認知バイアスの代表的な実験とは?心理学研究からわかる判断の特徴

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認知バイアスの代表的な実験とは?心理学研究からわかる判断の特徴

「認知バイアスがある」と聞いても、実際にどのような実験で確かめられてきたのかが分からないと、少し抽象的に感じるかもしれません。

心理学では、質問の表現を変える、判断の前に特定の数字を見せる、記憶しやすさを操作するといった方法を使い、人の判断がどのように変化するのかを調べてきました。そこから見えてくるのは、私たちがいつも不合理だということではありません。むしろ、限られた時間や情報の中で効率よく考える仕組みが、ときに判断の偏りとして現れるということです。

この記事では、認知バイアス研究でよく知られている実験を取り上げ、方法、結果、そこから何が分かるのかを整理します。同時に、古典的な実験をそのまま「人間の普遍的な法則」と考えないための注意点も確認していきます。

記事の監修者

株式会社ココロザC代表取締役。カラーセラピスト・心理カウンセラーとして活動。
日本初の「カラットセラピー」を創生。相談実績は延べ20,000人以上。
カラットセラピスト育成実績は800名以上。

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この記事を読むと分かること
  • 認知バイアスを調べる心理実験の基本的な考え方
  • アンカリングやフレーミングなどを示した代表的な実験
  • 実験結果から分かる人間の判断の特徴
  • 再現性や研究条件を含めて結果を読むときの注意点
目次

認知バイアスの実験とは

認知バイアスの実験では、判断に影響しそうな条件を研究者が変え、その違いによって参加者の回答がどのように変化するかを調べます。

たとえば、まったく同じ結果を「200人が助かる」と表現する場合と「400人が亡くなる」と表現する場合を比較します。内容が実質的に同じであるにもかかわらず選択が変われば、情報の提示方法が判断に関係している可能性を検討できます。

このような研究で重要なのは、単に「間違えた人がいた」と数えることではありません。条件を変えたときに、集団全体として一定の方向へ判断が動くかを見る点にあります。

心理学でいう「バイアス」も、人格上の欠点という意味ではありません。判断や記憶、注意などに現れる、一定の傾向を指す言葉として使われています。

実験は「全員がそうなる」証明ではない

心理実験の結果を見るときに、最初に押さえておきたいことがあります。

ある実験で多数の参加者に特定の傾向が見られたとしても、「誰でも必ず同じ認知バイアスに陥る」という意味にはなりません。参加者、課題の表現、知識、文化、回答方法などによって結果は変わる可能性があります。

また、実験で観察された結果と、その結果を説明する心理的な仕組みも分けて考える必要があります。同じ現象について、後の研究で異なる説明が提案されることもあります。

心理実験は、人を「合理的な人」「バイアスの強い人」と分類するための性格診断ではありません。特定の条件でどのような判断傾向が生じやすいかを調べる研究として読むことが大切です。

代表的な認知バイアス実験

認知バイアス研究には数多くの実験があります。ここでは、判断と意思決定の研究で特によく知られている5つを取り上げます。

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実験関連する考え方主に分かること
ルーレットの数字と推定アンカリング最初に見た数値が後の推定に影響することがある
疾病対策の選択問題フレーミング効果同じ内容でも表現によって選択が変わることがある
リンダ問題代表性・連言錯誤もっともらしい説明が確率判断に影響することがある
有名人の名前の実験利用可能性ヒューリスティック思い出しやすさを頻度と取り違えることがある
2・4・6課題仮説検証の偏り自分の仮説を確かめる情報に偏ることがある

それぞれ、実際にどのような方法で調べられたのかを見ていきましょう。

アンカリングの実験

アンカリングとは、判断をするとき、先に示された数値などが「錨(アンカー)」のように基準となり、その後の推定が引っ張られる現象です。

Amos TverskyとDaniel Kahnemanが1974年に報告した研究は、アンカリングを説明するときによく紹介されます。

参加者には、0から100までの数字が書かれたルーレットを回してもらいました。しかし、実際にはルーレットが止まる数字は「10」または「65」になるよう設定されていました。

その後、

「国連加盟国のうちアフリカの国が占める割合は、今出た数字より高いですか、低いですか」

と尋ね、さらに実際の割合を推定してもらいました。

本来、ルーレットの数字と国連加盟国の構成には関係がありません。それでも、10を見たグループの推定値の中央値は25、65を見たグループでは45となりました。先に目にした無関係な数字によって、その後の数値判断が異なる方向へ動いたのです。TverskyとKahnemanは、代表性、利用可能性、アンカリングなどのヒューリスティックについて1974年の論文で整理しています。

この実験から分かること

私たちは数値をゼロから完全に独立して推定するとは限りません。すでに与えられた数字を出発点として考え、そこから調整することがあります。その調整が十分でなければ、最初の数字の影響が残る可能性があります。

日常でも、最初に提示された価格、予算、目標値、過去の実績などが、その後の判断基準になっていることがあります。

ただし、「数字を一度見れば必ず影響される」という意味ではありません。何を推定するか、アンカーがどのように示されるか、知識があるかなどによって影響の程度は変わります。

ワンポイントアドバイス

大きな金額や重要な数値を判断するときは、最初に提示された数字から考え始めるだけでなく、「この数字を最初に見ていなかったら、私はいくらだと考えただろう」と問い直してみる方法があります。

フレーミング効果の実験

フレーミング効果とは、実質的には同じ情報でも、どのような表現で示されるかによって選択が変わる現象です。

TverskyとKahnemanが1981年に報告した有名な研究では、600人の命が危険にさらされる架空の疾病対策について、参加者に2つの選択肢を示しました。

一方のグループには、結果を「助かる人数」で表現しました。

  • A:200人が確実に助かる
  • B:3分の1の確率で600人全員が助かり、3分の2の確率で誰も助からない

この条件では、152人の参加者のうち72%がAを選択しました。

別のグループには、同じ状況を「亡くなる人数」で表現しました。

  • C:400人が確実に亡くなる
  • D:3分の1の確率で誰も亡くならず、3分の2の確率で600人全員が亡くなる

こちらでは、155人の参加者のうち78%がDを選びました。

AとC、BとDは、人数と確率の上ではそれぞれ対応する結果を示しています。それにもかかわらず、「助かる」と表現された条件では確実な選択肢が好まれ、「亡くなる」と表現された条件では確率を伴う選択肢が好まれました。

この実験から分かること

選択肢を理解するとき、私たちは数字だけを機械的に処理しているわけではありません。「得られるもの」として見るのか、「失うもの」として見るのかといった基準も判断に関係します。

たとえば、

  • 成功率90%
  • 失敗率10%

は数学的には対応しています。しかし、受ける印象まで必ず同じになるとは限りません。

商品説明、医療情報、契約、仕事上の提案など、重要な判断をするときには、一方向の表現だけでなく、反対側から表現し直してみることが役立つ場合があります。

リンダ問題と確率判断

リンダ問題は、人が確率を考えるときに「どれくらい典型的に見えるか」に影響される可能性を示した実験として知られています。

TverskyとKahnemanが1983年に報告した研究では、架空の人物リンダについて、学生時代の関心や行動などを説明する文章を参加者に読んでもらいました。

そのうえで、次のような選択肢のどちらが起こりそうかを判断します。

  • リンダは銀行員である
  • リンダは銀行員であり、かつフェミニスト運動に積極的である

確率のルールだけで考えれば、「銀行員かつフェミニスト」である人は必ず「銀行員」に含まれます。

つまり、

銀行員である確率 ≥ 銀行員であり、かつフェミニストである確率

でなければなりません。

ところが、実験のある条件では85%の参加者が、二つの条件を組み合わせた後者をより確からしいと判断しました。このように、一つの出来事よりも複数の条件が同時に成立する出来事を高い確率だと判断してしまう現象は「連言錯誤」と呼ばれます。

なぜ詳しい説明のほうが正しそうに見えるのか

この結果を説明する考え方の一つが「代表性ヒューリスティック」です。

人物について詳しい説明を読むと、「この人物像にはこちらのほうが合っている」と感じることがあります。その「人物像との一致しやすさ」が、確率そのものの判断に入り込む可能性があります。

これは、詳しい話はすべて疑うべきだという意味ではありません。具体的な説明は理解を助けることもあります。

大切なのは、「納得できる物語」と「統計的に起こりやすいこと」は同じではないと知っておくことです。

たとえば、「責任感があり、人と話すのが好きなので営業職で成功している人だろう」という説明は自然に感じられても、その人が実際にどの職業であるかを判断するには、別の情報が必要です。

思い出しやすさの実験

利用可能性ヒューリスティックとは、思い出しやすい出来事ほど頻繁に起きている、あるいは起こりやすいと感じる傾向を説明する考え方です。

TverskyとKahnemanは1973年の研究で、記憶のしやすさと頻度判断の関係を調べています。

その一つでは、有名人の名前と、それほど有名ではない人物の名前を組み合わせた39人分のリストを参加者に聞かせました。

リストの一方のカテゴリーには「有名な人物19人」、もう一方には「それほど有名ではない人物20人」が含まれていました。つまり、実際の人数では後者のほうが一人多い設定です。

ところが、男女どちらの名前が多かったかを判断した99人のうち80人が、有名な人物が含まれていたカテゴリーのほうが多かったと誤って判断しました。

別の参加者に名前を思い出してもらうと、有名な名前は平均12.3人、知名度の低い名前は平均8.4人想起されました。研究者たちは、このような「思い出しやすさ」が頻度判断の手がかりになっている可能性を論じました。

日常で起こりうる判断との関係

この仕組みを考えると、印象に残る出来事を実際より多く感じる場合があることも理解しやすくなります。

たとえば、最近同じ失敗が何度か強く印象に残っていると、

「私はいつも失敗している」

と感じるかもしれません。しかし、「いつも」という感覚と、実際の回数が一致しているとは限りません。

反対に、うまくできた日が日常的で特に印象に残っていないため、それを思い出せていないこともあります。

ここで重要なのは、感情を否定することではありません。

「そう感じている」ということと、「実際にどれくらいの頻度で起きているか」ということを、いったん分けて考えてみることです。

ワンポイントアドバイス

「いつも」「絶対」「みんな」と感じたときは、実際の出来事を3件ほど具体的に思い出してみると、印象と事実を分けやすくなります。気持ちが間違っていると否定するのではなく、判断材料を少し増やす方法として試してみてください。

2・4・6課題と仮説検証

自分の考えに合う情報を集めやすい傾向を説明するとき、「確証バイアス」という言葉がよく使われます。その研究史でよく紹介されるのが、心理学者Peter Wasonによる1960年の「2・4・6課題」です。

実験では、参加者に「2、4、6」という3つの数字を示し、この並びが研究者の決めたルールに従っていると説明しました。

参加者は、自分で3つの数字の組み合わせを提案できます。研究者は、その組み合わせが正しいルールに合っているかどうかだけを答えます。参加者はそれを繰り返しながら、本当のルールを推測します。

たとえば、

「2ずつ増えている数字だ」

と考えた人が、

  • 8、10、12
  • 20、22、24

などを試せば、どちらもルールに合うと答えられます。

しかし、これだけでは「2ずつ増える」という仮説が本当に正しいかどうかは分かりません。

実際のルールは、より広い「数字が増加する並び」でした。そのため、

  • 3、8、20

のような並びもルールに合います。

反対に、

  • 10、8、6

などを試せば、自分の仮説と本当のルールを区別する手がかりを得られます。

Wasonの実験では29人のうち、最初から誤ったルールを述べずに正しい結論へ到達した参加者は6人でした。13人は一度、9人は二度以上誤った結論を述べ、1人は結論を出しませんでした。

確証バイアスと同じなのか

この研究は後に確証バイアスの説明で頻繁に引用されるようになりましたが、「2・4・6課題だけで、人は自分に都合のよい証拠しか見ないことが証明された」と理解するのは単純すぎます。

研究者の間では、自分の仮説を肯定する例を試す「肯定的検証方略」など、より細かな説明も検討されてきました。

それでも、この課題が教えてくれる問いは日常でも役立ちます。

「自分の考えが正しいことを示す情報だけでなく、間違っているとしたら何が見つかるはずか」

と考えることです。

仕事の判断なら、「この施策が成功しそうな理由」だけでなく「失敗するとしたらどんな条件か」を考える。人間関係なら、「相手は私を嫌っている」という仮説を裏付ける出来事だけでなく、それと一致しない出来事も確認する、といった使い方ができます。

実験から見える判断の特徴

ここまでの実験を並べると、別々の認知バイアスにも共通する特徴が見えてきます。

判断には手がかりが使われる

人は、すべての情報を毎回ゼロから分析しているわけではありません。

  • 最初に見た数字
  • 表現のされ方
  • 人物像との一致
  • 思い出しやすさ
  • 自分が立てた仮説

などを手がかりとして判断しています。

こうした簡便な判断方法は「ヒューリスティック」と呼ばれます。

ヒューリスティックそのものが悪いわけではありません。日常生活では、限られた時間の中で素早く判断する必要があります。すべての買い物、会話、仕事について統計的な分析をしていたら、生活すること自体が難しくなります。

問題になるのは、手がかりが判断したい対象と十分に一致していない場合です。

ルーレットの数字は国連加盟国の構成とは無関係です。有名人の名前が思い出しやすいことと、リストに何人含まれていたかも別の問題です。

普段は便利な考え方が、条件によって偏りにつながることがある。

認知バイアス研究は、このように理解すると分かりやすくなります。

バイアスを知っても完全には消えない

認知バイアスについて学ぶと、「仕組みを知れば、もう影響を受けなくなる」と考えたくなるかもしれません。

しかし、知識だけであらゆる判断の偏りをなくせるとは限りません。

そこで実生活では、「バイアスをなくす」という目標よりも、重要な判断のときに確認する手順を増やすほうが現実的です。

たとえば、

  1. 最初に示された数字をいったん外して考える
    アンカリングの影響がありそうなら、別の基準から独立して推定します。
  2. 反対の表現に言い換える
    「成功率」だけを見ているなら「失敗率」でも確認します。
  3. 印象と頻度を分ける
    思い出しやすい事例ではなく、可能なら実際の件数を確認します。
  4. 反証になる情報を探す
    自分の仮説と一致する証拠だけでなく、一致しない例も探します。
  5. 判断を少し時間を置いて見直す
    感情が大きく動いている場面では、その場で結論を固定しない方法もあります。

こうした方法は「正しい判断を保証する技術」ではありませんが、自分の見方以外にも判断材料があることに気づきやすくなります。

古典実験を読むときの注意点

有名な心理実験は、認知バイアスを理解する入り口として便利です。しかし、一つの古典研究だけで結論を固定しないことも重要です。

一つの実験は一つの条件での結果

実験には必ず条件があります。

参加者が誰だったのか、どのような言葉で質問したのか、回答方法はどうだったのか、どの国や時代で行われたのかによって、得られる結果が変わる可能性があります。

そのため、

「この実験で効果が出た」 から 「すべての人が、あらゆる場面で同じように行動する」

と広げることはできません。

特に、心理学の有名な実験は説明しやすい形に簡略化されて紹介されることがあります。元の論文では複数の条件や追加実験が行われていることも多いため、研究内容を詳しく確認したい場合は原著論文まで見ることが大切です。

再現性も研究を評価する材料

科学では、同じような条件でもう一度調べたときに同様の結果が得られるかという「再現性」も重要です。

心理学では2015年、Open Science Collaborationが主要な心理学誌に掲載された100件の研究について大規模な追試を行いました。評価方法によって数字は異なりますが、元研究より効果量が小さくなった研究が多く、統計的に有意な結果が再現された割合も元研究より低くなりました。これは「心理学研究は信用できない」という意味ではなく、単一研究ではなく複数の研究を積み重ねて判断する必要性を示す出来事の一つとなりました。

また、この100研究が「すべての心理学研究」を代表しているわけでもありません。再現できたかどうかの定義によって評価が変わる点にも注意が必要です。

「再現されなかった=元の研究が間違いだった」と単純には判断できません。標本の違い、測定方法、実験条件、統計的不確実性など、さまざまな要因を確認する必要があります。

研究は更新されていく

心理学では、古典的な説明を出発点に、新しい実験や統計解析が重ねられています。

その結果、

  • 効果がどの条件で強くなるのか
  • どの条件では弱くなるのか
  • 当初とは別の心理過程で説明できないか
  • 文化や知識による違いがあるのか

といった点が少しずつ明らかになっていきます。

科学的な知識は、一度決まった説明を守り続けるものではありません。新しい証拠によって修正されること自体が、科学の大切な特徴です。

自己理解にどう生かすか

認知バイアスについて学ぶ目的は、「自分の考えは信用できない」と不安になることではありません。

むしろ、自分が何を手がかりに判断しているのかを少し丁寧に見るために役立てられます。

たとえば、人間関係で嫌な出来事が一つ強く残っているとき、

「私は今、印象の強い出来事を中心に考えていないだろうか」

と確認できます。

仕事の提案を評価するときには、

「最初に提示された金額が基準になっていないだろうか」

と問い直せます。

自分自身について、

「私はこういう人間だ」

と思っているときには、

「その考えに合わない出来事もあったのではないか」

と探してみることもできます。

ここで大切にしたいのは、自分の感じ方を否定することではありません。

感情は感情として受け止めながら、その感情から導いた結論については、別の角度からも見てみる。その間に少し余白をつくることが、自己理解につながります。

カラットセラピーでも、答えを一方的に決めるのではなく、自分が何を感じ、どうしたいのかを見つめることを大切にしています。心理や自己理解についてもう少し学びたい方は、無料メール講座を学びのきっかけとして活用する方法もあります。

認知バイアス実験のよくある質問

認知バイアスは実験で証明されているのですか?

さまざまな判断傾向について、心理実験による研究が行われています。ただし、「一つの実験で認知バイアスの存在が永久に証明された」と考えるのは適切ではありません。

科学では、複数の研究、追試、研究条件、効果の大きさなどを合わせて評価します。同じ名前のバイアスでも、条件によって効果の強さが異なる場合があります。

認知バイアスの実験で最も有名なのは何ですか?

一つに決めることはできませんが、アンカリングを調べたルーレットの実験、フレーミング効果を示した疾病対策問題、連言錯誤を調べたリンダ問題などは、判断と意思決定の研究で頻繁に紹介される古典的な実験です。

確証バイアスとの関連ではWasonの2・4・6課題もよく知られています。

実験でバイアスが出た人は論理的思考が苦手なのですか?

そのようには判断できません。

認知バイアスの実験は、参加者の人格や知能を判定するものではありません。人が限られた情報や時間の中でどのような手がかりを使って判断するのかを調べています。

専門知識や課題の形式によって回答が変わることもあるため、一つの問題への回答から個人の能力を決めつけることはできません。

認知バイアスを知れば判断ミスを防げますか?

知識は役立つ可能性がありますが、知っているだけですべての影響を防げるとは限りません。

重要な判断では、「反対の表現でも確認する」「別の基準から数値を考える」「反証となる情報を探す」「実際のデータを見る」といった具体的な手順を用意するほうが実践しやすいでしょう。

古い心理実験でも参考になりますか?

古典研究は、その後の研究の出発点を理解するうえで重要です。ただし、古い研究結果だけで現在の科学的理解を決めるのではなく、その後の追試や議論も含めて見る必要があります。

「有名だから正しい」「再現できなかったから無意味」と二択で考えず、どの条件で、どの程度の結果が得られているのかを見ることが大切です。

まとめ

認知バイアスの心理実験からは、人の判断が単純な計算だけで決まっているわけではないことが見えてきます。

アンカリングの実験では最初に示された数字、フレーミング研究では表現の仕方、リンダ問題では人物像との一致、有名人の名前を使った研究では思い出しやすさ、2・4・6課題では仮説の確かめ方が判断と関係していました。

これらの研究を知ると、「人間は非合理だから判断を信用してはいけない」と考えたくなるかもしれません。しかし、そこまで広げる必要はありません。

私たちは日常生活の中で、限られた情報からすばやく考える必要があります。そのために使っている便利な判断の仕組みが、特定の条件では偏りとして現れることがある、と捉えるほうが適切です。

そして心理実験そのものについても、一つの結果をすべての人や状況に当てはめないことが大切です。研究条件、後続研究、再現性まで含めて見ることで、認知バイアスをより落ち着いて理解できます。

認知バイアスを学ぶことは、自分の考えを疑い続けるためではありません。

「私は今、何を根拠にこう判断しているのだろう」

と、自分の見方を少し広げるための手がかりとして活用してみてください。

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