「未解決型の愛着スタイル」という言葉を見て、「自分も当てはまるのではないか」「恐れ回避型と同じ意味なのだろうか」と気になった方もいるかもしれません。
ただし、心理学の研究でいう未解決型(unresolved)は、一般的な愛着スタイルのセルフチェックで「4タイプのうちの1つ」として簡単に判定するものではありません。主に成人愛着面接(Adult Attachment Interview:AAI)という半構造化面接で、喪失や虐待などの経験について語るときの思考や語りのまとまり方を専門的に評価する分類です。
そのため、「人を信じるのが怖い」「近づきたいのに避けてしまう」といった日常的な特徴だけから、未解決型だと判断するのは適切ではありません。この記事では、AAIにおける未解決型の意味、一般的な成人愛着の4分類との違い、恐れ回避型との関係を整理します。
- 未解決型が成人愛着面接でどのように位置づけられるか
- 未解決型を判断するときに何が評価されるのか
- 恐れ回避型など一般的な4分類と何が違うのか
- 自己診断で未解決型と決めつけないほうがよい理由
未解決型とは何か

未解決型を理解するうえで最も大切なのは、「人間関係の行動パターン」そのものではなく、成人愛着面接で示される特定の語り方をもとに評価される分類だという点です。
成人愛着面接では、幼少期の養育者との関係、離別、拒絶されたと感じた経験、重要な人との死別、虐待などについて質問し、その内容だけでなく、経験をどのように整理して語っているかも見ます。
未解決型は、とくに喪失や虐待に関する箇所で、推論や語りのまとまりに一時的な大きな乱れがみられる場合に検討されます。研究文献では、こうした特徴は「reasoning(推論)」「discourse(談話・語り)」「behavior(行動)」のモニタリングの一時的な途切れとして整理されています。
ここで重要なのは、つらい経験をしたこと自体が未解決型を意味するわけではないことです。大きな喪失を経験していても、出来事と現在の自分との関係を一貫性のある形で語れる人もいます。反対に、面接全体は落ち着いていても、ある喪失の話題に限って語りが大きく崩れることもあります。
つまりAAIでみる「未解決」は、出来事の有無や感情の強さだけではなく、その話題に触れたときの語りの組織化のされ方に関係しています。
成人愛着面接での位置づけ
AAIの未解決型は、ほかの分類と同じ横並びの「性格タイプ」と考えると分かりにくくなります。まずAAIそのものが何を見ているのかを押さえておきましょう。
AAIは語りの一貫性をみる
成人愛着面接は、幼少期の愛着に関する経験を振り返ってもらい、現在その経験をどのように捉えているかを検討する方法です。
評価では、「良い家庭だったか、悪い家庭だったか」を単純に採点するわけではありません。たとえば幼少期について肯定的に語っていても、具体例がほとんどなく、別の場面ではその説明と矛盾するエピソードが続く場合があります。逆に、厳しい経験を語っていても、その経験を落ち着いて振り返り、複数の視点から整合的に説明できることもあります。
このためAAIでは、経験の内容とともに、説明の具体性、一貫性、質問への応答性、現在の評価の仕方などが重視されます。
基本の3分類に未解決が加わる
AAIの標準的な考え方では、まず愛着に関する心的状態を大きく次の3つに整理します。
| 分類 | 英語表記 | 語りにみられる主な傾向 |
|---|---|---|
| 自律・安定 | Secure/Autonomous(F) | 良い経験も難しい経験も比較的まとまりをもって振り返る |
| 愛着軽視 | Dismissing(Ds) | 愛着経験の重要性を低く扱ったり、理想化と具体的記憶が一致しにくかったりする |
| とらわれ | Preoccupied(E) | 過去の関係への怒りや巻き込まれが現在の語りにも強く入り込みやすい |
そして、喪失や虐待について語る場面で一定以上の未解決の指標が認められると、Unresolved(U)の分類が加わります。
ここが一般的な「4タイプ診断」と異なるところです。未解決に分類された面接でも、全体としてはF・Ds・Eのどれに最も近いかという代替分類が付けられることがあります。つまり、「未解決だから、それ以外の特徴は持たない」という仕組みではありません。研究上も、未解決はF・Ds・Eのいずれと組み合わさる可能性があるものとして扱われます。
さらにAAIには、複数の方略が強く混在して一貫した分類が困難な場合に「Cannot Classify(CC)」が用いられることもあります。この点からも、AAIの分類体系を一般的なセルフチェックの4分類とそのまま対応させることはできません。
未解決型で評価される特徴
未解決型では、「何を話したか」だけでなく「その話題についてどのように考え、どのように語ったか」が細かく検討されます。
推論の一時的な乱れ
代表的なのは、喪失や虐待について話すときに、通常の現実的な推論と合わない説明が一時的に現れることです。
たとえば死別について、文字どおりには成立しない因果関係を自分の考えや行動に結びつけたり、亡くなった事実について現実認識が一時的に揺らぐような語りが現れたりすることがあります。
ただし、比喩や宗教的・文化的な表現、故人を身近に感じる感覚まで一律に「推論の乱れ」とみなすわけではありません。評価には、前後の文脈や本人がその表現をどのような意味で使っているかの検討が必要です。
語りの一時的な乱れ
もう一つは、特定の話題に入った途端に、文章が不自然に途切れたり、話し方が大きく変化したり、説明のまとまりが崩れたりすることです。
重要なのは、単に言葉に詰まったから未解決というわけではないことです。誰でも悲しい出来事を思い出せば沈黙したり、うまく言葉にできなかったりします。AAIでは、その反応がどの程度特徴的か、同じインタビューのほかの部分との違いはどうか、推論や談話の乱れとしてどの程度明確かを総合して評価します。
行動に関する指標
AAIの未解決のコーディングでは、喪失や虐待との関連で報告される極端な行動反応が考慮されることもあります。ただし、これも単独のエピソードだけで機械的に分類するものではありません。
近年の研究では、未解決分類に使われてきた複数の指標について、どの指標が実際にどれほど識別に寄与するのか、心理測定学的な観点から再検討も進められています。したがって、未解決型を「決まった症状のチェックリスト」のように理解するのは避けたほうがよいでしょう。
一般的な4分類との違い
「成人の愛着スタイルは4種類」と聞いたことがある方ほど、未解決型との関係で混乱しやすいかもしれません。実際には、成人愛着研究には複数の測定法と分類モデルがあります。
よく知られる4分類
成人の対人関係を扱う研究では、BartholomewとHorowitzが提案した4カテゴリーのモデルがよく知られています。このモデルでは、自己についてのモデルと他者についてのモデルを組み合わせ、次の4つのプロトタイプを考えます。
- 安定型(secure)
- とらわれ型(preoccupied)
- 愛着軽視型(dismissing)
- 恐れ型(fearful)
日本の一般向け情報では、「不安型」「回避型」「恐れ回避型」など、研究上の名称とは少し異なる呼び方が使われることもあります。また現在の成人愛着研究では、カテゴリーだけでなく「愛着不安」と「愛着回避」という連続的な次元で捉える自己報告尺度も広く使われています。
AAIとは測っているものが違う
一般的な自己報告式の愛着尺度では、「親密になることが怖い」「相手に見捨てられないか不安になる」など、現在の対人関係での感じ方や行動傾向を本人が回答する形式が中心です。
一方AAIでは、幼少期の愛着経験に関する語りを面接者が引き出し、訓練された評価者が談話の構造や一貫性をコードします。
違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | AAIの未解決分類 | 一般的な成人愛着スタイル尺度 |
|---|---|---|
| 主な方法 | 半構造化面接と逐語記録の専門評価 | 質問紙・自己報告が中心 |
| 主に見るもの | 愛着経験についての現在の心的状態と語りの組織化 | 親密な関係での不安・回避など |
| 未解決の判断 | 喪失・虐待の話題での特定の推論・談話の乱れ | 通常は同じ方法では測定しない |
| 自己判定 | 想定されていない | 尺度によっては自己回答が可能 |
| 恐れ回避型との関係 | 同一ではない | 4カテゴリーの一つとして扱われることがある |
同じ「愛着」という言葉を使っていても、測定方法が違えば、分類の意味も同じではありません。検索で複数の記事を読むときは、その情報がAAIについて説明しているのか、自己報告式の愛着スタイルについて説明しているのかを確認すると混乱しにくくなります。

恐れ回避型とは同じではない
未解決型と恐れ回避型は、インターネット上で同じもののように説明されることがありますが、研究上は単純に同一視できません。
恐れ型・恐れ回避型は、主に成人の親密な関係で「自分は受け入れてもらえないかもしれない」「他者は信頼できないかもしれない」と感じやすく、親密さを望みながら距離も取りやすい、といった対人関係の特徴を説明する文脈で使われます。
これに対してAAIの未解決分類は、現在の恋愛行動を直接チェックして決めるのではなく、喪失や虐待について語る場面での推論や談話の一時的な乱れを評価します。
そのため、次のような置き換えは避けたほうが適切です。
- 「近づきたいのに逃げるから未解決型」
- 「恋愛で回避するから未解決型」
- 「不安型と回避型の両方があるから未解決型」
- 「トラウマがあるから未解決型」
これらは、AAIの判定基準そのものではありません。
もちろん、ひとりの人に複数の特徴が重なる可能性はあります。たとえば自己報告尺度では愛着不安と回避がともに高く、AAIでは未解決に分類される人も理論上はあり得ます。しかし、それは「恐れ回避型=未解決型」という意味ではなく、異なる方法で測った結果が同じ人の中に併存することがあるということです。
愛着について自分を理解したいときは、「私は何型か」だけで結論を出すよりも、親密な関係で何が不安になりやすいか、距離を取りたくなるのはどんな場面か、安心できる相手や状況は何かを具体的に見ていくほうが、日常生活では役立つことがあります。

自己診断しないほうがよい理由

「未解決型の特徴」を検索して、自分に当てはまる項目の数を数えたくなることもあるでしょう。ただ、AAIの未解決分類ではその方法は適していません。
文脈を含めて評価するから
「言葉に詰まる」「話が飛ぶ」「記憶が曖昧」といった現象は、疲労、緊張、悲しみ、面接への慣れ、不安など、さまざまな理由で起こります。
未解決のコーディングでは、特定の語句が出たかどうかではなく、何について語っている場面なのか、前後の発言とどうつながっているのか、面接全体の語りと比べてどの程度際立っているのかを見ます。
一部分だけを切り取って自己採点すると、本来の評価方法とは別のものになってしまいます。
訓練された評価者が必要だから
AAIは、質問票に回答して合計点を出す一般的な心理テストとは異なります。面接を逐語化し、専門的なコーディング体系に沿って評価するため、正式な研究・臨床利用では訓練と信頼性の確認が重視されます。
そのため、一般向けの簡単な「未解決型チェック」がAAIと同じ分類を再現できるとは考えないほうがよいでしょう。
医学的な診断名ではないから
未解決型は、うつ病、PTSD、解離性障害などの医学的な診断名ではありません。また、未解決に分類されたからといって「心の傷が治っていない」「治療が必要だ」と自動的に判断されるわけでもありません。
反対に、AAIで未解決に分類されないから、現在の苦痛やトラウマ関連症状が軽いと判断できるわけでもありません。AAIと精神医学的評価は目的が異なります。
未解決は固定された性格ではない
「未解決型」という日本語だけを見ると、一生変わらない性格分類のように感じるかもしれません。しかし、AAIが評価しているのは、愛着に関する現在の心的状態(state of mind)です。
これは「生まれつきこういう性格である」という意味とは異なります。人の経験の捉え方や語り方は、時間の経過、生活環境、安全な人間関係、心理的支援、新しい経験などによって変化する可能性があります。
また愛着研究全体でも、カテゴリーだけで人を完全に説明できるわけではありません。ある人が恋愛では不安を感じやすくても、友人関係では比較的安心して関われることがあります。特定の相手との関係だけで回避的になることもあります。
未解決という言葉を、あなた自身の人格全体を表すラベルにしないことが大切です。
「私は未解決型だから恋愛がうまくいかない」「この分類だから親になったら必ず問題が起きる」といった決めつけも避けましょう。研究で集団レベルの関連が示されることと、個人の未来を予測できることは同じではありません。
愛着を自己理解に生かす見方
未解決型かどうかを確定することより、愛着という考え方を自分の生活にどう役立てるかのほうが大切な場合もあります。
ラベルより場面を見る
まず、「何型か」ではなく「どんな場面で何が起こるか」を観察してみます。
たとえば、次のように具体化すると、自分の傾向を捉えやすくなります。
- 返信が遅いと、見捨てられたように感じる
- 親しくなるほど、自分から距離を取りたくなる
- 相手に頼りたいのに、頼ることを恥ずかしく感じる
- 意見の違いがあると、関係そのものが壊れるように感じる
- 安心して本音を話せる相手もいる
最後の項目も大切です。困りごとだけではなく、安心できる条件も同時に見つけると、自分を一面的に捉えにくくなります。
過去と現在を分けて考える
幼少期の経験は、現在の人間関係を考える手がかりになることがあります。ただし、過去の出来事から現在のすべてを説明しようとすると、「私はこうなるしかなかった」という固定的な見方になりやすくなります。
過去に何があったかと同時に、今のあなたが何を大切にしているか、どんな関係を選びたいか、どんな距離感なら安心できるかを見ることも必要です。
診断より選択肢を増やす
愛着の知識は、自分を分類するためだけのものではありません。「この反応が出たときに、いつもと違う選択肢はあるだろうか」と考えるためにも使えます。
たとえば、相手の返信が遅いと強い不安が出るなら、すぐに結論を出す前に、自分が想像していることと確認できている事実を分ける方法があります。親密になると距離を取りたくなるなら、完全に関係を切るか我慢して近づくかの二択ではなく、「今は少し考える時間がほしい」と伝える選択肢もあります。
愛着の知識を使う目的は、自分や相手にラベルを貼ることではなく、反応のパターンに気づいて選択肢を増やすことです。「この型だから仕方がない」ではなく、「こういうとき私は反応しやすい。では、どうすると少し安心できるだろう」と考えてみてください。
研究上の注意点

未解決型は長く使われてきた重要な研究概念ですが、その測定法をめぐる検討が終わったわけではありません。
AAIの未解決分類は、もともと特定の面接データから形成され、その後多くの研究で利用されてきました。一方で近年は、個々の未解決指標がどの程度頻繁に現れるのか、どの指標が分類に強く関係するのか、現在のコーディング規則が心理測定学的にどの程度支持されるのかといった再検討も行われています。大規模データを使った研究でも、いくつかの指標は非常にまれであり、未解決という構成概念をより精密に検討する必要性が指摘されています。
これは「未解決型という概念は意味がない」ということではありません。心理学の尺度や分類は、使われながら信頼性・妥当性・理論的な位置づけを継続して検証していくものです。
読者としては、未解決型について「科学的に完全に確定した4つ目の性格タイプ」と考えるのでも、「研究上まったく意味のない言葉」と切り捨てるのでもなく、AAIという特定の方法の中で定義され、研究が続いている分類として理解するのが適切です。

未解決型のよくある質問
- 未解決型は愛着スタイルの4タイプの一つですか?
-
一般的な意味での「成人愛着スタイル4タイプ」の一つと単純にはいえません。
AAIでは、Secure/Autonomous、Dismissing、Preoccupiedという基本的な分類に加え、喪失や虐待についての語りに特定の乱れがみられる場合にUnresolvedが付与されます。一方、Bartholomewらの4カテゴリーではSecure、Preoccupied、Dismissing、Fearfulという別のモデルを用います。
「4つある」という数だけで同じ分類体系だと考えないことが大切です。
- 未解決型と恐れ回避型は同じですか?
-
同じではありません。
恐れ回避型は、親密さを求める気持ちと他者への不信や回避が重なりやすい対人パターンを説明する文脈で使われます。AAIの未解決は、喪失や虐待について語るときの推論や談話の一時的な乱れを専門的に評価します。
測定方法と定義が違うため、相互に置き換えることはできません。
- トラウマがある人は未解決型になりますか?
-
トラウマや大きな喪失を経験したことだけでは、未解決型とは判断されません。
AAIでは、その経験について話したときにどのような語りが現れるかを評価します。また、臨床的な意味でのトラウマ反応やPTSDの診断と、AAIの未解決分類は別のものです。
現在つらい症状がある場合は、愛着分類よりも、その症状や生活上の困難に合った支援を考えることが優先されます。
- 未解決型は無料診断で分かりますか?
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AAIと同じ意味での未解決分類を、短い無料診断だけで正確に判断することは難しいです。
一般向けの愛着診断は、自分の対人関係での不安や回避傾向を振り返るきっかけにはなりますが、AAIの面接・逐語記録・専門的コーディングとは方法が異なります。
診断結果を見るときは、「何を測っている尺度なのか」を確認してください。
- 未解決型なら変わることはできませんか?
-
未解決型を固定的な人格ラベルとして考える必要はありません。
AAIは「愛着に関する現在の心的状態」を評価する方法であり、人の経験の捉え方や人間関係の築き方には変化の余地があります。重要なのは、分類名だけで将来を決めつけず、今の生活で困っている反応や、安心できる関係の条件を具体的に見ていくことです。
まとめ
未解決型の愛着スタイルという言葉は、一般的なセルフチェックの「愛着4タイプ」の一つとして理解すると誤解しやすくなります。
研究上の未解決型は、成人愛着面接(AAI)で、主に喪失や虐待について語る際にみられる推論や談話の一時的な乱れを、訓練された評価者が専門的に検討して付与する分類です。つらい経験があること、人間関係で不安になりやすいこと、親密になると距離を取りたくなることだけでは判断できません。
また、恐れ回避型とも同じ概念ではありません。恐れ回避型などの成人愛着スタイルは現在の対人関係傾向を自己報告などで捉えることが多いのに対し、AAIは幼少期の愛着経験についての語りの構造を評価します。
愛着について知るときは、分類名を自分に当てはめて終わるのではなく、「私はどんな場面で不安になりやすいのか」「どんな距離感なら安心できるのか」「本当は相手とどう関わりたいのか」を考える手がかりとして使うのがおすすめです。


