「自分が何をしたいのかわからない」「長所や短所を聞かれても、うまく答えられない」「自分のことなのに、自分が一番わからない気がする」。
そんな感覚があると、「私は自己理解ができない人なのでは」「もっと自分のことをわかっていないといけないのでは」と不安になることもあるかもしれません。
けれども、自己理解が難しいからといって、能力が低い、意志が弱いという意味ではありません。これまで自分の感情や希望を言葉にする機会が少なかったり、周囲を優先することが多かったりすると、自分について考えること自体に慣れていない場合もあります。
また、仕事や人間関係、生活環境が変化すれば、以前はわかっていたはずの自分がわからなくなることもあります。自己理解は、一度完成させれば終わるものではなく、その時々の経験を通して少しずつ更新されていくものと考えたほうが自然です。
この記事では、「自己理解不足とはどのような状態なのか」を整理しながら、自分がわからなくなる理由と、無理なく自己理解を深めていく具体的な方法を紹介します。
- 自己理解ができないと感じる状態の考え方
- 自分のことがわからなくなる主な理由
- 自己理解が浅いと感じたときの具体的な振り返り方
- 自分を分析しすぎず少しずつ理解を深めるコツ
自己理解できない人とは
「自己理解できない人」という決まったタイプが存在するわけではありません。まずは、「自己理解ができる・できない」という二択ではなく、自分についてどの程度整理できているかという連続的なものとして考えてみましょう。
自己理解は自分の傾向を知ること
自己理解という言葉にはさまざまな意味がありますが、日常生活では、たとえば次のようなことを把握している状態を指すことが多いでしょう。
- どのようなことを楽しいと感じるか
- どのような場面でストレスを感じやすいか
- 何を大切にしたいと思っているか
- 得意なこと、苦手なことは何か
- どのような人間関係を心地よいと感じるか
- 仕事や生活で何を優先したいか
- 今、自分が何を感じているか
- 本当はどうしたいと思っているか
つまり自己理解とは、「私はこういう人間だ」とひと言で性格を決めることではありません。
自分の感情、考え方、価値観、行動の傾向などを観察し、「私はこういう状況ではこう感じやすいようだ」と少しずつ理解していくことです。
心理学には「自己概念の明確性(self-concept clarity)」という研究概念もあります。これは、自分について持っている考えがどの程度明確で、自信をもって認識され、一貫性や安定性があるかという観点から研究されてきたものです。近年のレビューでも、自己概念の明確性には発達、家庭、文化、社会的環境などさまざまな要因が関係しうることが整理されています。
ただし、学術研究で扱われる「自己概念の明確性」と、日常語として使う「自己理解」は完全に同じ意味ではありません。本記事では、自分の感情や価値観、希望、行動傾向などを理解していくことを広く「自己理解」と呼びます。
自己理解不足とは何か
「自己理解不足」という言葉も、医学的な診断名ではありません。
一般的には、次のような感覚を表すために使われることがあります。
- 自分が何を望んでいるのかわからない
- 好きなものを聞かれても答えに迷う
- 自分の長所や短所がわからない
- 人によって自分の意見が変わる
- 進路や仕事を自分で決めにくい
- 嫌だった理由をうまく説明できない
- 感情はあるものの名前をつけにくい
こうした状態があるからといって、「自己理解不足の人」という固定された性格になるわけではありません。
たとえば仕事については自分の得意不得意を理解していても、恋愛では自分の希望がわからなくなることがあります。反対に、人間関係では自分の気持ちを理解できても、将来の働き方になると迷う人もいるでしょう。
自己理解の深さは、分野によって違っていても不思議ではありません。
自己理解が浅いこと自体は失敗ではない
「自分を理解している人は優れていて、理解できない人は未熟だ」と考える必要もありません。
人は経験によって変化します。20代のころに大切だったことと、30代、40代以降で大切になるものが変わることもあります。
以前は仕事を最優先したかった人が、ある時期から家族との時間を重視するようになることもあるでしょう。その変化を「自分に一貫性がない」と評価するのではなく、「今の自分に合う価値観へ変化した」と見ることもできます。
自己理解とは、自分について永久に変わらない正解を見つける作業ではありません。
今の自分を観察し、その時点でわかることを整理する作業と考えると、取り組みやすくなります。
「私はどんな人間なのだろう」と大きな問いから始めるより、「今日は何がうれしかった?」「何が少し嫌だった?」という小さな問いから始めるほうが、自分の輪郭は見えやすくなります。
自己理解が難しい理由
自己理解ができないと感じる背景は一つではありません。ここでは、比較的よく考えられる理由を整理してみます。どれか一つに自分を当てはめる必要はなく、「こういう影響もあるかもしれない」という視点で読んでください。
感情を言葉にする習慣が少ない
何か嫌なことが起きたとき、「なんとなくモヤモヤする」で終わってしまうことはありませんか。
感情そのものは生じていても、それを
「悲しかった」 「悔しかった」 「期待していたから残念だった」 「無視されたように感じて寂しかった」
と細かく言葉にする習慣がなければ、自分の気持ちはつかみにくくなります。
感情についての心理学研究では、「どんな感情を感じているかを区別できること」と「なぜその感情が生じたのかを理解していること」は、関連しながらも異なる側面として扱える可能性が示されています。
そのため、「気持ちがわからない」と思ったときも、一度にすべて理解しようとしなくて構いません。
まず「何を感じているのか」、次に「なぜそう感じたのか」と分けて考えるだけでも、自分を整理しやすくなります。
周囲を優先してきた
人間関係では、相手への配慮が必要です。
一方で、
「親が喜ぶから」 「職場で期待されているから」 「嫌われたくないから」 「みんなが選んでいるから」
という基準だけで選択することが長く続くと、自分自身の希望を確認する機会が少なくなる場合があります。
たとえば「何を食べたい?」と聞かれて、いつも「何でもいい」と答えているとします。それだけで自己理解不足だとは言えませんが、日常の小さな希望まで周囲に合わせることが習慣になっていると、「私は何がいいのだろう」と考える感覚そのものが弱くなっていることはあります。
この場合、いきなり人生の目標を決めようとするより、「今日の昼食ならAとBのどちらがいい?」という小さな選択から、自分の希望を確認していくほうが取り組みやすいでしょう。
正しい自分を探そうとしている
自己理解が難しくなる原因として意外に多いのが、「本当の自分を正確に見つけなければ」と考えすぎることです。
たとえば、
「私は内向的なのか外向的なのか」 「安定志向なのか挑戦したい人なのか」 「人付き合いが好きなのか嫌いなのか」
と二択で決めようとすると、答えられなくなることがあります。
実際には、「親しい人とは話すのが好きだけれど、大人数の集まりでは疲れやすい」という人もいるでしょう。
「新しい仕事には挑戦したいが、収入面では安定も大切」という考え方も矛盾ではありません。
自分を一つのタイプに分類するより、条件まで含めて理解することが大切です。
役割だけで自分を考えている
私たちは生活のなかで、さまざまな役割を持っています。
会社員、経営者、親、子ども、パートナー、友人などです。
役割があること自体に問題はありません。ただ、「職場で求められる自分」「家庭で求められる自分」のことばかり考えていると、その役割を離れたときに「私は何が好きだったのだろう」とわからなくなることがあります。
そんなときは、
「誰にも評価されないとしても、やってみたいことはあるか」 「成果にならなくても好きなことは何か」
と考えてみると、役割とは別の自分が見えやすくなるかもしれません。
環境や価値観が変化している
以前の自分なら簡単に答えられたことが、突然わからなくなる場合もあります。
転職、退職、結婚、離婚、子育て、引っ越し、人間関係の変化など、生活環境が大きく変わる時期には、それまでの判断基準が合わなくなることがあります。
「昔はこれが好きだったのに、今は楽しくない」 「以前なら昇進したかったのに、最近は違う働き方が気になる」
という変化があっても、おかしなことではありません。
過去の自分と今の自分が違うときには、「どちらが本当の自分か」を決めるより、今は何が変わったのかに目を向けてみましょう。
疲れて考える余裕がない
自己理解は、考えれば必ずできるものではありません。
仕事や人間関係で負担が重なり、心身が疲れているときには、「自分はどうしたいか」を考える余裕がなくなることもあります。
そのようなときに無理に自己分析を続けると、答えが出ない自分をさらに責めてしまう場合があります。
自己理解が浅いと起こること
自己理解が浅いこと自体を問題視する必要はありません。ただ、自分の希望や負担の傾向がわからないままだと、選択するときに困りやすくなる場合があります。
選択の基準がわからなくなる
転職先を決めるとき、
「年収」 「仕事内容」 「勤務地」 「勤務時間」 「成長できる環境」
など、多くの条件があります。
自分がどれを重視したいのかわからなければ、条件を比較しても決められません。
恋愛でも同じです。「どんな人が理想か」より先に、「私はどのような関係なら安心できるのか」がわからなければ、相手との相性を判断しにくくなります。
自己理解は、正解を教えてくれるものではありません。
しかし、自分なりの判断基準をつくる材料にはなります。
周囲の意見に振り回されやすくなる
自分の基準がはっきりしていないと、
「その会社はやめたほうがいい」 「結婚するならこういう人がいい」 「30代ならこれくらい稼ぐべき」
といった周囲の意見が、そのまま自分の基準になってしまうことがあります。
もちろん、他人の意見を参考にすること自体は悪いことではありません。
大切なのは、
「その意見を聞いて私はどう感じたのか」 「自分にも当てはまるのか」
という確認を挟むことです。
断るタイミングがわかりにくい
自分が何を負担に感じるのかわかっていないと、限界になるまで頼み事を引き受けてしまうことがあります。
後から疲れてしまい、「どうして断れなかったのだろう」と感じるかもしれません。
このような場合は、「断るのが苦手」という性格だけを見るのではなく、
「どの瞬間に本当は嫌だと感じていたのか」
まで振り返ってみることが役立ちます。
小さな違和感に気づけるようになることも、自己理解の一部です。
自己理解を深める7つの方法
自己理解を深めようとすると、性格診断や長時間の自己分析を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、毎日の小さな振り返りからでも十分始められます。
1日1つ感情を記録する
まずは一日に一つだけ、「印象に残った出来事」を選びます。
そして、
- 何があったか
- どう感じたか
- なぜそう感じたと思うか
を書いてみてください。
たとえば、
「会議で自分の提案が採用されなかった」 「残念だった」 「時間をかけて準備したので評価してほしかった」
という具合です。
重要なのは、きれいな文章を書くことではありません。
「うれしい」「嫌だった」「安心した」「疲れた」だけでも構いません。
続けるうちに、「私は努力を認めてもらえたときにうれしい」「突然予定を変えられることにストレスを感じやすい」といった傾向が見えてくることがあります。
事実と解釈を分ける
自己理解をするときは、「起きた事実」と「自分の解釈」を分けることも役立ちます。
たとえば、
「メッセージを送ったのに嫌われている」
という文章には、事実と解釈が混ざっています。
分けると、
- 事実:昨日送ったメッセージに、まだ返信がない
- 解釈:嫌われたのではないかと思った
- 感情:不安になった
- 希望:できれば返信がほしい
となります。
この整理をすると、「嫌われている」という結論だけではなく、「私は返信がないと不安を感じやすい」「関係が続いていることを確認したいのかもしれない」という自分自身の理解につながります。
相手の気持ちは本人に確認しなければわからなくても、自分がどう受け止めたかは振り返ることができます。
好き嫌いに理由をつける
「好きなものを10個書く」といった自己分析では、一覧を作るだけで終わってしまうことがあります。
もう一段深めるなら、「なぜ好きなのか」まで考えてみましょう。
たとえば、
「一人旅が好き」 → 自分のペースで行動できるから
「カフェが好き」 → 一人でも落ち着いて過ごせるから
「在宅勤務が好き」 → 人に話しかけられず集中できる時間をつくりやすいから
と整理できたとします。
すると、単なる趣味の一覧ではなく、
自分のペース 静かな環境 集中できる時間
を大切にしている可能性が見えてきます。
反対に、嫌いなことや疲れやすいことにも理由をつけてみると、自分が避けたい環境もわかりやすくなります。
過去の選択を振り返る
未来について考えても答えが出ないときは、過去の行動を見る方法があります。
たとえば、
「これまで自分から進んでやったことは何か」 「途中でやめたことは何か」 「続けられたことには何が共通していたか」
を考えます。
ここで見るのは成功や失敗ではありません。
実際の選択には、その人が何を大切にしていたかが表れることがあります。
資格の勉強を何度も始めても続かなかった一方で、誰かに教える活動は何年も続いていたなら、「一人で知識を増やすこと」より「人と関わりながら知識を使うこと」にやりがいを感じる可能性も考えられます。
ただし、一つの経験だけで「私はこういう人だ」と決めるのではなく、複数の出来事に共通点があるかを見ることがポイントです。
「したい」と「すべき」を分ける
自己理解が難しいときには、頭の中にある希望を書き出し、それぞれについて次のように尋ねてみてください。
「私はこれをしたいのか。それとも、したほうがいいと思っているのか」
たとえば、
「転職したい」
と思っていたとしても、詳しく考えると、
「本当は今の仕事内容は好きだけれど、周囲から転職したほうが年収が上がると言われて焦っていた」
と気づく場合があります。
逆に、
「仕事は辞めるべきではない」
と思っていたものの、
「本当は別の仕事を試してみたいが、失敗するのが怖かった」
と気づくこともあります。
「したい」と「すべき」は、どちらが正しいというものではありません。
両方を書き出すことで、自分の希望と社会的な判断を区別しやすくすることが目的です。
「本当にやりたいこと」がすぐ見つからなくても問題ありません。「これは少し嫌」「こちらのほうがまだ心地よい」という比較から始めても、十分な自己理解になります。
他人の意見を材料として使う
自分一人では気づきにくい特徴について、信頼できる人に聞いてみる方法もあります。
たとえば、
「私が楽しそうにしているのはどんなとき?」 「私はどんな仕事が得意そうに見える?」 「困ったとき、私はどんな行動をしている?」
といった具体的な質問です。
ただし、相手の評価をそのまま「本当の自分」と考える必要はありません。
「あなたはおとなしい人だ」と言われても、自分では「大人数の前では話さないだけで、親しい人とはよく話す」と感じるかもしれません。
その違いも立派な情報です。
他者から見た自分と、自分から見た自分を比べることで、理解が深まる場合があります。
小さな選択を記録する
自己理解を人生の大きな問題だけに使うと、難しく感じやすくなります。
そこで、日常の小さな選択を記録してみましょう。
たとえば、
- 一人で過ごすか誰かと会うか
- 外食するか家で食べるか
- 休日に予定を入れるか休むか
- 新しい仕事を引き受けるか断るか
といった選択です。
そして後から、
「選んだ結果、どう感じたか」
を確認します。
「予定のない休日のほうが回復できた」 「迷ったけれど、人と会ったら楽しかった」 「仕事を断ったら罪悪感はあったが、ほっとした」
という記録が増えると、自分に合う選択の傾向をつかみやすくなります。
自己分析との違いも意識する
自己理解と自己分析は似た言葉ですが、目的を少し分けて考えると取り組みやすくなります。
自己分析という言葉は、就職・転職活動などで、自分の強みや経験、価値観を整理する作業としてよく使われます。
一方、本記事でいう自己理解はもっと広く、
「なぜ私は今これを嫌だと感じたのだろう」 「どんな人間関係だと安心できるのだろう」 「私は今、本当は何を望んでいるのだろう」
といった日常的な気持ちまで含みます。
そのため、
自己理解を深める → 必要に応じて仕事や進路の自己分析に生かす
という順番でも構いません。
自分を無理に評価するより、まず観察するところから始めてみましょう。

自己理解を深める質問例
何を書けばいいかわからない場合は、質問を一つ選び、数分だけ考えてみる方法があります。一度ですべて答えようとする必要はありません。
感情を知る質問
- 今日、一番うれしかったことは何か
- 今日、一番嫌だったことは何か
- 最近よく感じている気持ちは何か
- 何をしているときに安心するか
- 最近モヤモヤした出来事は何か
- そのとき、本当はどうしてほしかったか
価値観を知る質問
- お金以外で仕事に求めたいものは何か
- 自分にとって「幸せな一日」はどんな日か
- 時間とお金が十分にあったら何をしたいか
- 人間関係で大切にしたいことは何か
- これだけは無理をしたくないことは何か
- 誰にも評価されなくても続けたいことはあるか
行動の傾向を知る質問
- 最近、自分から進んで行動したことは何か
- 後回しにしやすいことには共通点があるか
- 疲れているとき、どんな行動を取りやすいか
- 困ったとき、一人で考えるか人に相談するか
- どんな環境だと集中しやすいか
- どんな状況では力を発揮しにくいか
大切なのは、模範解答を書くことではありません。
昨日と今日で答えが変わっても構いませんし、「まだわからない」という答えがあっても大丈夫です。

言葉にできないときの考え方
自己理解では言語化が役立ちますが、最初からすべてを言葉にできるとは限りません。そんなときには、言葉以外の手がかりから考える方法もあります。
身体の感覚から考える
たとえば誰かから誘いを受けた瞬間、
「楽しみ」
とは言えないものの、なんとなく身体が重く感じたとします。
その場合、
「行きたくないと断定はできないけれど、今は少し負担を感じているのかもしれない」
と考えることはできます。
逆に、ある企画について考えると自然に調べ始めてしまうのであれば、「少なくとも関心はありそうだ」と捉えられるでしょう。
身体感覚だけで重要な判断を決める必要はありませんが、言葉になる前の気持ちに気づく手がかりになることがあります。
色やカードを問いのきっかけにする
カラットセラピーでは、カラーやタロットカードも、「未来を決めてもらうもの」としてではなく、自分の気持ちを考えるための手がかりとして扱います。
たとえば、いくつかの色の中から今気になる色を選び、
「なぜ今日はこの色が気になったのだろう」 「この色からどんな印象を受けるだろう」 「その印象は今の自分と何か関係しているだろうか」
と問いかけてみます。
カードについても同様です。
カードそのものがあなたの本心を客観的に証明するわけではありません。しかし、描かれている人物や場面を見て「この部分が気になる」「これは嫌だと感じる」と反応することで、まだ言葉になっていなかった考えに気づくきっかけになる場合があります。
カラットセラピーの無料メール講座でも、カラーやタロットを手がかりに自分自身を見つめる考え方を学べます。自己理解をもう少し実践的に学びたい場合は、一つの方法として活用してみてください。
自己理解で避けたいこと
自己理解は役立つ一方、やり方によっては考えすぎて苦しくなることがあります。「もっと深く分析すれば正解が出る」と思い込まないことも大切です。
性格に決めつけない
一度の失敗から、
「私はコミュニケーション能力がない」
と結論づけると、自分についての理解というより自己評価になってしまいます。
より具体的に、
「初対面の大人数では話し始めるまで時間がかかる」 「一対一なら比較的話しやすい」
と捉えれば、どんな場面が得意・不得意なのかが見えてきます。
自己理解では、「私は○○な人間」と決めるより、どんな条件で何が起きるかを見るほうが実生活で役立ちやすくなります。
矛盾をなくそうとしない
「人と会いたいけれど、一人にもなりたい」 「安定したいけれど、新しいことにも挑戦したい」 「仕事は好きだけれど、働く時間を減らしたい」
こうした気持ちは、一見すると矛盾しています。
しかし、人には複数の希望が同時に存在することがあります。
自己理解とは矛盾を消すことではなく、
「どちらの気持ちもある」 「今はどちらを少し優先したいか」
と整理することでもあります。
診断結果だけで決めない
性格診断や自己分析ツールは、自分について考えるきっかけとして便利な場合があります。
ただし、診断結果を読んで、
「私はこのタイプだから、この仕事しか向いていない」 「私はこういう性格だから恋愛はうまくいかない」
と将来まで決めつける必要はありません。
結果を見たときに、
「どこは自分に当てはまると思ったか」 「どこには違和感があったか」
と考えること自体が、自己理解になります。
診断、カラー、カード、周囲からの評価などは、「あなたが何者かを決定する答え」ではなく、自分に問いかけるための材料として使うとよいでしょう。
自分を責める材料にしない
振り返っているうちに、
「だから私はダメなんだ」 「こんな性格だからうまくいかない」
となってしまうことがあります。
その場合は、評価をいったん外してみましょう。
「人の期待を優先しやすい」 という気づきがあったなら、
「なぜそうなったのだろう」 「どんな場面なら自分の希望を言いやすいだろう」
まで考えてみます。
自己理解の目的は、自分の欠点を探すことではありません。
これから自分に合った選択をしやすくするために、自分について知ることです。
一人で整理できないときは
自己理解は一人でも取り組めますが、一人で考えるほど堂々巡りになることもあります。その場合は、誰かとの対話を利用する方法があります。
友人や家族に話すだけで、自分の考えが整理されることもあります。
ただし、身近な人ほど、
「あなたなら絶対こっちがいいよ」 「そんなことで悩まなくていい」
と、善意から答えを出してくれる場合もあります。
自分自身で考えたいときには、
「結論を出してほしいのではなく、話を聞いてほしい」
と先に伝えるのも方法の一つです。
また、利害関係のない相手と対話しながら整理したい場合は、カウンセリングや各種の対話型セッションなどを利用する選択肢もあります。
カラットセラピーの個人セッションでも、カラーやタロットカード、対話を手がかりにしながら、「今どのように感じているか」「本当はどうしたいのか」を整理することを大切にしています。
誰かに人生の答えを決めてもらうためではなく、自分自身の答えを考えるために対話を利用するという考え方です。
カラットセラピーの個人セッションでは、保志吏衣子との対話を通して、仕事や人間関係、生き方、将来の選択などの迷いを整理し、自分の本音と具体的な次の一歩を考えていきます。
自己理解できない人のよくある質問
- 自己理解ができないのはおかしいですか?
-
自己理解が難しいことだけを理由に、「おかしい」と考える必要はありません。
自分の希望を言葉にする経験が少なかったり、環境が大きく変化した時期だったりすれば、自分がわからなくなることもあります。
また、仕事については理解できているけれど、恋愛についてはわからないというように、分野によって自己理解の程度が異なる場合もあります。
「自分は何者か」という大きな答えを探すより、今日の感情や小さな選択を振り返るところから始めてみてください。
- 自己理解不足は病気ですか?
-
「自己理解不足」は医学的な診断名ではありません。
そのため、「自分のことがよくわからない」という感覚だけから特定の病気や状態を判断することはできません。
一方、強い不安や落ち込み、睡眠や食事への影響、仕事や学校へ行けないなど、心身や日常生活への支障が続いている場合には、自己理解の問題だけとして考えず、医療機関や適切な専門機関へ相談することを検討してください。
- 自己理解を深めるにはノートが必要ですか?
-
必ずしもノートを用意する必要はありません。
スマートフォンのメモでも構いませんし、頭の中で数分振り返るだけでも始められます。
ただ、書き残しておくと、
「最近、予定を急に変えられた日に毎回ストレスを感じている」 「一人で作業できた日は満足度が高い」
といった繰り返しに気づきやすくなります。
続けやすい方法を選ぶことのほうが大切です。
- 他人に自分の性格を聞けば自己理解できますか?
-
他人からの意見は参考になりますが、それだけで自己理解が完成するわけではありません。
周囲から「行動力がある」と言われても、自分では「失敗が怖いけれど、怖さを感じたまま動いている」と感じているかもしれません。
外から見える行動と、本人が感じていることには違いがあります。
他人の意見は答えではなく、
「そう見えているのはなぜだろう」 「自分ではどう感じているだろう」
と考えるための材料として使うとよいでしょう。
- 考えすぎると余計に自分がわからなくなりますか?
-
考え続けることで、かえって迷いが増える場合はあります。
特に、
「本当の自分を見つけなければ」 「正しい答えを出さなければ」
と考え続けると、自己理解が試験のようになってしまいます。
そのようなときは考えることを一度やめて、実際に小さく行動してみる方法もあります。
「興味がある講座を一回受けてみる」 「一人で休日を過ごしてみる」 「誘いを一度断ってみる」
などです。
行動した後に「どう感じたか」を振り返れば、考えるだけでは見えなかった自分に気づくことがあります。
自己理解は少しずつ深めればよい
自己理解ができないと感じても、「自分には何かが足りない」と決めつける必要はありません。
自分の感情を言葉にする機会が少なかった人もいれば、周囲の希望を優先することが多かった人もいます。生活環境が変わり、以前の価値観が現在の自分に合わなくなっている場合もあります。
そんなときに、いきなり「私はどんな人間なのか」という答えを完成させる必要はありません。
まず、
「今日は何がうれしかったか」 「何に少し違和感があったか」 「本当はどうしてほしかったか」 「どちらを選んだほうが少し心地よいか」
といった小さな振り返りから始めてみてください。
日々の小さな感情や選択を記録していくと、
「私はこういうときに安心する」 「こういう環境だと疲れやすい」 「これを大切にしたい」
という自分なりの傾向が少しずつ見えてきます。
そして、自己理解は一度完成したら終わりではありません。
経験や環境によって、考え方や大切にしたいものが変わることもあります。その変化も含めて、「今の私はどう感じているのだろう」と確認していくことが、自分を理解することにつながります。
自己理解とは、自分を一つの型に当てはめることではなく、自分の気持ちに気づき、自分で納得できる選択を増やしていくための土台です。
すぐに答えが出なくても構いません。
今日気づいた小さな一つから、自分との対話を始めてみてください。


