「自分の愛着スタイルを知りたい」と思って調べていると、ECR、RSQ、RQ、ECR-RSなど、さまざまな尺度の名前が出てきます。同じ愛着スタイルを扱っているのに、なぜ複数の尺度があるのか、結果をどう読めばよいのか迷う方もいるでしょう。
愛着スタイルの尺度は、すべてが同じものを測っているわけではありません。恋愛関係における「見捨てられることへの不安」と「親密になることへの回避」を測るものもあれば、安定型・とらわれ型・拒絶型・恐れ型という4つの傾向を扱うもの、さらに母親・父親・恋人・友人など相手ごとの差を見るものもあります。
そのため、尺度の名前だけを見て「愛着スタイルを診断できるテスト」と考えるより、何を、誰との関係について、どのような理論で測っている尺度なのかを確認することが大切です。
この記事では、成人の愛着研究でよく知られているECRやRSQを中心に、尺度の違い、測定方法、結果の見方、研究や自己理解に使う際の注意点を整理します。
- 愛着スタイル尺度によって測定内容が異なる理由
- ECR・ECR-RS・RSQ・RQの特徴と違い
- 不安と回避の得点から愛着傾向を考える方法
- 研究利用・個人利用で尺度を選ぶときの注意点
愛着スタイルの尺度とは

愛着スタイル尺度は、人が親密な関係のなかでどのような不安や距離の取り方を感じやすいかを、質問への回答から数量的に捉えるための方法です。
成人の愛着研究では、「この人は必ず安定型である」というように人を固定的な箱へ分類するだけでなく、現在では愛着に関連する傾向を連続的な得点として捉える方法が広く使われています。
代表的なのが、次の2つの軸です。
- 愛着不安:相手に見捨てられることや、自分が十分に愛されていないことへの不安
- 愛着回避:相手に頼ったり、感情を開示したり、親密になることへの抵抗感
この2つは「ある・ない」の二択ではありません。それぞれの程度が連続しており、同じ人でも相手や時期によって感じ方が異なる可能性があります。
たとえば、友人には安心して相談できる一方、恋愛関係になると「嫌われたのではないか」と強く心配する人もいます。反対に、家族には距離を取りたくなるものの、パートナーには比較的安心して頼れる人もいるでしょう。
つまり、愛着尺度の得点は性格を永久に決めるラベルではなく、特定の質問と条件のもとで捉えた対人関係の傾向として読むことが重要です。
主な愛着尺度の違い
愛着スタイルを測る質問紙はいくつかあり、目的によって適した尺度が異なります。まずは代表的な尺度の位置づけを整理してみましょう。
| 尺度 | 主に測るもの | 特徴 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| ECR | 愛着不安・愛着回避 | 2次元で連続的に測定する | 成人の親密な関係の傾向を研究する |
| ECR-GO | 愛着不安・愛着回避 | 一般的な他者関係を想定する日本語研究で用いられる | 対人関係全般の傾向を見る |
| ECR-RS | 愛着不安・愛着回避 | 相手ごとに測定できる | 母親・父親・恋人・友人などの違いを見る |
| RSQ | 4つの愛着プロトタイプなど | 複数項目による自己評定 | 4分類モデルとの対応を検討する |
| RQ | 4つの愛着プロトタイプ | 4種類の説明文への評定が中心 | 簡便に4つの傾向を比較する |
ここで大切なのは、尺度同士は似ていても交換可能とは限らないことです。
たとえば、ECRで測定した「愛着不安が高い」という結果と、RQで「とらわれ型への評定が高い」という結果には理論的な関連があります。しかし、測定項目も得点の作り方も異なるため、まったく同じ意味ではありません。
研究論文を読むときも、「愛着スタイルを測定した」とだけ確認するのではなく、どの尺度を、どの対象者に、どのような教示で使用したのかを見ることが重要になります。
ECRとは
ECR(Experiences in Close Relationships)は、成人の愛着に関連する傾向を愛着不安と愛着回避の2次元から測定する代表的な質問紙です。
Brennan、Clark、Shaverによって1998年に作成されました。多数の既存の成人愛着尺度をまとめて検討し、成人の親密な関係に関する個人差を、不安と回避という2つの次元から測定する枠組みが整えられました。
ECRが測る2つの次元
ECRでは、主に次のような心理的傾向を扱います。
愛着不安が高い場合には、
- 相手から嫌われていないか気になりやすい
- 相手から十分に大切にされているか心配しやすい
- 関係が終わる可能性を強く不安に感じやすい
- 相手との心理的な距離が広がると不安になりやすい
といった傾向が得点に表れます。
一方、愛着回避が高い場合には、
- 人に頼ることに抵抗を感じやすい
- 自分の弱い部分を見せることを避けやすい
- 親密になりすぎることに居心地の悪さを感じやすい
- 自分だけで問題を処理しようとしやすい
といった傾向が反映されます。
ただし、得点が高いからといって、すべての場面で同じ行動を取るとは限りません。
日本語版ECR
日本では、中尾達馬氏・加藤和生氏によってECRの日本語版が検討されています。2004年に『心理学研究』へ掲載された研究では、成人愛着に関連する「不安」と「回避」の次元について、日本語での信頼性・妥当性が検討されました。
日本の研究では、一般的な他者との関係を想定して回答する一般他者版ECR(ECR-GO)が用いられることもあります。
ここは重要な違いです。
同じ「ECR」という名称が出てきても、
- 恋愛関係を想定しているのか
- 現在のパートナーを想定しているのか
- 一般的な他者関係を想定しているのか
によって、回答者が思い浮かべる関係が変わります。
研究を比較するときには、尺度名だけでなく教示まで確認する必要があります。
愛着尺度を読むときは、「何点だったか」より先に「誰との関係を思い浮かべて答えた尺度なのか」を確認すると、結果を誤解しにくくなります。
ECR-RSとは
ECR-RS(Experiences in Close Relationships-Relationship Structures)は、愛着不安と愛着回避を、特定の相手との関係ごとに測れる尺度です。
ECRでは恋愛関係や対人関係全般の傾向を扱うことが多いのに対し、ECR-RSは「相手によって愛着の感じ方が違う可能性」を捉えやすい点に特徴があります。
相手ごとに得点を出せる
ECR-RSの基本的な構成では、同じ9項目について、
- 母親または母親的存在
- 父親または父親的存在
- 恋人・配偶者
- 親しい友人
など、対象を変えて回答します。
各関係について、愛着不安と愛着回避の得点を求めます。
たとえば、ある人について、
| 関係 | 愛着不安 | 愛着回避 |
|---|---|---|
| 母親 | 低め | 高め |
| 父親 | 低め | 高め |
| パートナー | 高め | 低め |
| 友人 | 低め | 低め |
という結果になることも理論上あり得ます。
この場合、「この人は回避型です」と一言でまとめるより、誰との関係では安心でき、誰との関係では距離を取りやすいのかを見るほうが、実際の対人関係を理解しやすくなります。
日本語版ECR-RSについては、古村健太郎氏・村上達也氏・戸田弘二氏による研究で、因子構造や内的一貫性、他尺度との関連、再検査信頼性などが検討されています。
ECRとECR-RSの違い
ECRとECR-RSは、どちらも不安と回避の2次元を扱いますが、目的が少し異なります。
ECRは、「親密な関係で自分がどのようになりやすいか」という比較的全体的な傾向を捉えるのに適しています。
ECR-RSは、「母親にはどう感じるか」「パートナーにはどう感じるか」という関係特異的な違いを検討したい場合に向いています。
そのため、「本当の愛着スタイルを測るならどちらが正しい」という関係ではありません。
研究で知りたいことによって選択します。
RSQとは
RSQ(Relationship Scales Questionnaire)は、GriffinとBartholomewによって示された、成人の親密な関係に関する自己評定式の質問紙です。
代表的には、Bartholomewの4カテゴリー・モデルに対応する、
- 安定(Secure)
- とらわれ(Preoccupied)
- 拒絶・軽視(Dismissing)
- 恐れ(Fearful)
という4つの愛着傾向を扱います。
日本語では研究者や文献によって訳語が多少異なり、「安定型」「とらわれ型」「拒絶型」「恐れ型」などと表記されます。
RSQの特徴
RSQは30項目から構成される質問紙として知られており、親密な関係についての複数の短い記述に、自分がどの程度当てはまるかを回答します。
4つのプロトタイプは、自己に対するモデルと他者に対するモデルの組み合わせとして考えることができます。
| 傾向 | 自己について | 他者について |
|---|---|---|
| 安定 | 比較的肯定的 | 比較的肯定的 |
| とらわれ | 否定的になりやすい | 比較的肯定的 |
| 拒絶 | 比較的肯定的 | 否定的になりやすい |
| 恐れ | 否定的になりやすい | 否定的になりやすい |
ここでいう「肯定的・否定的」は、人間性そのものの良し悪しではありません。
「自分は他者から受け入れられる存在だと感じられるか」「他者は必要なときに応じてくれる存在だと感じられるか」といった、対人関係についての期待を理論上整理したものです。
RSQも単純なタイプ診断ではない
RSQを見ると、4種類の名称があるため、「最も点数が高かったものが自分の愛着タイプ」と考えたくなるかもしれません。
しかし、成人愛着を研究するうえでは、カテゴリーだけでなく連続的な得点も重要です。
ある人が、
- 安定の特徴も比較的高い
- とらわれの特徴も一部ある
- 恐れの特徴は低い
という結果になることもあります。
人の対人関係を4つの箱だけできれいに分けられるわけではないため、各傾向がどの程度表れているかを見るという考え方が大切です。
RSQとRQの違い

RSQとよく似た名称に、RQ(Relationship Questionnaire)があります。両者は関連していますが、同じ質問紙ではありません。
RQでは、4つの愛着スタイルを説明した文章を読み、それぞれについて自分にどの程度当てはまるかを評定する方法が代表的です。
一方、RSQでは複数の短い項目に回答し、それらをもとに愛着に関する傾向を捉えます。
簡単に整理すると、
- RQ:4つの典型的な説明文から自分との近さを評価する
- RSQ:複数の質問項目への回答から愛着傾向を捉える
という違いがあります。
RQは比較的短時間で回答しやすい反面、少数の文章によって自己評価するため、研究目的によってはより多項目の尺度が選ばれることがあります。
反対に、「4つのプロトタイプとの対応を確認したい」という目的ではRQが利用されることもあります。
尺度の長さだけで優劣が決まるわけではありません。
得点はどう解釈する?
ECR系の尺度では、愛着不安と愛着回避の2つの得点を見ることが基本です。
よく使われる説明では、2つの次元の組み合わせから4つの傾向との対応を考えます。
| 愛着不安 | 愛着回避 | 対応しやすい傾向 |
|---|---|---|
| 低い | 低い | 安定型 |
| 高い | 低い | とらわれ型 |
| 低い | 高い | 拒絶型 |
| 高い | 高い | 恐れ型 |
ただし、この表をそのまま診断基準のように使用するのは適切ではありません。
「高い・低い」の境界は絶対ではない
オンラインの愛着診断では、「4点以上なら高い」というような境界を設定していることがあります。
しかし、研究用尺度では、必ずしも世界共通の絶対的なカットオフ値が設定されているわけではありません。
研究によっては、
- サンプル内の平均値
- 中央値
- 標準偏差
- 統計モデル
- 先行研究で定めた基準
などによって群分けします。
したがって、個人で質問紙に回答して「不安4.2、回避3.8だったから完全にとらわれ型だ」と判断するのは慎重であるべきです。
4.0と3.9の間に、人間関係の本質が突然変わる境界線があるわけではありません。
得点差を見る
個人で自己理解の参考にするなら、タイプ名よりも、
- 不安と回避のどちらが強く表れているか
- どのような質問で高く回答したか
- 特定の相手だけ高くなるのか
- 最近の出来事によって回答が変わっていないか
を見たほうが役立つことがあります。
たとえば「愛着不安が高い」という結果が出ても、「私は不安型の人間だ」と決めつける必要はありません。
「返信が遅いと嫌われたように感じやすいのかもしれない」 「関係が不安定なときほど確認したくなるのかもしれない」
というように、具体的な場面へ戻して考えると、自分の対人関係を理解するための材料になります。
尺度結果を見るときは「私は何型か?」だけで終わらせず、「どんな関係や場面で不安・回避が強くなるのか?」まで考えてみると、自己理解につなげやすくなります。
愛着尺度の選び方
どの尺度を使うかは、「何を知りたいか」から決めます。名前が有名だからという理由だけでECRを選ぶのではなく、研究目的と尺度の対象が合っているかを確認しましょう。
恋愛関係を調べたい
恋愛関係における親密さや見捨てられ不安を研究する場合には、恋愛対象を想定したECR系尺度が候補になります。
ただし、回答者に現在の恋人がいない場合をどう扱うかなど、調査対象者との適合性を考える必要があります。
対人関係全般を調べたい
恋愛だけではなく、人との関わり全般についての傾向を知りたい場合には、一般他者を想定する尺度が適しています。
日本の研究では一般他者版ECRが用いられることがあります。
恋人について尋ねた結果と一般他者について尋ねた結果を、そのまま同じ尺度得点として比較しないことが重要です。
相手ごとの差を調べたい
「親との愛着と恋人との愛着は同じなのか」「友人には安心できるのに恋愛では不安になるのか」といった問いには、ECR-RSが適しています。
相手ごとに同じ項目を回答することで、関係による違いを比較しやすくなります。
4タイプを検討したい
安定・とらわれ・拒絶・恐れという4カテゴリーとの対応を中心に検討したい場合は、RQやRSQが候補になります。
ただし、研究では4タイプへの分類だけで分析するのか、連続得点として扱うのかによって分析方法も変わります。
研究利用で確認したいこと
卒業論文、修士論文、研究調査などで愛着スタイル尺度を使う場合、インターネット上に掲載されている質問文をそのままコピーして使うのは避けたほうが安全です。
少なくとも、次の点を確認しましょう。
- 使用したい尺度の正式名称を確認する
ECR、ECR-R、ECR-GO、ECR-RSは名称が似ていますが、同じ尺度ではありません。 - 日本語版の出典を確認する
自分で英語版を翻訳した質問文と、妥当性が検討された日本語版は区別する必要があります。 - 対象者を確認する
大学生を対象に妥当性が検討された尺度なのか、広い成人集団を対象としているのかなどを確認します。 - 教示を確認する
「一般的な他者」「恋人」「母親」など、誰を想定して答える尺度なのかをそろえます。 - 得点方法を確認する
逆転項目、下位尺度に含まれる項目、欠損値の扱いなどは、原著または日本語版論文の方法に従います。 - 利用条件を確認する
質問紙には著作権や利用条件が設定されている場合があります。研究・教育目的であっても原著者や公開元の条件を確認します。
特に注意したいのは、名称の似た尺度から質問項目と採点方法を混ぜてしまうことです。
たとえば、ECR-RSの質問項目にECRの得点処理を適用すると、研究として別のものになってしまいます。

妥当性と信頼性とは
愛着スタイル尺度を調べていると、「信頼性」「妥当性」という言葉が頻繁に出てきます。
簡単にいうと、信頼性はある程度一貫して測定できているか、妥当性は測りたい概念を適切に捉えていると考えられる根拠があるかを検討する考え方です。
信頼性だけでは十分ではない
質問項目同士の回答が非常によく似ていたとしても、それだけで「愛着を正しく測れている」と証明されたことにはなりません。
反対に、理論的に関連すると考えられる別の心理尺度との関連が見られても、それだけで十分とは限りません。
尺度を開発・翻訳するときには、
- 因子構造
- 項目間の一貫性
- 再検査したときの安定性
- 関連すると予想される変数との関係
- 異なる概念との区別
など、複数の観点から検討されます。
そのため、「海外で有名な尺度だから、自分で日本語に訳しても同じように測定できる」とは限りません。
翻訳によって質問のニュアンスが変化する可能性があるため、日本の対象者で検討された日本語版を確認することには意味があります。
個人で測るときの注意点

愛着スタイル尺度は、研究だけでなく自己理解のきっかけとして興味を持つ人も多いでしょう。
その使い方自体に問題があるわけではありません。ただし、得点を自分自身への評価や判定にしてしまわないことが大切です。
自己申告による尺度である
ECRやRSQは、基本的には自分で質問を読み、自分自身について回答する自己報告式尺度です。
そのため、
- 今の気分
- 最近の恋愛経験
- 相手との関係状態
- 質問の受け取り方
- 自分をどう見ているか
などの影響を受ける可能性があります。
質問紙は「客観的に隠れた本性を見抜く装置」ではありません。
相手によって変わることがある
愛着について「幼少期にすべて決まる」と考えている方もいますが、成人期の愛着尺度で測定される対人関係の傾向は、必ずしもあらゆる相手に一律ではありません。
ECR-RSのように、相手別の違いを明示的に扱う尺度が存在することからも、関係による違いを考える視点が重要だと分かります。
「友人関係では安定しているのに、恋愛では不安が強い」という結果も、矛盾とは限りません。
得点は未来を決めない
愛着不安や回避の得点が高かったとしても、「幸せな恋愛ができない」「人間関係がうまくいかない」と未来が決まるわけではありません。
尺度は現在の傾向を整理するための情報です。
重要なのは、自分にラベルを貼ることより、
「不安が強くなったとき、私は何を考えているだろう」 「人に頼るのを避けたくなるのはどんな場面だろう」 「安心して話せる相手とは何が違うのだろう」
と、自分の経験を具体的に見ていくことです。
ネットの愛着診断との違い
インターネット上には、「数分で分かる愛着スタイル診断」が多数あります。
なかには学術的な尺度を参考に作られているものもありますが、すべてが研究用尺度と同じとは限りません。
確認したいのは、
- 尺度名と出典が明記されているか
- 質問項目が独自に変更されていないか
- 正式な得点方法を使用しているか
- 「100%あなたは○型」と断定していないか
- 医学的な診断のように扱っていないか
という点です。
特に、出典が分からない10問程度のチェックリストで「あなたは恐れ・回避型です」と表示された場合、それはECRやRSQによる測定結果と同じではありません。
結果が気になったとしても、まず「どの尺度を使った結果なのか」を確認してください。
愛着尺度で大切なのは分類より理解
愛着スタイルという言葉は、安定型・不安型・回避型などのタイプ名が分かりやすいため、どうしても「私はどのタイプなのか」という関心につながりやすいものです。
しかし、ECRのような尺度が示しているのは、人の愛着を不安と回避という連続した次元でも捉えられるということです。
たとえば、
「人に頼るのはそれほど苦手ではないけれど、恋人から返信がないと不安になりやすい」
という人もいれば、
「見捨てられることはあまり心配しないけれど、自分の気持ちを話すことには強い抵抗がある」
という人もいます。
どちらも単純な一語では表しきれません。
愛着尺度を自己理解に使うなら、タイプ名よりも、自分がどのような状況で安心し、どのような状況で不安や距離を感じるのかを考える手がかりとして使うほうが、日常生活につなげやすいでしょう。

愛着スタイル尺度のよくある質問
- 愛着スタイルを最も正確に測れる尺度はどれですか?
-
一つの尺度がすべての目的で最も正確というわけではありません。
恋愛関係の不安・回避を調べたいのか、対人関係全般を調べたいのか、母親・父親・恋人・友人の違いを調べたいのかによって適した尺度が変わります。
研究では、研究目的、対象者、日本語版の妥当性、教示、必要な分析方法を踏まえて尺度を選びます。
- ECRで自分の愛着タイプを診断できますか?
-
ECRでは愛着不安と愛着回避という2つの次元を測定します。それらの組み合わせを、安定・とらわれ・拒絶・恐れといった4つの傾向に対応させて説明することはできます。
ただし、医学的な診断ではなく、普遍的なカットオフ値ですべての人を4種類へ確定する尺度でもありません。
個人で使う場合は、「自分にはどの傾向が強く表れているか」を考える参考程度に捉えるのがよいでしょう。
- ECRとRSQはどちらを使えばよいですか?
-
不安と回避の2次元を中心に詳しく検討したい場合にはECR系尺度がよく使われます。
一方、Bartholomewの4つの愛着プロトタイプとの対応を直接扱いたい場合にはRSQが候補になります。
「どちらが優れているか」ではなく、研究で扱いたい理論と測定内容が一致しているかで選択します。
- 同じ人でも愛着スタイルの結果は変わりますか?
-
変わる可能性があります。
回答する時期や関係の状況による変化に加えて、誰との関係について回答したかによっても得点が異なることがあります。
そのため、1回の質問紙結果を「一生変わらない性格」として扱わないことが大切です。特にECR-RSでは、相手ごとの違いそのものを測定できます。
- 愛着不安や回避の得点が高いのは悪いことですか?
-
得点の高さを、その人の価値や人間性の良し悪しとして評価するものではありません。
愛着不安や回避には、その人がこれまでの関係のなかで身につけてきた期待や対処の仕方が反映されている可能性があります。
結果を見て自分を責めるのではなく、「私はどんな状況で不安になるのか」「どんな相手なら安心して頼れるのか」と具体的に考える材料として使うことが大切です。
まとめ
愛着スタイルを測定する尺度にはECR、ECR-RS、RSQ、RQなどがあり、それぞれ測定する内容や理論的な枠組みが異なります。
ECR系尺度では、成人の愛着を主に愛着不安と愛着回避という2つの連続した次元から捉えます。ECR-RSでは、さらに母親・父親・パートナー・友人など、相手ごとの違いを調べることができます。
一方、RSQやRQは、安定・とらわれ・拒絶・恐れという4つの愛着プロトタイプとの対応を考える際に用いられます。
大切なのは、得点だけを見て「私は○○型の人間だ」と断定しないことです。
研究で利用する場合は、日本語版の妥当性が検討されているか、どのような対象者を想定した尺度なのか、教示や得点方法はどうなっているかを原著論文で確認してください。
個人で使う場合には、結果を診断や未来予測として受け取るのではなく、今の自分が人との関係で何を不安に感じ、どのようなときに距離を取りたくなるのかを考える手がかりとして活用するのがよいでしょう。
愛着スタイルという言葉で自分を決めることよりも、自分の反応を知り、関係による違いに気づくこと。そのほうが、自分の気持ちや人間関係を落ち着いて見つめるための一歩につながります。


