「自己理解研修を社内で行いたいけれど、具体的に何をすればよいのだろう」「性格診断を実施するだけで研修になるのだろうか」と迷っている人事・研修担当者の方もいるのではないでしょうか。
自己理解研修は、自分の性格に名前をつけたり、従業員をいくつかのタイプに分類したりすることが目的ではありません。これまでの経験、得意なこと、大切にしている価値観、働き方の特徴などを振り返り、これからどのように働きたいか、周囲とどのように関わりたいかを考える機会として設計することが大切です。
また、本人の内面に関わるテーマだからこそ、研修内容だけでなく「何を話すかは本人が選べる」「診断結果を人事評価に安易に使わない」といった運営上の配慮も欠かせません。
この記事では、企業や組織で自己理解研修を企画するときに知っておきたい目的、内容、期待できる効果、実施時の注意点を整理して解説します。
- 自己理解研修の意味と企業で実施する目的
- 研修に取り入れやすい具体的なワークやテーマ
- 自己理解研修によって期待できる職場での変化
- タイプ分けに偏らず安全に研修を設計するポイント
自己理解研修とは
自己理解研修とは、自分の経験、強み、価値観、関心、働き方の傾向などを振り返り、今後の仕事やキャリア、人との関わり方について考える研修です。
自己理解というと、「自分の性格を知ること」を思い浮かべるかもしれません。しかし、職場における自己理解では、性格だけを見るのではなく、より広い視点から自分自身を整理します。
たとえば、次のような内容です。
- これまでどのような仕事を経験してきたか
- どのような仕事では力を発揮しやすかったか
- どのような場面で負担を感じやすかったか
- 自分が仕事で大切にしたいことは何か
- 身につけてきた知識やスキルは何か
- 周囲からどのような役割を期待されることが多いか
- 今後どのような仕事や働き方をしていきたいか
厚生労働省の「マイジョブ・カード」でも、キャリアを考える最初の段階として、自分の特性、大切にしている価値観、スキル、職業能力などについて理解を深めることが示されています。ジョブ・カード自体も、職業経験の棚卸しや職業生活設計などを蓄積し、生涯を通じたキャリア形成に活用するためのツールと位置づけられています。
つまり、自己理解研修は「あなたはこういう人です」と外から答えを与えるものではありません。
さまざまな問いやワークを手がかりに、本人が自分の経験を振り返り、「私は何を大切にしているのだろう」「これからどう働きたいのだろう」と考えられる状態をつくることが中心になります。
診断ツールを使う場合も、結果を本人の性格を決定する「答え」として扱うのではなく、自分を振り返るための一つの材料として位置づけるとよいでしょう。
自己理解研修を行う目的
企業が自己理解研修を行う目的は、一つではありません。対象となる従業員や組織の課題によって重点は変わりますが、大きく分けると、キャリア形成、能力開発、コミュニケーションなどにつながります。
キャリアについて考える
代表的な目的は、従業員が自分自身のキャリアについて考える機会をつくることです。
日常業務を続けていると、「今後どのような仕事をしたいのか」「何を身につけたいのか」を立ち止まって考える時間は意外と少ないものです。
そこで研修の中で、
「これまで何を経験してきたか」
「そこから何を身につけたか」
「今後どのような役割を担いたいか」
と順番に振り返ることで、漠然としていた将来像を整理しやすくなります。
特に異動、昇進、復職、中堅期、定年前など、働き方や役割が変わる節目では、自分の現在地を確認する意味もあります。
厚生労働省では、キャリアコンサルティング面談とキャリア研修などを組み合わせ、従業員の主体的なキャリア形成を体系的・定期的に支援する仕組みを「セルフ・キャリアドック」としています。入社時や役職登用時など、その企業に合った節目で実施する方法も紹介されています。
強みや能力を整理する
自己理解研修は、自分の強みを見つめ直す機会にもなります。
ここでいう強みは、「明るい」「行動力がある」といった性格的な特徴だけではありません。
たとえば、
- 顧客の話を整理して要望を引き出せる
- トラブル時にも優先順位をつけられる
- 業務の手順を改善することが得意
- 初めての人にも分かりやすく説明できる
- 複数の関係者を調整しながら仕事を進められる
といった、具体的な行動や経験から確認することができます。
本人にとって当たり前になっている能力は、自分では気づきにくいこともあります。過去の経験を丁寧に振り返ったり、周囲からのフィードバックを参考にしたりすることで、自分が仕事で活用できる力を言葉にしやすくなります。
価値観を整理する
働くうえで大切にしている価値観も、自己理解の重要なテーマです。
たとえば同じ仕事内容でも、
「専門性を高めたい」
「人の役に立っている実感がほしい」
「安定した環境で長く働きたい」
「新しいことに挑戦したい」
「家庭との時間を大切にしたい」
など、何を重視するかは人によって異なります。
また、価値観には優劣がありません。
企業側の理想像に従業員を合わせるのではなく、本人が何を大切にしているのかを整理し、そのうえで組織の方向性や現在の仕事との接点を考えることが重要です。
コミュニケーションを見直す
自己理解を深めることは、自分と他者の違いを考えるきっかけにもなります。
自分にとって自然な仕事の進め方が、ほかの人にとっても同じとは限りません。
たとえば、
「まず全体像を説明してほしい人」
「最初に具体的な手順を知りたい人」
「一人で考えてから相談したい人」
「途中で何度も意見を交換しながら進めたい人」
が同じチームにいることもあります。
こうした違いを「どちらが正しいか」で判断するのではなく、「自分にはこの傾向があり、相手には別のやり方がある」と認識できれば、コミュニケーション方法を調整する余地が生まれます。
自己理解研修の主な内容
自己理解研修にはさまざまな方法があります。すべてを一度に盛り込む必要はなく、研修の目的と対象者に合わせて選ぶことが大切です。
キャリアの棚卸し
最初に取り入れやすいのが、これまでの経験を振り返るワークです。
入社から現在までの仕事、担当業務、異動、プロジェクト、学習経験などを書き出します。
単に経歴を並べるだけではなく、
- 特に印象に残っている仕事
- うまくいった仕事
- 苦労した仕事
- 周囲から評価されたこと
- 自分なりに工夫したこと
- その経験から学んだこと
まで振り返ると、本人が持っている強みや仕事への価値観が見えてきます。
「成功体験だけを書いてください」とすると答えにくい人もいます。苦労した経験や、思いどおりにならなかった経験にも、その人なりの工夫や学びが含まれている場合があります。
強みの言語化
次に、経験の中から自分の強みを探します。
ここでは抽象的な言葉だけで終わらせないことがポイントです。
たとえば「コミュニケーション力があります」だけでは、実際にどのような力なのか分かりません。
「意見が対立している人の話を聞き、共通点を整理できる」
「専門用語を使わず、顧客に分かりやすく説明できる」
など、行動レベルまで具体化します。
「どんな場面で」「何をして」「どのような結果になったか」と問いかけると、整理しやすくなります。
価値観を考える
仕事で大切にしたいことを整理するワークもよく使われます。
価値観を表す複数の言葉から選ぶ方法もあれば、印象に残った仕事の経験から考える方法もあります。
大切なのは、「正解」を探さないことです。
たとえば「挑戦」と「安定」は、一方が優れているわけではありません。また、同じ人でも、置かれている状況や人生の段階によって優先順位が変わることがあります。
価値観を固定的な性格として扱わず、現在の自分が何を大切にしたいと感じているのかを整理することが目的です。
得意・不得意を振り返る
自分が力を発揮しやすい環境や、負担を感じやすい状況について考える方法もあります。
たとえば、
| 観点 | 振り返る内容 |
|---|---|
| 業務 | 得意な仕事、苦手な仕事 |
| 人との関わり | 一人で進めやすいか、協力すると力を出しやすいか |
| 情報 | 数字、文章、図、会話など理解しやすい方法 |
| 進め方 | 計画を立てたいか、状況に応じて調整したいか |
| 環境 | 集中できる環境、負担を感じやすい環境 |
| 役割 | 支える役割、企画する役割、まとめる役割など |
ここでも、「苦手だからできない」と決めつける必要はありません。
どのような工夫があれば取り組みやすくなるのかまで考えると、実際の仕事につながる自己理解になります。
周囲からのフィードバック
他者から見た自分を知る方法もあります。
自分では苦手だと思っていることが周囲から評価されていたり、反対に、自分が得意だと思っていることが十分伝わっていなかったりすることもあります。
ただし、フィードバックは参加者同士を評価する場ではありません。
「あなたは消極的だ」のように人そのものを評価するのではなく、「会議で意見を整理してくれるので助かっている」など、具体的な行動を伝えるほうが本人も受け止めやすくなります。
今後の行動を考える
自己理解研修は、振り返って終わりにしないことも重要です。
最後に、
「今後伸ばしたい強みは何か」
「身につけたいスキルは何か」
「今の仕事で試してみたいことは何か」
「上司と相談したいことは何か」
などを考え、小さな行動につなげます。
大きなキャリア目標を必ず決める必要はありません。
「次の会議では自分から一度発言する」「興味のある業務について担当者に話を聞く」といった、小さく実行できる行動でも十分です。

期待できる効果
自己理解研修は、実施すれば必ず離職率や生産性が改善するというものではありません。一方で、適切に設計すれば、従業員が仕事やキャリアについて考えるきっかけになります。
キャリアの方向性を考えやすくなる
自分の経験や価値観を整理すると、「これから何をしたいのか」を考える材料が増えます。
将来像が明確に決まる人もいれば、「まだ分からないけれど、この分野には興味がある」と気づく人もいるでしょう。
自己理解研修では、必ず一つの答えを出すことより、自分なりの判断軸を持つことが大切です。
能力開発につなげやすくなる
自分の現在地が分かれば、今後身につけたい能力も考えやすくなります。
会社から一方的に「この研修を受けてください」と言われる場合と、自分自身で「この力を伸ばしたい」と考えて学ぶ場合では、学習への受け止め方が異なる可能性があります。
そのため、自己理解研修をリスキリングや社内研修制度と組み合わせる方法も考えられます。
上司との対話の材料になる
研修で整理した内容を、本人が希望する範囲で上司との面談に活用することもできます。
「今後挑戦してみたい仕事」
「活かしたい強み」
「伸ばしたい能力」
などが整理されていれば、漠然としたキャリア面談よりも話題をつくりやすくなります。
ただし、研修で記入した内容を無条件に上司へ提出させる設計は慎重に考える必要があります。
本人が安心して振り返れることと、人材配置に必要な情報を収集することは、同じではありません。
相互理解のきっかけになる
グループワークを取り入れると、「同じ出来事でも人によって感じ方が違う」と気づく機会になることがあります。
この違いをタイプとして固定せず、
「この人にはこういう考え方もあるのだな」
「私はこの点を重視していたのだな」
と理解することができれば、チーム内のコミュニケーションを見直す材料になります。
研修の成果を「全員が自分の強みやキャリア目標を明確に言える状態」に限定しすぎないことも大切です。「これまで考えていなかったことに気づいた」「もう少し考えてみたいテーマが見つかった」ことも、自己理解を深める重要な一歩です。

研修設計の進め方
自己理解研修を企画するときは、流行している診断ツールから選ぶのではなく、まず研修の目的を決めます。
目的を明確にする
最初に、「なぜ自己理解研修を行うのか」を言葉にします。
たとえば、
- 新入社員が自分の強みを整理する
- 若手社員が今後のキャリアについて考える
- 中堅社員がこれまでの経験を棚卸しする
- 管理職が自分のマネジメント傾向を振り返る
- チーム内のコミュニケーションを見直す
では、必要な内容が変わります。
「自己理解が大切そうだから」という理由だけでは、研修後に何を目指すのかが曖昧になります。
対象者を決める
同じ自己理解研修でも、新入社員と管理職では振り返る内容が異なります。
年齢で機械的に分ける必要はありませんが、少なくとも参加者の職務経験や現在の役割は考慮したほうがよいでしょう。
経験の少ない社員に「これまでのキャリアを棚卸ししてください」と言っても材料が少ないため、学生時代や日常生活を含めた経験から考える方法もあります。
一方、中堅社員や管理職では、これまで担当した仕事や転機を振り返るだけでも、多くの材料が得られます。
個人ワークを先に行う
自己理解は、まず本人が自分自身について考える時間を確保することが大切です。
最初からグループディスカッションにすると、発言力のある人の意見に引っ張られたり、「会社が望みそうな答え」を話したりする可能性があります。
基本的には、
- 個人で振り返る
- 希望する範囲で共有する
- 他者の視点を受け取る
- 再び自分で考える
という順番にすると、本人の考えを中心に進めやすくなります。
行動までつなげる
研修の最後には、仕事に戻ったあとに試せる行動を考えます。
たとえば、
「得意な資料作成をチームでも活かす」
「興味のある業務について上司に相談する」
「仕事を抱え込みすぎたときは早めに周囲へ伝える」
などです。
自己分析の結果をきれいにまとめることではなく、本人が日常の選択に活かせることを目指します。
実施時に注意したいこと
自己理解は本人の価値観や感情にも関わるため、研修を安全に実施するための配慮が必要です。
診断結果で人を決めつけない
性格検査やタイプ診断は、研修を進めるきっかけとして使われることがあります。
ただし、
「このタイプだから営業には向いていない」
「このタイプの人は管理職には向かない」
など、結果だけで適性や能力を判断するのは避けるべきです。
人の行動は、本人の特性だけでなく、経験、知識、役割、周囲との関係、職場環境などさまざまな要因から影響を受けます。
診断結果がある場合も、
「この説明の中で自分に当てはまると感じる部分はあるか」
「具体的にどんな経験を思い出したか」
と本人が考える材料にするほうが適しています。
無理に自己開示させない
自己理解研修では、過去の経験や価値観について考えるため、本人が話したくない内容に触れる可能性もあります。
そのため、
「書いた内容をすべて発表してください」
「必ず個人的な経験を話してください」
といった進め方は避けたほうがよいでしょう。
グループワークをするときも、「共有する範囲は自分で選べる」と最初に伝えておくと参加しやすくなります。
特に家族関係、健康、過去のつらい経験など、仕事に必要のない個人的な情報まで開示させる必要はありません。
人事評価と混同しない
自己理解のために本人が書いた内容を、そのまま評価資料として扱う設計にも注意が必要です。
評価されると分かっていれば、参加者は本音よりも「会社から評価されそうな回答」を選びやすくなります。
「自分の弱みを書いたら昇進に影響するのではないか」と感じれば、安心して自己理解に取り組むことも難しくなります。
研修記録を誰が見るのか、どこまで共有するのか、何のために利用するのかを事前に整理し、参加者にも分かる形で説明しておくことが大切です。
会社の価値観を押しつけない
企業研修である以上、企業理念や求める人物像を扱うこと自体は不自然ではありません。
ただし、「会社の価値観と同じ答えを出すこと」が自己理解研修の目的になってしまうと、本人が自分について考える余地が小さくなります。
たとえば、
「あなたが仕事で大切にしているものは何か」
「会社が大切にしているものとの共通点はどこか」
「違いを感じる部分はどこか」
と分けて考えることで、本人と組織の両方を尊重した対話がしやすくなります。
「会社が求める理想の社員を見つける研修」ではなく、「自分と組織の接点を考える研修」と位置づけると、自己理解という本来の目的を保ちやすくなります。
対象者別の研修例
自己理解研修は、参加者のキャリア段階によってテーマを変えると実務につなげやすくなります。
新入社員の場合
新入社員は職務経験がまだ少ないため、仕事だけに限定して振り返らないことがポイントです。
たとえば、
- 学生時代に力を入れたこと
- アルバイトや課外活動
- 人から頼られた経験
- 集団の中で担うことが多かった役割
- これから仕事で身につけたい力
などから考えます。
「あなたの強みは何ですか」といきなり質問するより、具体的な経験から順番に考えたほうが答えやすくなります。
若手社員の場合
入社数年程度の社員であれば、実際の仕事経験をもとに自己理解を深められます。
これまで担当した業務を振り返り、
「達成感があった仕事」
「難しかった仕事」
「もっとやってみたい仕事」
などを整理すると、本人の関心や強みが見えてくる場合があります。
そのうえで、今後身につけたい能力や経験してみたい仕事を考えます。
中堅社員の場合
中堅社員になると、経験が増える一方で、日々の業務に追われてキャリアを振り返る機会が少なくなることがあります。
そこで、
- これまで身につけてきた専門性
- 自分が組織に提供できる価値
- 今後伸ばしたい能力
- 後輩へ伝えられること
- 今後担いたい役割
などを整理します。
管理職になることだけを唯一のキャリアとして示さず、専門性を高める、後輩育成に関わる、新しい分野を学ぶなど、複数の可能性を考えられる設計が望ましいでしょう。
管理職の場合
管理職向けでは、個人のキャリアだけでなく、マネジメントの振り返りもテーマになります。
たとえば、
「自分が部下に求めやすい行動は何か」
「自分と違う仕事の進め方をどのように受け止めているか」
「自分の成功体験を部下にも求めていないか」
などを考えます。
自分の価値観や仕事の進め方を自覚することで、「自分にとっての普通」が必ずしも全員に共通するわけではないと考えるきっかけになります。

研修後の仕組みも大切
一度の自己理解研修だけで、その人のキャリアに対する考えが完成するわけではありません。
人の価値観や働き方への希望は、経験や環境、ライフステージによって変わることがあります。
そのため、研修は「自己理解を完成させるイベント」ではなく、定期的に振り返るきっかけとして考えるほうが自然です。
1on1やキャリア面談につなげる
研修で考えたことを本人が希望する範囲で1on1やキャリア面談のテーマにできます。
たとえば、
- 今後経験してみたい仕事
- 伸ばしたい能力
- 現在感じている課題
- 上司や組織に相談したいこと
などです。
研修から一定期間後に振り返る機会を設ければ、「考えて終わり」になりにくくなります。
学習機会につなげる
研修で伸ばしたい能力が明確になった場合は、社内研修、外部講座、資格取得支援、OJTなどにつなげることもできます。
ただし、会社が学んでほしいテーマを自己理解の結果として誘導しないことが重要です。
本人が考えるキャリアと、組織が必要とする能力の両方を確認し、接点を探します。
定期的に振り返る
自己理解の内容は、一度決めたら変えてはいけないものではありません。
半年後、一年後などに、
「以前大切だと思っていたことは今も同じか」
「新しく気づいた強みはあるか」
「興味のある仕事は変化したか」
と振り返ることもできます。
厚生労働省が推進するセルフ・キャリアドックも、キャリア研修やキャリアコンサルティングを組み合わせ、体系的・定期的に従業員のキャリア形成を支援する仕組みとして紹介されています。
単発研修だけですべてを解決しようとせず、継続的な対話や能力開発と組み合わせる視点が重要です。
自己理解研修のよくある質問
- 自己理解研修と自己分析研修は違いますか?
-
厳密に統一された区分があるわけではなく、研修会社や企業によって名称や内容は異なります。
一般には「自己分析」が経験や能力、強みなどを分析して整理する意味で使われることが多いのに対し、「自己理解」は価値観や感情、関心、働き方なども含めて自分について理解する、より広い意味で使われることがあります。
名称よりも、「何のために、何を振り返る研修なのか」を確認することが大切です。
- 性格診断だけでも自己理解研修になりますか?
-
診断をきっかけに自己理解を深めることはできますが、診断結果を確認するだけでは十分とは限りません。
結果を見て、
「どの部分に納得したか」
「実際にどのような経験があったか」
「仕事ではどのように表れているか」
まで振り返ることで、本人にとって意味のある自己理解につながります。
診断結果そのものより、その結果について本人がどう考えたかを大切にしましょう。
- 自己理解研修は何時間必要ですか?
-
研修時間に絶対的な基準はありません。目的や扱う内容によって変わります。
短時間であれば一つのテーマに絞り、「最近力を発揮できた経験を振り返る」などのワークを行う方法があります。
一方、キャリアの棚卸し、価値観、強み、将来像、行動計画まで扱う場合は、十分な個人ワークと対話の時間が必要です。
時間から内容を決めるのではなく、先に研修の目的を決め、その目的に必要なワークを組み立てるとよいでしょう。
- グループワークは必要ですか?
-
必須ではありません。
ほかの参加者の考えを聞くことで気づきを得られる利点はありますが、自己理解の中心は本人自身の振り返りです。
参加者の関係性やテーマによっては、個人ワークを中心にしたほうが安心して考えられる場合もあります。
グループワークを行う場合も、個人的な内容まで発表することを義務づけず、共有範囲を本人が選べるようにするとよいでしょう。
- 研修結果を人事配置に使ってもよいですか?
-
研修で得られた情報だけをもとに、人事配置や適性を決めることには慎重になる必要があります。
特に性格診断や簡易的なタイプ分類は、その人の職務能力や将来の成果を決定するものではありません。
本人が希望するキャリアや強みについて面談するための材料として利用することは考えられますが、研修の目的、情報の利用範囲、誰が閲覧するのかをあらかじめ明確にしておくことが重要です。
まとめ
自己理解研修は、従業員をいくつかの性格タイプに分類するための研修ではありません。
これまでの経験を振り返り、強み、価値観、能力、関心、働き方について整理し、「これからどのように働きたいのか」「自分の力をどのように活かしたいのか」を考える機会です。
キャリアの棚卸し、強みの言語化、価値観の整理、フィードバック、行動計画などを目的に応じて組み合わせることで、キャリア形成や能力開発、コミュニケーションを考えるきっかけになります。
一方で、自己理解は個人の内面に関わるテーマでもあります。診断結果で人を決めつけない、無理な自己開示を求めない、人事評価と安易に結びつけないといった配慮は欠かせません。
そして、自己理解に「完成形」はありません。
仕事の経験や役割、環境が変われば、大切にしたいことも変化していきます。研修で一度答えを出すことを目指すのではなく、本人が自分自身について定期的に振り返り、納得できる働き方や次の一歩を考えられる仕組みにつなげていくことが大切です。


