケースが少なくありません。
しかし、パートナーは親ではないため、その期待が満たされることはなく、「なぜ何もしてくれないのか」という不満が募り、関係が悪化する原因となってしまいます。
加えて、日本の調査でも、過干渉・過保護(ヘリコプター的養育:過干渉・過保護の養育)が自己決定感(自分で決める感覚)や自己効力感(できる見込み感)を下げ、抑うつと関連するという結果が示されています。
感謝を知らない人の悲しい末路とは

感謝の気持ちを持たず、「やってもらって当たり前」という態度を続ける人は、長期的には人間関係で深刻な問題を抱え、社会的に孤立するという悲しい末路を辿る可能性が高いです。
職場での孤立
職場では、チームワークや相互協力が不可欠です。
誰かの助けに対して感謝を示さず、自分の要求ばかりを押し通す人は、次第に周囲から「関わりたくない人」と見なされるようになります。
結果として、仕事で困っていても誰も助けてくれなくなったり、重要な情報が共有されなくなったりと、業務を円滑に進めることが困難になるでしょう。
最終的には昇進の機会を逃したり、居場所を失って退職に追い込まれたりするケースもあります。
友人関係の破綻
親しい友人関係であっても、一方的な要求や依存は長続きしません。
最初は親切心から助けてくれていた友人も、感謝の言葉一つなく、それが当たり前のように続けば、やがて「利用されているだけではないか」と感じ、精神的に疲弊してしまいます。
次第に距離を置かれるようになり、気づいた時には信頼できる友人が誰もいなくなっている、という事態に陥ります。
家族からの愛想尽かし
最も身近な家族でさえ、無限に甘えが許されるわけではありません。
パートナーや子供、親に対して感謝を忘れ、自己中心的な振る舞いを続ければ、家族間の信頼関係は失われます。
家庭内での会話がなくなり、冷え切った関係になるだけでなく、最悪の場合は離婚や勘当といった、関係の完全な破綻につながることもあり得ます。
このように、感謝の欠如は人間関係の基盤を破壊し、その人を孤独へと追いやる大きな要因となるのです。
その思考は改善の余地がない病気か

「やってもらって当たり前」という思考が極端な場合、「これは性格ではなく、何かの病気なのではないか」と疑問に思うかもしれません。
多くの場合、これは個人の価値観や性格の問題ですが、ごく一部のケースでは精神医学的な課題が背景にある可能性も考慮する必要があります。
性格の問題と精神的な課題の違い
まず重要なのは、安易に「病気」と決めつけることは非常に危険であり、避けるべきだという点です。
大半は、これまでに解説したような生育歴や学習によって形成された「思考のクセ」であり、本人の気づきや周囲との関わり方次第で改善の余地があります。
一方で、他者への共感が著しく欠如し、自分を過大評価し、他者からの称賛や特別扱いを執拗に求める傾向が極端に見られる場合、精神医学的な課題が関連していることも考えられます。
例えば、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)などの特性として、他者を利用することに罪悪感がなく、「自分は特別だから他人が尽くすのは当然だ」と本気で信じている場合があります。
専門家への相談の重要性
もし、相手の言動が単なるわがままの範囲を超え、あなたや周囲の人が深刻な精神的苦痛を感じている場合、専門家の視点が必要になるかもしれません。
ただし、診断は医師にしかできません。
パーソナリティ障害は、その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験及び行動の様式であり、青年期または成人期早期に始まり、長期にわたり持続し、苦痛または機能の障害をもたらします。
あなた自身が対応に疲れ果ててしまった場合や、相手の言動に精神的な課題の可能性を感じた場合は、決して一人で抱え込まず、カウンセラーや心療内科といった専門機関に相談し、適切なアドバイスを求めることが賢明です。
関係別の「やってもらって当たり前」への具体的な対処法

ここからは、相手との関係性別に、より具体的で実践的な対処法を解説します。
パートナー、友人・同僚、家族など、相手によって適切な距離感や伝え方は異なります。
- 旦那や彼氏に感謝の気持ちを持ってもらうには
- 職場や友達との関係を壊さないために
- 家族という甘えが生む問題点
- 子供への接し方で大切なこと
- すぐに実践できる具体的な対処法
旦那や彼氏に感謝の気持ちを持ってもらうには

最も親しい関係であるパートナーに対して「やってもらって当たり前」という態度を取られると、悲しい気持ちになります。
関係を改善するためには、感情的な非難を避け、冷静かつ具体的に働きかけることが重要です。
まず試したいのが、「I(アイ)メッセージ」で自分の気持ちを伝える方法です。
これは、相手(You)を主語にして「なぜあなたは(You)やってくれないの?」と責めるのではなく、私(I)を主語にして「私は(I)~してくれると、とても嬉しいな」と伝えるコミュニケーション手法です。
非難のニュアンスが和らぎ、相手も素直に耳を傾けやすくなります。
次に、こちらから積極的に感謝を伝える習慣をつけることも有効です。
たとえ小さなことであっても、「ゴミ出ししてくれてありがとう」「お仕事お疲れさま」といった言葉をかけることで、家庭内に感謝の文化が育まれます。
あなたの行動が、相手にとって感謝を表現する良い見本となるのです。
それでも改善が見られない場合は、家事や育児のタスクをリストアップして「見える化」し、お互いの貢献度を客観的に話し合う機会を設けるのも一つの方法です。
これにより、あなたがどれだけの負担を担っているかを相手に理解してもらい、不公平感を是正するきっかけになるかもしれません。
こうした家事・育児の時間配分は依然として偏りが大きいことが官公庁データから示されており、共有と対話の土台づくりが有効です。
さらに、日常の言い方を磨きたいときは、相手を尊重しつつ伝えるコツを体系的に学べるアサーティブ会話の実用書がおすすめです。
職場や友達との関係を壊さないために

職場や友人関係においては、パートナーや家族とは異なり、より明確な境界線を引くことが求められます。
健全な関係を維持するためには、一方的な要求に対して毅然と、しかし冷静に対応するスキルが必要です。
断る勇気を持つ
同僚や友人からの不当な要求や過度な頼み事に対しては、はっきりと断ることが大切です。
もちろん、角が立たないような配慮は必要ですが、「できません」「今は手が離せません」と事実を伝えることを恐れないでください。
断る際には、感情的にならず、あくまでも事実として自分の状況を説明するのがポイントです。
代替案を提示する
ただ断るだけでは関係が気まずくなるのではないかと心配な場合は、代替案を提示すると良いでしょう。
「今日中の対応は難しいですが、来週の火曜日なら時間を取れます」「私一人では判断できないので、〇〇さんも交えて相談しませんか」といった提案をすることで、協力する意思があることを示しつつ、無理な要求を回避できます。
以下に、頼まれた際の基本的な対応フローを示します。
| ステップ | 行動 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 傾聴 | まずは相手の依頼内容を最後まで聞く | 途中で遮らず、相手が何を求めているのかを正確に把握する |
| 2. 状況確認 | 自分のスケジュールや状況を確認する | その場で即答せず、「少し確認します」と時間をもらう |
| 3. 判断 | 対応可能か、不可能か、条件付きで可能かを判断する | 自分のキャパシティを超えていないか冷静に判断する |
| 4. 伝達 | 判断結果を、理由とともに冷静に伝える | Iメッセージや代替案を活用し、相手への配慮を忘れない |
このような冷静な対応を繰り返すことで、相手は「この人には無茶な要求は通用しない」と学習し、徐々に関係性が健全なものに変わっていく可能性があります。
言い回しに自信がない場合は、実例ベースで学べる境界線の入門書も役立ちます。
家族という甘えが生む問題点

家族は、社会の中で最も基礎的な人間関係の単位ですが、その親密さゆえに「甘え」が生じやすい場所でもあります。
「何をしても許される」「言わなくても分かってくれるはず」といった過剰な期待が、個人の自立を妨げ、健全な関係を歪めることがあります。
この「甘えの構造」は、多くの場合、親子関係に起因します。
親が子供の世話を焼きすぎれば、子供は親に依存し、自立する機会を失います。
逆に、子供が親の期待に応えようと「良い子」を演じ続ければ、自分の本心を抑圧し、ストレスを溜め込むことになります。
このような関係性が当たり前になると、家族以外の人間関係、例えば結婚生活においても、同じような甘えの構造をパートナーに求めてしまいがちです。
夫が妻に母親代わりを求めたり、妻が夫に父親のような絶対的な庇護を求めたりするのは、その典型例です。
家族だからこそ、お互いを一人の自立した個人として尊重し、感謝の気持ちや礼儀を忘れないことが重要です。
親しい間柄であっても、適切な距離感を保ち、互いの貢献に感謝を伝える意識を持つことが、健全な家族関係を維持する秘訣です。
子供への接し方で大切なこと

子供が「やってもらって当たり前」という思考に陥らないように育てるためには、家庭内での日々の接し方が非常に重要になります。
子供は親の姿を見て社会性を学んでいくため、家庭が感謝と思いやりの基礎を学ぶ最初の場所となります。
まず、年齢に応じた役割やお手伝いを任せることが大切です。
例えば、「自分のおもちゃを片付ける」「食事の時にお箸を並べる」といった小さなことで構いません。
そして、それを実行できたら「ありがとう、助かったよ」「きれいにしてくれて嬉しい」と、具体的に感謝の言葉を伝えてください。
これにより、子供は自分の行動が他者の役に立つ喜びと、感謝される嬉しさを学びます。
また、子供が何かに挑戦して失敗したとしても、決して頭ごなしに叱責しないことが重要です。
「ダメじゃないか」と否定するのではなく、「惜しかったね、次はこうしてみようか」と、再挑戦を促す姿勢を見せましょう。
失敗を恐れずに挑戦できる環境が、子供の自立心と問題解決能力を育みます。
そして何よりも、親自身が手本を示すことが不可欠です。
夫婦間で「ありがとう」「ごめんね」を言い合ったり、店員さんや配達員さんに対して丁寧に接したりする姿を子供に見せることで、感謝の気持ちを表現することが当たり前の文化として家庭に根付いていきます。
すぐに実践できる具体的な対処法

相手の長年の価値観を根本から変えるのは非常に困難です。
そこで、即効性があり、かつ自分自身のストレスを軽減するためには、「相手を変えようとする」のではなく「自分の対応や受け止め方を変える」ことに焦点を当てるのが最も現実的なアプローチです。
期待するのをやめる
まず、「この人は感謝してくれて当然だ」という期待を手放しましょう。
期待するからこそ、それが裏切られた時に怒りや失望を感じるのです。
最初から「この人は感謝を表現するのが苦手な人なのだ」と割り切ってしまうことで、精神的なダメージを大幅に減らすことができます。
物理的・心理的な距離を置く
もし可能であれば、その相手と接する時間や回数を意識的に減らしてみましょう。
会う回数を減らす、連絡をすぐに返さないなど、物理的に距離を置くことで、相手からの要求を受ける機会そのものを減らすことができます。
これは、健全な人間関係に必要な「境界線」を引くための具体的な行動でもあります。
「リンキング」で気づきを促す
これは少し高度なテクニックですが、相手の現在の行動が、将来的ないかに望ましくない結果に繋がるかを気づかせる会話術です。
例えば、何でもやってもらおうとするパートナーに対して、「もし、誰もあなたの言うことを聞いてくれなくなったら、将来どうなると思う?」と、相手の避けたい未来と現在の行動を結びつけて(リンクさせて)質問します。
非難するのではなく、相手に考えさせることで、自発的な変化を促すきっかけになることがあります。
これらの対処法は、相手をコントロールするためのものではなく、あなた自身が振り回されず、心の平穏を保つためのものです。

まとめ:やってもらって当たり前と感じさせないために

この記事で解説してきた「やってもらって当たり前」な人への対処法について、重要なポイントを以下にまとめます。
- やってもらって当たり前な人の心理は主に2パターン
- 過保護に育てられた特権意識タイプ
- 愛情不足からくる承認欲求タイプ
- 根底には自己肯定感の低さが隠れていることがある
- 育ちや家庭環境が価値観の形成に大きく影響する
- 放置すれば人間関係が破綻し孤立する末路も
- 安易に病気と決めつけず冷静に相手を観察する
- 専門家の助けが必要なケースもあることを知っておく
- 関係性ごとに対応を変えるのが上手に付き合うコツ
- パートナーにはIメッセージで自分の気持ちを伝える
- 職場や友人とはアサーティブに境界線を引く
- 家族間であっても甘えの構造を見直し個人として尊重する
- 子供には役割と感謝の習慣を家庭で教えることが重要
- 相手を変えようとするよりも自分の対応を変える方が現実的
- 過剰な期待を手放すことで自分の心の平穏を保つ
- 物理的・心理的に距離を置くことも有効な自己防衛策
- 感謝の気持ちを自分から示すことが巡り巡って良い関係を築く










