認知バイアスを行動経済学ではどう考える?意思決定との関係を解説

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認知バイアスを行動経済学ではどう考える?意思決定との関係を解説

「同じ商品なのに、値引きされていると必要以上に魅力的に感じる」「損をしたくない気持ちから、なかなか決断できない」。このような経験は、特別なものではありません。

経済的な意思決定というと、価格や利益を比較して最も得になる選択をするイメージがあるかもしれません。しかし実際の人間は、すべての情報を正確に比較して、いつも合理的な答えを選べるわけではありません。

こうした現実の人間の判断を理解するうえで重要になるのが、行動経済学と認知バイアスです。

行動経済学では、心理学の知見も取り入れながら、人がどのような条件で判断を偏らせたり、合理的なモデルから外れた選択をしたりするのかを研究します。

この記事では、認知バイアスを行動経済学ではどのように捉えるのか、買い物やお金、仕事など身近な意思決定と結びつけながら解説します。

記事の監修者

株式会社ココロザC代表取締役。カラーセラピスト・心理カウンセラーとして活動。
日本初の「カラットセラピー」を創生。相談実績は延べ20,000人以上。
カラットセラピスト育成実績は800名以上。

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この記事を読むと分かること
  • 行動経済学と認知バイアスの基本的な関係
  • 従来の経済学との考え方の違い
  • 経済行動に影響しやすい代表的な認知バイアス
  • 日常の意思決定に行動経済学の視点を活用する方法
目次

行動経済学と認知バイアスの関係

行動経済学は、人が実際にどのような判断や選択をするのかを、心理的な要因も含めて考える分野です。認知バイアスは、その意思決定を理解するための重要な手がかりの一つです。

伝統的な経済学では、分析のために、人が一定の条件のもとで合理的に選択するという仮定を置くことがあります。

たとえば、同じ満足を得られる商品Aと商品Bがあり、Aのほうが安ければAを選ぶ、といった考え方です。

もちろん、このようなモデルは経済現象を整理するうえで大きな役割を持っています。ただし、現実の人間の行動はそれほど単純ではありません。

私たちは、

  • 比較する情報が多すぎて十分に検討できない
  • 最初に見た数字に影響される
  • 得をする喜びより損をする痛みを強く意識する
  • 同じ内容でも表現の仕方によって印象が変わる
  • 将来の利益より目の前の利益を優先する

といった判断をすることがあります。

こうした特徴を「単なる間違い」として切り捨てるのではなく、一定のパターンを持つ人間の行動として分析するところに行動経済学の特徴があります。

心理学の研究成果を経済学へ取り入れ、人間の判断と意思決定を分析する流れは、ダニエル・カーネマンらの研究によって大きく発展しました。ノーベル賞公式資料でも、カーネマンの研究について、特に不確実性のもとでの判断や意思決定に関する心理学的知見を経済学へ統合したものと説明されています。

つまり、認知バイアスを知ることは、「人間はなぜ合理的ではないのか」と責めるためではありません。

現実の人間がどのような条件で、どのような選択をしやすいのかを理解するための視点と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ合理的でない行動を研究するのか

行動経済学で重要なのは、「人は非合理的である」という結論そのものではありません。どのような状況で合理的なモデルから外れるのかを具体的に理解することです。

合理性は経済学の便利なモデル

まず注意したいのは、「従来の経済学は、人間が絶対に合理的だと信じていた」と単純化しないことです。

経済学では複雑な社会現象を分析するため、一定の仮定を置いてモデルを作ります。

合理的な意思決定を想定することも、その一つです。

たとえば商品を購入するときに、

  1. 選択肢を把握する
  2. 価格や性能を比較する
  3. 自分にとって得られる利益を評価する
  4. 最も望ましい選択肢を決める

という流れを想定すれば、消費者行動を整理しやすくなります。

ところが実生活では、すべての商品を調べる時間はありません。情報を完全に理解できるとも限らず、感情や習慣、周囲の人の行動にも影響されます。

そこで行動経済学では、現実の人間に近い心理的特徴を経済分析へ取り入れます。

判断には限界がある

私たちが毎回すべての選択肢を細かく計算していたら、日常生活はなかなか進みません。

スーパーで飲み物を買うだけでも、

  • 値段
  • 容量
  • 原材料
  • 保存期間
  • ブランド
  • ポイント還元
  • 将来の価格

などを完璧に比較しようとすると、大きな負担になります。

そのため人は、複雑な問題を簡単に処理するための近道を使うことがあります。

心理学では、このような判断の近道をヒューリスティクスと呼びます。

ヒューリスティクスそのものが悪いわけではありません。短時間で判断する必要がある場面では、とても役立つこともあります。

ただし、簡略化された判断方法を使うことで、特定の方向への偏りが生じる場合があります。そこに認知バイアスを考える意味があります。

ワンポイントアドバイス

「認知バイアスがある=判断力が低い」と考える必要はありません。限られた時間や情報のなかで判断する以上、誰にでも偏りが生じる可能性があります。大切なのは、自分にも起こり得るものとして扱うことです。

認知バイアスとは何か

認知バイアスとは、情報を受け取り、解釈し、判断するときに生じる一定の偏りを指す言葉です。行動経済学では、とくに選択や経済行動との関係から研究されます。

たとえば、10万円を得る可能性と10万円を失う可能性がある選択肢を提示されたとき、単純な金額だけでは説明できない判断をすることがあります。

また、「成功率90%」と説明された場合と「失敗率10%」と説明された場合では、数値上は同じ内容でも受ける印象が変わることがあります。

重要なのは、認知バイアスが単なる知識不足や計算ミスとは限らないことです。

人間の情報処理の特徴や感情、経験、情報の提示方法などによって、ある程度規則的な判断の偏りが起こる可能性があるため、経済行動を説明する材料になります。

ただし、「どの判断も認知バイアスで説明できる」と考えるのも適切ではありません。

個人の価値観、所得、置かれた状況、経験、文化、目的などによっても選択は変わります。

認知バイアスは、行動を理解するための一つの視点です。

行動経済学で重要な代表例

行動経済学では、さまざまな判断の特徴が研究されています。ここでは経済的な意思決定との関係を理解しやすい代表例を見ていきましょう。

アンカリング

アンカリングとは、最初に提示された数字や情報が、その後の判断に影響する現象です。

たとえば、ある商品の価格について、

「通常価格20,000円、現在12,000円」

と表示されているとします。

消費者は12,000円という価格だけを見るのではなく、最初に示された20,000円を基準として「8,000円も安い」と感じる可能性があります。

20,000円が判断の基準、つまりアンカーのような役割を果たすわけです。

もちろん、値引き商品を購入すること自体が非合理的なのではありません。

問題は、現在価格が本当に自分にとって妥当なのかを考えるより、最初に提示された数字との差に注意が向きやすくなることです。

買い物だけでなく、給与交渉、不動産価格、サービス料金など、最初に数字が提示される場面で意識しておきたい考え方です。

フレーミング効果

フレーミング効果は、同じ内容でも、伝え方や見せ方によって判断が変わる可能性を示すものです。

たとえば、

  • 成功する確率は90%です
  • 失敗する確率は10%です

という説明を考えてみましょう。

数字として表している内容は同じです。しかし、「成功」に焦点を当てるか、「失敗」に焦点を当てるかで受ける印象が変わる場合があります。

経済行動でも、

  • 20%割引
  • 定価の80%

のように、実質的には同じ条件でも表現方法によって魅力の感じ方が変わることがあります。

商品の広告や契約条件を見るときには、「別の表現に直しても同じ判断をするだろうか」と考えてみると、フレーミングの影響に気づきやすくなります。

損失回避

行動経済学を理解するうえでよく知られている考え方の一つが、損失回避です。

一般に、人は同じ程度の利益と損失であっても、損失をより強く意識する傾向があると考えられています。

たとえば、

「1万円もらえる可能性」

よりも、

「今持っている1万円を失う可能性」

のほうを心理的に大きく感じることがあります。

こうした特徴は、

  • 投資で含み損を抱えた資産を手放しにくい
  • 使っていないサービスを解約できない
  • 今持っている物を手放すことに抵抗を感じる

といった行動を考えるときの手がかりになります。

ただし、損失回避があるからといって、すべての人が必ず同じ選択をするわけではありません。

金額、状況、経験、リスクへの考え方などによって判断は変わります。

保有効果

保有効果とは、自分が持っているものを、持っていない同じものより高く評価しやすくなる現象を指します。

たとえば、ある品物について、

「これから買うなら3,000円まで」

と思っていた人でも、一度自分の物になると、

「5,000円以下では売りたくない」

と感じる場合があります。

所有していること自体が評価へ影響している可能性があるわけです。

リチャード・セイラーの行動経済学への貢献について、ノーベル賞公式資料では、限定合理性やメンタル・アカウンティング、損失への抵抗、保有効果などを含む研究が紹介されています。

中古品の売却、投資、住宅などを考えるときには、「自分が持っている」という事実と、「市場での価値」を分けて考えることが役立つ場合があります。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、変更する理由がある場合でも、現在の状態を維持する選択をしやすい傾向を指します。

たとえば、

  • 長年使っている料金プランを見直さない
  • より条件のよいサービスがあっても乗り換えない
  • 不要になった契約をそのまま継続する

といった行動です。

もちろん、変更には手間やリスクがあります。そのため、現状を維持することが合理的な場合もあります。

確認したいのは、

「今の選択肢が一番よいから続けているのか、それとも変更するのが面倒だから続けているのか」

という違いです。

利用可能性ヒューリスティック

人は、思い出しやすい情報や印象に残っている出来事をもとに、物事の可能性を判断することがあります。

これを利用可能性ヒューリスティックと呼びます。

たとえば、大きな値上がりをした投資商品のニュースを何度も目にすると、「この商品はこれからも上がりそうだ」と感じるかもしれません。

反対に、事故や損失のニュースを強く記憶していれば、実際の確率以上に危険を感じることも考えられます。

身近に思い出せる事例と、実際の発生率や統計は一致するとは限りません。

印象の強さだけで判断していないかを確認することが大切です。

経済行動はどう変わるのか

認知バイアスは、学術的な実験だけでなく、私たちの日常的な経済行動を理解する際にも役立ちます。

買い物

買い物では多くの判断材料が同時に提示されます。

「通常価格10,000円が本日限り5,000円」

という表示を見たとき、私たちは商品そのものの価値だけでなく、

  • 50%割引という数字
  • 通常価格10,000円という基準
  • 本日限りという期限

にも影響を受ける可能性があります。

そこで、

「5,000円でこの商品が必要か」

と問い直してみます。

通常価格がいくらだったかではなく、現在支払う金額と得られる価値を比較するわけです。

認知バイアスを知っているだけで衝動買いがなくなるわけではありませんが、判断基準を整理する助けにはなります。

サブスクリプション

定額サービスも行動経済学の視点で考えやすい例です。

月額1,000円程度なら、「それほど高くない」と感じて契約を続けることがあります。

しかし、ほとんど利用していないサービスが5つあれば、合計は月5,000円です。

一つずつ別々の支出として考えると負担を小さく感じても、家計全体では大きな金額になる場合があります。

行動経済学には、支出を頭の中で用途別に分けて扱うメンタル・アカウンティング(心の会計)という考え方もあります。

「娯楽費」「臨時収入」「ポイントでもらったお金」など、同じお金でも心理的に違うものとして扱うことがあります。

家計を見直す場合には、個々の契約だけでなく、年間支出や総額で確認することも有効です。

投資

投資では、不確実な状況で判断する必要があります。

そのため、

  • 損失回避
  • アンカリング
  • 過去の価格へのこだわり
  • 最近見たニュースへの過度な反応

などが判断に関係する可能性があります。

たとえば、1株1,000円で購入したものが800円になった場合、「1,000円まで戻ったら売ろう」と考えることがあります。

しかし、本来確認したいのは購入価格だけではありません。

現在800円の資産について、

「今この状態から新しく800円を投資したいと思うか」

と考え直すと、過去の購入価格とは別の視点を持てます。

行動経済学の知識だけで投資成果を予測することはできません。認知バイアスを知っていても市場価格の将来を正確に判断できるわけではなく、投資には損失の可能性があります。

仕事の意思決定

認知バイアスは、お金を直接使う場面だけに関係するものではありません。

仕事では、

  • プロジェクトを継続するか
  • 新しいサービスを導入するか
  • 取引先を変更するか
  • 転職するか
  • 事業から撤退するか

といった選択があります。

たとえば「ここまで時間とお金を使ったのだから、やめられない」と感じることがあります。

しかし、すでに支払って取り戻せない費用は、今後の判断とは分けて考える必要があります。

このような費用はサンクコスト(埋没費用)と呼ばれます。

意思決定では、

「これまでいくら使ったか」

だけでなく、

「ここから追加で時間やお金を使う価値があるか」

を考えることが重要です。

行動経済学と従来の経済学の違い

行動経済学と従来の経済学は、「どちらが正しいか」を競うだけの関係ではありません。人間の行動を理解するために、異なる仮定や分析方法を使っていると考えるほうが適切です。

大まかに整理すると次のようになります。

スクロールできます
視点標準的な経済モデル行動経済学
判断一定の合理性を仮定して分析する判断の偏りや心理的要因も扱う
情報必要な情報を利用して選択すると考えるモデルが多い情報処理能力や注意力の限界も考える
好み比較的安定した選好を前提にすることがある状況や提示方法による変化も研究する
時間将来の利益も含めた選択をモデル化する目先の利益を優先する傾向なども扱う
感情・社会性単純化のためモデル外に置く場合がある公平感、感情、社会的影響なども検討する

ここで大切なのは、行動経済学が「経済学を否定する学問」ではないことです。

経済モデルには、複雑な現象から重要な要素を取り出し、仕組みを理解しやすくする役割があります。

一方、現実のデータや実験を見ると、そのモデルだけでは十分説明できない行動が見つかることがあります。

そこで心理学的な特徴を取り入れ、より現実に近い説明を試みるのが行動経済学です。

認知バイアス以外も扱う

「行動経済学=認知バイアスの研究」と理解されることがありますが、実際にはもう少し幅広い分野です。

認知的な偏りだけでなく、

  • 自制心
  • 時間に対する選好
  • 公平感
  • 社会規範
  • 他者への配慮
  • 選択肢の提示方法

なども研究対象になります。

たとえば、「来月から貯金しよう」と思っていたのに、目の前の商品を買ってしまうケースを考えてみましょう。

これは情報の認識だけでなく、現在の満足を優先する傾向や自制心とも関係します。

また、同じ金額を受け取れるとしても、「自分だけ得をすればよい」とは限りません。

他者との公平性を気にして選択することもあります。

リチャード・セイラーの研究についても、ノーベル賞公式資料では、限定合理性だけでなく、社会的選好や自制心の問題が経済的意思決定へ与える影響が取り上げられています。

そのため、認知バイアスは行動経済学を理解する重要な入口ではありますが、すべてではありません。

日常の判断に活かす方法

認知バイアスを学んでも、人間の判断から偏りを完全になくすことは難しいでしょう。それでも、意思決定の仕組みを少し変えることで、影響を受けにくくすることはできます。

判断基準を先に決める

商品やサービスを見る前に、自分の基準を決めておく方法があります。

たとえばパソコンを購入するなら、

  • 予算は15万円まで
  • 必要なメモリは16GB以上
  • 持ち運ぶので重量を重視する
  • 3年以上使えることを優先する

などです。

基準を決めずに商品ページを見ると、割引率や広告表現に判断が引っ張られやすくなります。

先に基準を決めておけば、「50%OFFだから買う」ではなく、「必要条件を満たしたうえで予算内だから買う」と考えやすくなります。

金額を別の単位でも見る

表示されている数字を、そのまま受け取らず別の単位へ変換する方法もあります。

たとえば、

「月額980円」

であれば、

「年間では約11,760円」

です。

反対に、高額な年間契約であれば月額換算すると判断しやすくなる場合があります。

どちらか都合のよい表現だけを見るのではなく、複数の単位へ置き換えることでフレーミングの影響を確認できます。

反対の選択肢を考える

一つの選択肢に気持ちが傾いているときには、

「これを選ばない理由は何だろう」

と考えてみます。

転職したいと思っているなら、「今の会社に残るメリット」も書き出します。

反対に、転職が怖くて現状維持を選びそうなら、「転職した場合に得られる可能性」も確認します。

自分の最初の考えと逆の材料を意識的に探すことで、一方向だけから判断することを避けやすくなります。

時間を置く

緊急性のない買い物や契約なら、その場で決めないことも有効です。

「本日限り」「残りわずか」などの表示を見ると、冷静な比較よりも「逃したくない」という気持ちが強くなる場合があります。

一晩置いても必要だと思うなら、その理由を改めて確認できます。

ただし、時間を置けば必ず正しい判断になるわけではありません。

重要なのは、感情が大きく動いている瞬間だけで決めないための仕組みを作ることです。

ワンポイントアドバイス

大切な選択ほど、「認知バイアスをなくそう」と力むより、「判断する前に確認する項目を決めておく」ほうが実践しやすいでしょう。チェックリストや比較表など、仕組みで支える方法もあります。

認知バイアスを学ぶときの注意点

認知バイアスは身近な行動を説明しやすいため、知識を得るとさまざまな出来事へ当てはめたくなることがあります。しかし、使い方には注意が必要です。

他人を決めつけるために使わない

「あの人は認知バイアスに陥っている」と簡単に判断することは避けたいところです。

私たちには他人の判断材料がすべて見えているわけではありません。

一見すると不合理に見える選択にも、

  • 本人にしか分からない目的
  • 将来への考え
  • リスクへの許容度
  • 家庭や仕事の事情
  • 金銭以外の価値

があるかもしれません。

行動経済学は、人を分類したり性格を断定したりするための道具ではありません。

むしろ「自分の判断にも見落としがないか」と振り返るために使うほうが実用的です。

バイアスを知っても消えるとは限らない

「アンカリングを知ったから、もう価格表示には影響されない」とは限りません。

知識があることと、実際の判断で影響を受けないことは別です。

そのため、知識だけに頼るよりも、

  • 複数の商品を比較する
  • 総額を計算する
  • 判断基準を書き出す
  • 契約前に時間を置く
  • 第三者の意見を聞く

といった具体的な対策を組み合わせることが役立ちます。

すべてをバイアスで説明しない

人が選択を変える理由は認知バイアスだけではありません。

所得が変われば買う商品も変わります。家族が増えれば必要な住居も変わります。仕事内容が変われば通勤時間に対する価値観も変わるでしょう。

合理的に見えない選択であっても、本人にとって大切な価値を考慮した結果かもしれません。

認知バイアスは、原因を一つに決めつけるためではなく、複数ある判断要因の一つとして捉えることが大切です。

行動経済学と認知バイアスのよくある質問

認知バイアスと行動経済学は同じものですか?

同じものではありません。

認知バイアスは、人が情報を認識したり判断したりするときに生じる一定の偏りを表す概念です。

行動経済学は、それを含め、人間の心理的特徴や実際の行動を経済学の分析へ取り入れる研究分野です。

行動経済学では認知バイアスだけでなく、自制心、社会的選好、公平感、時間に対する選好なども扱います。

そのため、認知バイアスは行動経済学の重要な研究対象の一つと考えると分かりやすいでしょう。

認知バイアスがある人は非合理的なのですか?

認知バイアスがあるからといって、その人全体が「非合理的」と決めつけることはできません。

人間には時間や情報処理能力の限界があり、すべての選択肢を毎回完璧に比較することは困難です。

判断を簡略化することは、限られた時間で生活するうえでは必要な場合もあります。

その結果として、特定の条件では判断に偏りが生じることがあります。

大切なのは、「合理的な人」と「非合理的な人」に分けることではなく、誰にでも判断が偏る条件があり得ると考えることです。

ヒューリスティクスと認知バイアスの違いは何ですか?

ヒューリスティクスは、複雑な判断を簡略化するための思考の近道です。

一方、認知バイアスは、判断や情報処理に生じる一定の偏りを指します。

ヒューリスティクスを利用した結果として、判断に一定の偏りが生じる場合があります。

ただし、ヒューリスティクスが常に間違った判断につながるわけではありません。

短時間で十分な判断をするために役立つこともあるため、「ヒューリスティクス=悪いもの」と考えないことが大切です。

行動経済学を学べば正しい選択ができるようになりますか?

必ず正しい選択ができるようになるとは限りません。

行動経済学は、未来の正解を教えるものではなく、人がどのような状況で判断を偏らせやすいかを理解するための視点を提供します。

学ぶことで、

「最初に見た数字に影響されていないか」

「損を避けたい気持ちだけで決めていないか」

「表現を変えても同じ選択をするか」

と、自分の判断を見直しやすくなるでしょう。

正解を保証する知識というより、意思決定を一度点検するための道具として考えるのがおすすめです。

行動経済学は日常生活でも役立ちますか?

買い物、貯金、契約、仕事、投資など、選択が必要な場面を振り返る際に役立ちます。

たとえば割引商品を見たときに、「元の価格と比べて安いか」だけでなく、「現在の価格で本当に必要か」と考えることができます。

また、使っていないサービスを解約できないときには、現状を変えたくない気持ちが判断へ影響していないか確認できます。

ただし、行動経済学だけで人生の選択の答えが決まるわけではありません。

経済的な条件だけでなく、自分が何を大切にしたいのかも含めて考えることが重要です。

まとめ

行動経済学では、人間が常にすべての情報を正確に計算し、完全に合理的な選択をするとは限らないことを前提に、実際の判断や行動を分析します。

そのなかで認知バイアスは、なぜ人が特定の条件で判断を偏らせることがあるのかを理解する重要な手がかりです。

アンカリング、フレーミング効果、損失回避、保有効果、現状維持バイアスなどを知ると、買い物や契約、投資、仕事で起こる意思決定を、より現実的な視点から考えられるようになります。

ただし、認知バイアスは他人の性格や心理を決めつけるための言葉ではありません。また、バイアスについて知識を持つだけで、すべての判断ミスを防げるわけでもありません。

「私はいま、何を基準に選ぼうとしているのだろう」

「この情報の見せ方が変わっても、同じ判断をするだろうか」

「過去に使ったお金ではなく、これからの価値を考えられているだろうか」

そのように一度立ち止まって考えるきっかけとして、行動経済学の知識を活用してみてください。

認知バイアスをなくすことを目指すのではなく、自分の判断にも偏りが生じる可能性を知ったうえで、納得できる選択肢を考えていくことが大切です。

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