「愛着スタイルについて、心理学の論文では実際にどこまで分かっているのだろう」と気になったことはありませんか。
恋愛や人間関係について調べていると、「不安型だから恋愛がうまくいかない」「回避型は人を好きになれない」といった説明を目にすることがあります。しかし、学術研究で扱われる愛着は、それほど単純な分類ではありません。
成人の愛着研究では、カテゴリーとして人を分ける方法だけでなく、「見捨てられることへの不安」と「親密さを避ける傾向」という連続的な次元で測定する方法が広く用いられています。また、研究結果は対象者、質問紙、誰との関係を想定したか、横断研究か縦断研究かなどによって変わります。
この記事では、愛着スタイルに関する代表的な論文と研究の流れを整理しながら、研究結果をどのように読めばよいのかを解説します。
- 愛着スタイル研究の理論的な背景と成人の恋愛研究への展開
- 安定型・不安型・回避型などの分類と2次元モデルの違い
- ECRなど成人愛着研究で使われる主な測定尺度
- 恋愛・対人関係に関する論文を読むときの判断ポイント
愛着スタイル研究とは

愛着スタイルの論文を読む前に、まず「愛着」という言葉が研究上どのような意味で使われているかを整理しておきましょう。
愛着理論は、精神科医・精神分析家のJohn Bowlby(ジョン・ボウルビィ)によって体系化され、その後、Mary Ainsworth(メアリー・エインスワース)らの研究によって発展しました。
もともとの中心テーマは、乳幼児と養育者との関係です。子どもが不安や危険を感じたときに特定の養育者へ接近し、その人を安心できる拠点として利用する仕組みが研究されてきました。
ここで重要なのは、現在インターネット上でよく使われている「愛着スタイル」という言葉が、すべて同じ研究方法を指しているわけではないことです。
成人の恋愛研究への展開
成人の恋愛に愛着理論を応用した研究として特に知られているのが、Cindy HazanとPhillip Shaverによる1987年の論文「Romantic Love Conceptualized as an Attachment Process」です。
HazanとShaverは、乳幼児と養育者との間に見られる愛着の考え方を、成人の恋愛関係にも応用できるのではないかと考えました。この研究は、その後の成人愛着研究が大きく発展するきっかけの一つとなりました。
ただし、「子どもの愛着分類をそのまま大人に当てはめた」と理解するのは正確ではありません。成人研究では、その後さまざまな尺度やモデルが作られ、恋人、配偶者、家族、友人など、対象となる関係についても研究方法が細分化されています。
内的作業モデルという考え方
愛着理論では、対人経験を通じて形成される自己や他者についての期待や認識を「内的作業モデル」として説明することがあります。
たとえば、
- 自分は相手から大切にしてもらえるだろうか
- 困ったときに相手を頼ってもよいだろうか
- 親しい関係になっても安全だろうか
- 相手は必要なときに応えてくれるだろうか
といった期待が、人間関係の中での感情や行動と関連する可能性を考えます。
ただし、これは「幼少期に一度決まった性格が生涯変わらない」という理論ではありません。
成人愛着の発達研究をレビューしたFraleyとRoismanは、幼少期の経験と成人期の愛着には関連が考えられるものの、その関連は測定方法によって弱かったり一貫しなかったりすること、そして早期経験だけで成人の結果が決定されるわけではないことを指摘しています。
愛着スタイルの分類
愛着スタイルについて調べると3分類、4分類、不安と回避の2次元など、異なる説明が出てきます。これは必ずしもどれかが間違っているという意味ではなく、研究モデルや測定方法が異なるためです。
3分類モデル
成人の恋愛研究の初期には、HazanとShaverによる研究などで、成人をおおまかに次の3つのタイプとして捉える方法が用いられました。
- 安定型
- 回避型
- 不安・アンビバレント型
分かりやすい分類である一方、人間の対人傾向をどれか一つのタイプへ割り振ると、個人差を十分に表現できない場合があります。
4分類モデル
BartholomewとHorowitzは1991年、自己に対するモデルと他者に対するモデルを組み合わせ、成人愛着を4つのプロトタイプとして考えるモデルを提示しました。
一般的には、次のように整理されます。
| 分類 | 自己についてのモデル | 他者についてのモデル |
|---|---|---|
| 安定型 | 肯定的 | 肯定的 |
| とらわれ型 | 否定的 | 肯定的 |
| 拒絶型 | 肯定的 | 否定的 |
| 恐れ型 | 否定的 | 否定的 |
日本語では、研究や解説によって「とらわれ型」「不安型」「拒絶型」「回避型」「恐れ・回避型」など訳語が異なる場合があります。
そのため、論文を比較するときはタイプ名だけでなく、その論文が何を測定しているかを見ることが重要です。
現在よく使われる2次元
成人の恋愛や親密な関係を対象とした研究では、愛着を明確な箱に分けるよりも、主に次の2次元で測定する方法がよく用いられます。
愛着不安
相手から拒絶されたり、見捨てられたりすることへの不安に関係する次元です。
愛着回避
他者と親密になることや、相手に依存することへの抵抗感に関係する次元です。
この考え方では、「不安型の人」「回避型の人」と完全に二分するのではありません。誰にでも程度の差があり、不安と回避それぞれについて低い人もいれば、高い人もいます。
たとえば、
| 愛着不安 | 愛着回避 | 4分類として表す場合の目安 |
|---|---|---|
| 低い | 低い | 安定型 |
| 高い | 低い | とらわれ型・不安型 |
| 低い | 高い | 拒絶型・回避型 |
| 高い | 高い | 恐れ型・恐れ回避型 |
という対応を考えることができます。
ただし、これは理解しやすくするための整理です。実際の尺度得点は連続しているため、境界線の左右でまったく別の人間になるわけではありません。
論文を読むときは「何型についての研究か」だけでなく、「カテゴリー分類なのか、不安・回避の連続得点なのか」を最初に確認すると、研究結果を比較しやすくなります。

愛着スタイルの測定方法
愛着スタイルの研究結果を理解するうえで、もっとも重要なポイントの一つが測定方法です。同じ「愛着」という言葉でも、測っているものが異なる場合があります。
ECR
成人の恋愛愛着研究で広く知られている尺度の一つが、Experiences in Close Relationships、略してECRです。
Brennan、Clark、Shaverが1998年に、それまでに使われていた成人愛着尺度を整理して作成しました。
ECRでは主に、
- attachment anxiety(愛着不安)
- attachment avoidance(愛着回避)
という2つの次元を測定します。
そのため、ECRを利用した研究では「安定型の人数と不安型の人数を比較する」というより、「愛着不安得点が高いほど別の変数とどのような関連があるか」といった分析が行われることがあります。
ECR-R
Fraley、Waller、Brennanは2000年、既存の成人愛着尺度を項目反応理論によって検討し、ECR-Rにつながる測定方法を提案しました。
ECR-Rも基本的には不安と回避という2次元を測定する尺度です。
ECRとECR-Rは名前が似ていますが、同一の質問紙ではありません。論文を探すときには「ECRを使用」「ECR-Rを使用」という方法の違いを確認しておきましょう。
日本語版ECR
日本では、中尾達馬・加藤和生による2004年の「成人愛着スタイル尺度(ECR)の日本語版作成の試み」があります。
この研究では387名の回答者のうち、恋愛経験がある、または当時恋愛関係にあった231名を最終分析の対象とし、日本語版ECRの信頼性・妥当性が検討されました。J-STAGEで論文情報と抄録を確認できます。
日本人についての研究を探している場合には、このような日本語版尺度がどのように作成・検証されたのかを確認しておくと、その後の研究を読みやすくなります。
ECR-RS
さらに、特定の関係ごとの愛着を測定する方法としてECR-RSがあります。
ECR-RSはRelationship Structures Questionnaireとも呼ばれ、たとえば母親、父親、恋人、友人など、相手ごとに愛着の不安・回避を考えることができる点が特徴です。
日本では古村健太郎・村上達也・戸田弘二によってECR-RS日本語版の妥当性が検討されています。
このような尺度が存在することは、「ある人に対する関わり方が、そのまますべての人間関係で同じとは限らない」ことを考えるうえでも重要です。
RQ
Relationship Questionnaire、略してRQは、BartholomewとHorowitzの4分類モデルに関連する代表的な方法です。
ECR系の尺度が不安と回避を連続的に測定するのに対し、RQは4つの愛着パターンとの対応を捉えるために使われます。
「この論文では4タイプなのに、別の論文では不安と回避だけなのはなぜだろう」と感じたら、使用尺度の違いを確認してみてください。
AAIは別の方法
愛着研究を調べているとAdult Attachment Interview、略してAAIという方法も出てきます。
AAIは、成人の恋愛関係における「不安型・回避型」をECRのような質問紙で測る方法とは異なります。養育者との経験について語ってもらい、その語り方や整合性などを一定の手続きで評価する面接法です。
つまり、
- ECRで測定した恋愛・親密関係の愛着
- AAIで評価された愛着表象
- 幼児期の行動観察による愛着分類
は、すべて「愛着」という言葉に関係していますが、同じ測定方法ではありません。
異なる方法で得られた結果をそのまま一つの分類として扱わないことが大切です。

代表的な愛着研究

愛着スタイルの論文を探すと非常に多くの研究が見つかります。まず研究史を理解するなら、次のような文献が出発点になります。
| 著者・年 | 主なテーマ | 読むときのポイント |
|---|---|---|
| Hazan & Shaver, 1987 | 成人の恋愛と愛着 | 愛着理論を成人の恋愛へ応用した初期の代表研究 |
| Bartholomew & Horowitz, 1991 | 成人愛着の4分類 | 自己モデル・他者モデルによる4カテゴリー |
| Brennan, Clark, & Shaver, 1998 | 成人愛着の自己報告尺度 | ECR、不安と回避の2次元 |
| Fraley, Waller, & Brennan, 2000 | 成人愛着尺度の測定 | 項目反応理論による尺度検討、ECR-Rにつながる研究 |
| 中尾・加藤, 2004 | 日本語版ECR | 日本語での尺度の信頼性・妥当性を検討 |
| 古村・村上・戸田, 2016 | 日本語版ECR-RS | 関係対象ごとの愛着測定 |
| Hadden, Smith, & Webster, 2014 | 愛着と恋愛関係の質 | 関係期間を含めたメタ分析 |
| Fraley & Roisman, 2019 | 成人愛着の発達 | 幼少期から成人までの連続性と変化をレビュー |
ここで「有名な論文だから正しい」「新しい論文だから古い研究より正しい」と単純に判断しないことも大切です。
研究にはそれぞれ目的があります。
理論を提案した論文、尺度を開発した論文、特定の仮説を検証した研究、複数研究を統合したメタ分析では、読み取れることが異なります。
恋愛との関連研究
「愛着スタイル 論文」と検索する人が特に気になりやすいのが、恋愛関係との関連ではないでしょうか。
成人愛着研究では、恋愛満足度、信頼、コミットメント、葛藤、サポート行動など、さまざまなテーマが検討されています。
関係満足度
多くの成人愛着研究では、愛着不安や愛着回避の高さと恋愛関係の満足度との関連が検討されています。
ただし、「不安が高い人は必ず恋愛がうまくいかない」という意味ではありません。
研究で確認されるのは、基本的には集団の中での統計的な関連です。
恋愛関係の満足度には、
- 相手とのコミュニケーション
- ストレスの程度
- 交際期間
- お互いの期待
- 葛藤への対処
- 生活環境
など、愛着以外にも多くの要因が関係します。
Hadden、Smith、Websterによる2014年のメタ分析では、愛着と関係満足度・コミットメントとの関連を複数研究から検討し、関係期間が関連の強さを左右する可能性も検討されています。
一つの変数だけを見るのではなく、「どのような状況で関連が強くなるのか」という調整要因を見ることが、現在の研究を理解するうえで重要です。
サポート行動
恋愛関係では、自分が不安やストレスを感じたとき、
「相手に助けを求めるか」 「どのような方法で安心しようとするか」 「パートナーが困っているときにどう応えるか」
といった行動も研究されています。
愛着理論では、ストレスや脅威を感じる状況で愛着システムが活性化すると考えるため、平常時よりもストレス状況で個人差が現れやすいという観点があります。
そのため研究によっては、単なるアンケートだけでなく、カップルに課題へ取り組んでもらい、その場でのサポート行動やコミュニケーションを観察する方法も使われます。
葛藤とコミュニケーション
愛着不安が高い場合には、拒絶への敏感さや相手から安心を得ようとする行動との関連が研究されています。
一方、愛着回避が高い場合には、葛藤場面で距離を取ることや親密なやり取りを避ける傾向との関連が検討されています。
しかし、これも「不安型なら必ずこうする」「回避型なら必ず話し合いから逃げる」という性格診断ではありません。
平均的な関連があったとしても、その傾向がどの程度表れるかは状況や相手との関係によって異なります。

感情調整との関連研究
愛着研究では、人間関係そのものだけでなく、感情をどのように調整するかというテーマも重要です。
愛着不安と愛着回避では、ストレスを感じたときに用いやすい対処の方向性が異なるのではないかという研究が蓄積されています。
不安と過活性化
愛着不安が高い人では、愛着に関する不安や脅威へ注意が向きやすく、安心を得るための反応が強くなる「過活性化」と呼ばれる方向性が研究されています。
たとえば、相手からの反応がないときにその意味を強く気にしたり、拒絶される可能性へ注意が向きやすくなったりすることが研究テーマになります。
ただし、日常で恋人からの返信を心配したというだけで「愛着不安が高い」と判断することはできません。
人は誰でも、大切な関係が不安定になれば心配することがあります。
回避と不活性化
愛着回避に関連する研究では、親密さへの欲求や不安を抑えたり、他者に頼ることを避けたりする「不活性化」の方向性が検討されています。
これについても「感情がない」という意味ではありません。
感情を経験することと、それを自覚・表現したり、他者に助けを求めたりすることは別の問題です。
愛着スタイルは変わるのか
「自分の愛着スタイルは一生変わらないのでは」と不安になる人もいますが、研究からそのように断定することはできません。
愛着には一定の安定性が研究されている一方、完全に固定されたものとして扱うことにも注意が必要です。
安定性と変化は両立する
心理学で「安定している」という場合、全員がずっと同じ状態だという意味ではありません。
たとえば集団全体として順位がある程度維持されていても、一人ひとりの得点は変化する可能性があります。
さらに成人愛着では、
- 恋愛関係の経験
- 人生上の出来事
- 特定のパートナーとの関係
- 社会的環境
- 時間の経過
などとの関連が研究されています。
したがって、「愛着には一定の継続性が研究されている」と「愛着は変化する可能性がある」は矛盾する説明ではありません。
幼少期だけで決まらない
愛着理論では幼少期の経験が重要なテーマですが、「幼少期の愛着=成人の恋愛スタイル」という単純な一対一対応を前提にすることはできません。
特に、
「親との関係が悪かったから一生不安型」 「幼少期に安定型なら成人後も必ず安定型」
といった説明は、研究結果を過度に単純化しています。
成人期までには多くの人間関係や出来事があります。
幼少期からの発達的な連続性を考えながらも、その後の経験や現在の関係を含めて考える必要があります。

論文を読むときの注意点

愛着スタイルの研究では、論文の「結論」だけを見ると誤解しやすいことがあります。研究方法を確認すると、その結果がどこまで当てはまるのか判断しやすくなります。
対象者を見る
最初に確認したいのが研究対象です。
たとえば、
- 大学生だけなのか
- 成人一般なのか
- 恋人がいる人だけなのか
- 既婚者なのか
- カップル双方が参加しているのか
- 特定の国・文化圏の研究なのか
によって意味が変わります。
大学生200名を対象とした研究で関連が見つかったとしても、それをすべての年代・文化・関係性にそのまま一般化できるわけではありません。
何を測ったかを見る
同じ愛着研究でも、
- ECR
- ECR-R
- ECR-RS
- RQ
- AAI
では測定方法が異なります。
さらに「恋人を想定して回答してください」という尺度と、「一般的な他者との関係を想定してください」という尺度では、測定対象も同じではありません。
論文タイトルより、Methodsや方法の章にある「Measures」「尺度」の記述が重要です。
横断研究か縦断研究かを見る
横断研究は、ある時点で複数の変数を測定する研究です。
たとえば、
「愛着不安が高い人ほど恋愛満足度が低かった」
という相関が確認されたとします。
ここから直ちに、
「愛着不安が原因で恋愛満足度が下がった」
とは結論できません。
恋愛関係が不安定だから愛着不安の回答が高くなった可能性や、両方へ影響する別の要因が存在する可能性もあります。
因果関係について考えるには、縦断研究、実験研究、介入研究など、研究デザインを含めた検討が必要です。
相関の大きさを見る
「統計的に有意だった」という表現だけを見るのも十分ではありません。
サンプル数が大きければ、小さな関連でも統計的に有意になることがあります。
可能であれば、
- 相関係数
- 効果量
- 信頼区間
- サンプルサイズ
も確認しましょう。
「関連があるか」だけではなく、どの程度の関連なのかを見ることが大切です。
研究を一つだけで判断しない
心理学研究では、ある一つの研究で関連が確認されても、別の対象や方法では同じ結果にならないことがあります。
そこで参考になるのが、複数の研究結果を一定の方法で統合するメタ分析や、研究全体の流れを整理するレビュー論文です。
気になる主張を見つけたら、まず代表的な原著論文を1本確認し、その後にレビュー論文やメタ分析を探す方法がおすすめです。「一つの論文が何を示したか」と「研究全体では何が分かっているか」を分けて考えられます。
愛着の論文を探す方法
学術的な根拠を確認したい場合は、一般的なウェブ検索だけでなく、学術論文を検索できるサービスを利用すると探しやすくなります。
日本語論文を探す
日本語の心理学論文を探す場合には、J-STAGEやCiNii Researchなどが利用できます。
検索語としては、単に「愛着スタイル」だけでなく、
- 成人愛着
- 成人 アタッチメント
- 愛着不安
- 愛着回避
- 成人愛着 恋愛
- ECR 日本語版
- ECR-RS
- 愛着 関係満足度
などを組み合わせると、より研究論文を見つけやすくなります。
心理学では「愛着」と「アタッチメント」の両方の表記が使われるため、両方で検索するのがポイントです。
英語論文を探す
英語では、次のようなキーワードが基本になります。
- adult attachment
- attachment anxiety
- attachment avoidance
- romantic attachment
- attachment relationship satisfaction
- attachment emotion regulation
- attachment longitudinal study
- attachment meta-analysis
- Experiences in Close Relationships
Google ScholarやPubMedなどで検索すると、関連する研究をたどることができます。
引用文献からたどる
テーマを網羅的に調べる場合には、検索結果を次々に読むより、質の高いレビュー論文を一つ見つけ、引用文献から代表研究へさかのぼる方法も便利です。
たとえば成人愛着のレビュー論文を見つけたら、
- 何度も引用されている基礎研究を確認する
Hazan & ShaverやBartholomew & Horowitz、Brennanらの研究など、理論や尺度の基礎となる文献を見つけられます - 自分が知りたいテーマを絞る
恋愛満足度、コミュニケーション、感情調整など、検索範囲を具体化します - 新しいレビューやメタ分析を探す
基礎研究の後に研究結果がどのように積み重なったかを確認します - 原著論文の方法を読む
対象者、使用尺度、調査時期、分析方法を確認して結果の適用範囲を考えます
この読み方をすると、「愛着スタイルについて書いてある論文を集める」だけでなく、研究の流れそのものを理解しやすくなります。
研究結果を自己理解に使うには
愛着スタイルの研究は、自分の対人関係を振り返るための視点として役立つことがあります。しかし、研究上の尺度を自己診断のラベルとして使いすぎることには注意が必要です。
「私は不安型だから仕方ない」 「相手は回避型だから話し合っても無駄」 「この組み合わせは相性が悪い」
と結論を固定してしまうと、愛着理論を学ぶ本来の意味から離れてしまうことがあります。
研究から読み取れるのは、ある特徴を持つ人たちに平均的にどのような傾向が観察されたかということです。
実際の関係を考えるときには、
- 自分はどんな場面で不安になりやすいのか
- 不安になったとき何をしているのか
- 相手に何を求めているのか
- 距離を取りたくなるのはどんなときか
- どう伝えると安心して話し合えるのか
と、具体的な状況へ戻して考えるほうが役立ちます。
愛着スタイルは「あなたが何者か」を決める診断名ではありません。人間関係を理解するために研究されてきた一つの心理学的枠組みとして扱うことが大切です。
愛着スタイル論文のよくある質問
- 愛着スタイルには科学的根拠がありますか?
-
愛着理論は長い研究史を持ち、乳幼児の愛着、成人愛着、恋愛関係、感情調整など幅広いテーマで研究されています。
ただし、「愛着スタイルに関する研究が存在する」ことと、「ネット上で語られている愛着タイプの説明がすべて科学的に証明されている」ことは別です。
どの理論モデルを使い、どの尺度で、どの対象を研究したのかを確認する必要があります。
- 不安型・回避型・安定型の3種類が正式な分類ですか?
-
一つの統一された分類だけが存在するわけではありません。
成人愛着研究には、初期の3分類、Bartholomewらの4分類、不安と回避による2次元モデルなどがあります。
現在の成人恋愛研究では、不安と回避を連続変数として測定するECR系の尺度がよく利用されています。そのため論文を読むときは、タイプ名より測定方法を見ることが重要です。
- 日本人を対象にした愛着スタイルの論文はありますか?
-
あります。
日本語版ECRを検討した中尾・加藤の研究をはじめ、日本語版ECR-RS、恋愛関係、友人関係、対人認知などを扱った日本の研究があります。
「成人愛着」「アタッチメント」「愛着不安」「愛着回避」「ECR」などをJ-STAGEやCiNii Researchで検索すると見つけやすくなります。
- 幼少期の愛着で大人の恋愛スタイルは決まりますか?
-
幼少期の経験と成人期の愛着との関連は重要な研究テーマですが、幼少期だけで成人の恋愛スタイルが決定されるとは言えません。
研究では一定の連続性と変化の両方が検討されています。また、幼児期の愛着、成人期の親への愛着表象、現在の恋愛関係における愛着では測定方法そのものが異なる場合があります。
「子どものころの経験が原因だから一生変えられない」と受け止める必要はありません。
- 自分や恋人の愛着スタイルを論文から診断できますか?
-
論文を読むだけで特定の個人を診断することはできません。
研究用の質問尺度も、結果の解釈には尺度の目的や得点方法、対象集団などへの理解が必要です。また、恋愛中の一つの行動だけを見て「相手は回避型」と決めることも適切ではありません。
自分について考える場合は、タイプ名を決めることより、「どのような状況で不安や回避が強くなるのか」を具体的に振り返るほうが自己理解につながります。
まとめ
愛着スタイルについて論文を調べるときは、研究結果の結論だけでなく、理論の系統、測定尺度、対象者、研究デザインをセットで確認することが重要です。
成人の愛着研究では、HazanとShaverによる恋愛への応用から、Bartholomewらの4分類、ECRに代表される不安・回避の2次元モデルへと研究が発展してきました。
一方で、「不安型」「回避型」「安定型」といった言葉だけが独立して広まると、本来の研究より単純な性格分類として理解されてしまうことがあります。
愛着研究から分かるのは、特定の特徴と恋愛満足度、感情調整、サポート行動などとの統計的な関連や平均的傾向です。それだけで個人の性格、恋愛の未来、相手の本音を決めることはできません。
また、幼少期から成人期まで一定の連続性が研究されている一方、早期経験だけですべてが決まるわけではなく、成人期の愛着にも変化や関係ごとの差が考えられています。
論文をさらに読み進めるなら、まず気になる研究を1本選び、「誰を対象にしたのか」「何の尺度を使ったのか」「相関研究か縦断研究か」「どの程度の関連だったのか」の4点を書き出してみてください。研究結果を自分や相手へのラベルにするのではなく、自分の人間関係を落ち着いて考えるための材料として使うことが、愛着理論との付き合い方の一つです。


