「自分のことをもっと知りたいけれど、何から考えればいいのか分からない」「ノートに気持ちを書いてみても、ただの日記になってしまう」と感じることはありませんか。
自己理解を深めるために、特別なノートや難しい分析方法が必要なわけではありません。大切なのは、日々起きた出来事と、そのときに感じたこと、頭に浮かんだ考え、自分が本当はどうしたかったのかを少しずつ分けて見ていくことです。
自己理解ノートは、きれいにまとめるためのものでも、毎日立派な文章を書くためのものでもありません。書いた内容をあとから振り返り、「私はこういう場面で疲れやすい」「こういうときは安心する」「本当はこういうことを大切にしたいらしい」と、自分なりの傾向に気づくための道具です。
この記事では、自己理解ノートの具体的な書き方から、振り返る項目、続けるコツまで順番に紹介します。
- 自己理解ノートを書く目的と普通の日記との違い
- 出来事・感情・考え・希望を整理する具体的な書き方
- 自分の価値観や行動パターンを見つける振り返り方
- 無理なく自己理解ノートを続けるための工夫
自己理解ノートとは
自己理解ノートとは、自分の経験や感情を記録しながら、自分が何を感じ、何を大切にし、どのような選択を望んでいるのかを整理するためのノートです。
単にその日に起きたことを記録する日記とは、少し目的が異なります。
たとえば、仕事で上司から急な依頼を受けた日のことを考えてみましょう。
日記であれば、「今日は夕方に急な仕事を頼まれて残業になった。疲れた」と書いて終わるかもしれません。
自己理解ノートでは、もう少し分けて考えます。
- 出来事:退勤前に急な仕事を頼まれた
- 感情:イライラした、疲れた、少し悲しかった
- 考え:「また断れなかった」「私ばかり頼まれている気がする」
- 希望:できれば翌日に回してほしかった
- 大切にしたかったこと:自分の予定や時間も尊重したかった
このように整理すると、「残業が嫌だった」という表面的な出来事の奥に、「自分の時間を大切にしたい」「一方的に予定を変えられることが苦手」という自分の感覚が見えてきます。
この積み重ねが、自己理解につながります。
答えを出すためのノートではない
自己理解ノートを書き始めると、「結局、私はどんな人間なのだろう」「私の本当の価値観は何だろう」と、早く答えを出したくなることがあります。
しかし、自己理解は一度の書き出しですべて分かるものではありません。
人の気持ちは状況によって変わりますし、大切にしたいことも、仕事、家族、恋愛など場面によって異なることがあります。
そのため、「私はこういう性格だ」と決めるよりも、
「今の私は、こういう場面でこう感じやすい」
と捉えておくほうが、自分を柔軟に理解しやすくなります。
自己理解ノートは、自分を分類するためではなく、自分についての観察記録を少しずつ増やしていくものと考えてみてください。
自己理解ノートを書くメリット
自己理解ノートのよさは、頭の中だけで考えていたことを、目に見える形にできる点にあります。
私たちは日常生活の中で、さまざまなことを同時に考えています。
「仕事が忙しい」 「どうしてあんな言い方をされたのだろう」 「転職したほうがいいのかな」 「でも今の職場にも良いところはある」 「本当はもう少し休みたい」
こうした思いが一度に浮かんでいると、自分でも何に悩んでいるのか分かりにくくなることがあります。
ノートに書くことで、それぞれを分けて眺めやすくなります。
感情と言葉を結びつけやすくなる
なんとなくモヤモヤしているとき、「嫌だった」「つらかった」だけでは、自分が何に反応しているのか分からないことがあります。
そこで、
- 寂しかった
- 悔しかった
- 不安だった
- 恥ずかしかった
- がっかりした
- 安心した
- うれしかった
など、少し具体的な言葉にしてみると、自分が何を求めていたのかが見えやすくなります。
たとえば、「友人から返信が来なくて腹が立った」と思っていたとしても、書いているうちに「怒りより、後回しにされたようで寂しかった」という気持ちに気づくこともあります。
もちろん、最初から正確な言葉を選ぶ必要はありません。
「なんとなく嫌だった」「うまく説明できない」も立派な記録です。
自分の繰り返しに気づける
自己理解ノートの大きな特徴は、書いたその日だけでなく、あとから読み返せることです。
数週間分を見返してみると、
「予定を急に変えられた日に何度もストレスを感じている」
「一人で静かに過ごした日は気分が安定している」
「人に頼られたときはうれしいけれど、引き受けすぎると苦しくなる」
といった繰り返しが見えてくることがあります。
一回だけでは偶然かもしれない出来事も、何度も似た反応が記録されていれば、自分にとって大切な手がかりになります。
選択するときの基準を考えやすくなる
自己理解は、単に「自分の性格を知ること」だけではありません。
自分が何を大切にしているのかが分かると、仕事、人間関係、恋愛、生活などで選択するときの判断材料にもなります。
たとえば、「収入が高い仕事」と「自由な時間が多い仕事」のどちらを選ぶかという場面でも、自分がこれまで何に満足し、何に負担を感じてきたかを振り返れば、条件だけでは見えない判断軸を持ちやすくなります。
ノートに書いた内容を見て「こんなことを考える自分はだめだ」と評価する必要はありません。まずは正しい・間違っているを判断せず、「私はこう感じたのだな」と観察するところから始めてみてください。
自己理解ノートの基本の書き方
自己理解ノートには決まった形式はありませんが、何を書けばよいか迷う人は「出来事・感情・考え・希望」の4つに分けると整理しやすくなります。
毎回すべてを長く書く必要はありません。
1項目につき1〜3行程度でも十分です。
出来事を書く
最初に、その日に気になった出来事をできるだけ事実に近い形で書きます。
たとえば、
「会議で私の提案が採用されなかった」
という内容です。
ここでは、
「みんな私の意見を軽く見ている」
まで書くと、それは出来事ではなく自分の解釈が含まれています。
最初は、
「誰が、何をしたか」 「何が起きたか」
だけを書くようにすると、事実と自分の考えを分けやすくなります。
感情を書く
次に、その出来事について何を感じたかを書きます。
先ほどの例であれば、
- 悔しい
- がっかりした
- 恥ずかしかった
- 少し腹が立った
などです。
複数の感情が同時にあっても問題ありません。
むしろ、人の気持ちは一つとは限りません。
「うれしいけれど不安」「安心したけれど寂しい」のように、一見矛盾した感情が同時にあることもあります。
頭に浮かんだ考えを書く
次に、その瞬間に頭に浮かんだことを書きます。
「私の説明が下手だったのかな」 「どうせ私の意見は通らない」 「もっと準備しておけばよかった」 「別の案のほうが良かったのかもしれない」
といった内容です。
ここで大切なのは、「考えたこと=事実」と決めないことです。
たとえば「嫌われたに違いない」と感じても、実際に相手がそう考えているかどうかは分かりません。
ノートには、
「嫌われたような気がした」
と、自分の解釈として書いておくと整理しやすくなります。
本当はどうしたかったかを書く
最後に、「できることならどうしたかったか」を書きます。
たとえば、
「意見の良い部分だけでも評価してほしかった」 「なぜ採用されなかったのか理由を知りたかった」 「もう少し落ち着いて説明したかった」
などです。
この「どうしたかったか」の中には、自分が大切にしているものが隠れていることがあります。
評価してほしいのか、理解してほしいのか、公平に扱ってほしいのか、自分で選びたいのか。
こうした希望を繰り返し見ていくことで、価値観の輪郭が見えやすくなります。
5分で書ける基本テンプレート
自己理解ノートを毎回ゼロから考えるのが大変なら、書く項目を固定しておく方法があります。
たとえば、次の5項目です。
- 今日いちばん気になった出来事は?
- そのとき何を感じた?
- どんなことを考えた?
- 本当はどうしたかった?
- 今日の自分に何と言ってあげたい?
たとえば、次のように書けます。
今日いちばん気になった出来事 同僚から突然仕事を頼まれて、予定していた作業が終わらなかった。
そのとき何を感じた? 焦った。少し腹が立った。でも断るのも申し訳なく感じた。
どんなことを考えた? 「私がやったほうが早い」「断ったら冷たいと思われるかもしれない」と考えた。
本当はどうしたかった? 今日は自分の仕事を優先したかった。急ぎでなければ明日にしてほしかった。
今日の自分に何と言ってあげたい? 頼まれたからといって、いつも引き受けなくてもいいのかもしれない。
このように書いておけば、あとから見たときに「私は人から頼まれたとき、断ることに罪悪感を持ちやすいのかもしれない」といった傾向に気づくことがあります。
ただし、一度そう書いたからといって、それを自分の性格として確定する必要はありません。
似た場面で同じ反応が続くかを見ていくことが大切です。
価値観を見つける質問
自己理解ノートを続けていると、「私は結局、何を大切にしているのだろう」と考えたくなることがあります。
そのときは、抽象的に「私の価値観は?」と質問するより、具体的な経験から考えるほうが答えやすいことがあります。
うれしかった出来事から考える
最近、「良かったな」と感じた出来事を書き出してみてください。
たとえば、
「一人でゆっくり本を読めた」 「仕事で感謝された」 「友人と長く話せた」 「新しいことを学べた」
などです。
そして、
「その出来事の何がうれしかったのだろう?」
と考えます。
一人で過ごす時間がうれしかったなら、「自由」「静けさ」「自分のペース」が大切なのかもしれません。
人から感謝されたことがうれしかったなら、「貢献」「つながり」「役に立つこと」などが関係している可能性があります。
腹が立った出来事から考える
実は、嫌だった出来事も価値観を見つけるヒントになります。
たとえば、
「約束を急にキャンセルされて腹が立った」
という出来事があったとします。
なぜ腹が立ったのでしょうか。
「時間を無駄にされたと思った」 「大切に扱われていないように感じた」 「約束は守るものだと思っている」
など、理由によって大切にしているものは変わります。
怒りそのものを否定するのではなく、「私は何を大事にしていたから、この出来事が嫌だったのだろう」と考えてみると、価値観を見つけやすくなります。
うらやましい気持ちから考える
誰かを見て「いいな」と思ったときも、自分の希望を知るヒントになります。
たとえば、
「海外で働いている友人がうらやましい」
と感じたとしても、本当に海外に行きたいとは限りません。
- 場所に縛られず働けること
- 新しい経験ができること
- 自分で人生を選んでいるように見えること
- 周囲から評価されているように感じること
など、何に反応しているのかによって意味は異なります。
「何がうらやましいのだろう」と一段深く問いかけてみることで、自分の希望が具体的になります。

自分の強みを整理する書き方
自己理解というと、感情や価値観だけでなく、「自分の強みを知りたい」という人もいるでしょう。
強みについて考えるときは、「長所は何ですか?」と自分に聞くだけでは答えにくいものです。
そこで、過去の具体的な行動から考えます。
自然にできたことを書く
他の人から見れば大変そうなのに、自分ではそれほど苦労せずできたことはないでしょうか。
たとえば、
- 初対面の人とも話せる
- 情報を整理してまとめられる
- 細かな間違いによく気づく
- 人の話を長く聞ける
- 予定を立てて進められる
- 新しい道具を試すことが苦にならない
といった内容です。
「そんなことは誰でもできる」と思うことほど、自分にとって自然な強みである場合もあります。
人から頼まれたことを書く
これまで、周囲からどんなことを頼まれることが多かったかを書いてみる方法もあります。
「資料を確認してほしい」 「相談に乗ってほしい」 「パソコンの設定をしてほしい」 「旅行の計画を立ててほしい」
など、繰り返し頼まれていることには、自分が周囲から期待されている役割が表れていることがあります。
ただし、人から頼まれることと、自分がやりたいことは別です。
「得意だけれど好きではない」ということもあります。
そのため、
できるか 好きか 続けたいか
を分けて考えると、より自分に合った整理ができます。
苦手なことも自己理解に役立つ
自己理解ノートでは、良いところだけを探す必要はありません。
疲れやすい状況や苦手なことを知るのも、自分を理解する大切な一部です。
たとえば、
「大人数の集まりのあとにぐったりする」 「急な予定変更が続くと落ち着かない」 「仕事を同時に何件も頼まれると混乱する」
という傾向があるなら、それを「自分の欠点」と考えるより、
「どんな環境なら力を出しやすいか」
を考える材料にできます。
大人数が苦手なら少人数の環境を選ぶ、急な変更が負担なら余裕のある予定を組むなど、自分に合う工夫を考えられます。
苦手を克服することだけが自己理解の目的ではありません。
自分の特徴を知り、必要に応じて環境や行動を調整することも一つの方法です。
書いたノートの振り返り方
自己理解ノートは、書くだけでも頭の整理に役立つ場合がありますが、自己理解を深めたいなら定期的に振り返ることが大切です。
おすすめなのは、毎日分析しようとするのではなく、1〜2週間に一度まとめて見返す方法です。
繰り返している感情を見る
まず、よく登場する感情を探します。
「最近、焦ると何度も書いている」 「寂しいという言葉が多い」 「意外と安心したという日も多い」
などです。
次に、その感情が出ている場面を見比べます。
「仕事量が多いときに焦っている」 「連絡を待っているときに不安になっている」
といった共通点が見つかることがあります。
繰り返している言葉を見る
ノートの中で何度も使っている言葉にも注目してみてください。
たとえば、
「ちゃんとしなければ」 「迷惑をかけたくない」 「自由にしたい」 「認めてもらいたい」 「一人になりたい」
といった言葉です。
これらは、その時期に抱えている悩みや、自分が大切にしていることを知る手がかりになる可能性があります。
心地よかった条件を見る
悩んだ日の記録だけでなく、調子が良かった日の共通点も探してみましょう。
- 十分に眠れた
- 一人の時間があった
- 人と話した
- 運動した
- 仕事に集中できた
- 新しいことを学んだ
など、何が自分の状態に影響しているかを確認します。
「嫌なことを減らす」だけでなく、「自分にとって心地よい条件を増やす」という視点も、自己理解では大切です。
自分の希望を見る
振り返るときは、「本当はどうしたかった?」という欄にも注目してください。
そこに、
「もっと自由に決めたい」 「話を聞いてほしい」 「ゆっくり休みたい」 「新しいことに挑戦したい」
という希望が何度も登場するなら、今の自分にとって重要なテーマかもしれません。
すぐに実現できなくても構いません。
まず、「私はこうしたいと思っている」と気づくこと自体が自己理解につながります。
自己理解ノートを続けるコツ
自己理解ノートは、毎日続けなければ意味がないものではありません。
むしろ、完璧なルールを決めすぎると負担になり、続かなくなることがあります。
自分に合う方法を選びましょう。
毎日書かなくてもいい
「自己理解ノートは毎日書くべき」と考える必要はありません。
何か気になった日だけ書く方法でも構いませんし、週に2〜3回でも十分です。
大切なのは、記録が少しずつたまり、あとから見返せることです。
空白の日が続いたとしても、「続かなかった」と判断せず、また書きたくなった日に再開すれば問題ありません。
1日3行でもいい
時間がない日は、
- 今日気になったこと
- 感じたこと
- 本当はどうしたかったか
の3つだけでも構いません。
文章にせず、単語だけでも大丈夫です。
自己理解のために必要なのは文章力ではなく、自分の反応を残しておくことだからです。
紙でもスマートフォンでもいい
自己理解ノートは、紙のノートでなければならないわけではありません。
スマートフォンのメモ、パソコン、日記アプリなど、自分が書きやすいものを選んでください。
紙に書くほうが落ち着いて考えられる人もいれば、スマートフォンならすぐ記録できる人もいます。
方法よりも、続けやすさを優先することが大切です。
最初から「毎日30分書く」と決めるより、「気になることがあったら3分だけ書く」くらいから始めるほうが負担を感じにくくなります。自分に合わなければ、項目や頻度を変えて構いません。
書いても分からないときの工夫
ノートを書いても、「自分が何を感じているのか分からない」ということもあります。
そのようなときは、無理に答えを出さなくても大丈夫です。
質問の仕方を少し変えてみましょう。
「なぜ?」より「何が?」と聞く
「なぜ私はこんな気持ちなの?」と繰り返すと、答えが見つからず苦しくなることがあります。
その場合は、
「何がいちばん嫌だった?」 「何が変われば少し楽になる?」 「何を期待していた?」 「どんな言葉をかけてほしかった?」
など、具体的な質問に変えてみてください。
たとえば、友人との会話でモヤモヤしたとき、
「なぜ腹が立ったの?」
ではなく、
「相手のどの言葉が気になった?」
と聞くと、考えやすくなることがあります。
反対の状況を考える
「自分が何を望んでいるか分からない」ときは、「嫌だった状況の反対」を考える方法もあります。
「急に予定を変えられるのが嫌だった」
のであれば、
「事前に相談してもらえれば安心できる」
という希望が見えてくるかもしれません。
「仕事で細かく指示されるのが苦しかった」
のであれば、
「ある程度、自分でやり方を決めたい」
という気持ちがある可能性があります。
不満の裏側に、自分が望んでいる状態が隠れていることがあります。
色やイメージから考える方法もある
言葉だけでは気持ちを整理しにくい人は、「今の気持ちを色にすると何色だろう」と考えてみてもよいでしょう。
ここで大切なのは、「赤を選んだから怒っている」のように、色から心理状態を一方的に決めることではありません。
同じ赤でも、ある人には情熱的に感じられ、別の人には落ち着かない色に感じられることがあります。
「なぜ今日はこの色が気になるのだろう」 「この色を見ると、どんな感じがするだろう」
と、自分自身の連想を言葉にすることが目的です。
カラットセラピーでも、色やタロットカードを未来や性格を決めつけるためではなく、「自分は何を感じているのか」「本当はどうしたいのか」を考える手がかりとして大切にしています。
言葉で考えるだけでは難しいときは、こうした別の入り口を使ってみるのも一つの方法です。

自己理解ノートで避けたいこと
自己理解ノートは自由に書いてよいものですが、自分を理解するために使うのであれば、いくつか気をつけたい点があります。
自分を責める材料にしない
過去のノートを読み返して、
「また同じことで悩んでいる」 「私は成長していない」
と思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、同じ悩みが繰り返されることには、環境、人間関係、そのときの心身の状態などさまざまな要因があります。
「また同じだ」と評価するより、
「この状況では同じ反応が起こりやすいのかもしれない」
と観察するほうが、次の工夫につなげやすくなります。
他人の気持ちを断定しない
自己理解ノートでは、他人について考えることもあるでしょう。
ただし、
「相手は私を嫌っている」 「上司は私を評価していない」 「恋人はもう気持ちが冷めている」
といったことは、本人に確認しなければ分からない場合があります。
そのため、
「嫌われたように感じて不安になった」
のように、相手の心理と自分の感情を分けて書くことが大切です。
自己理解ノートの目的は、相手の本音を推測して当てることではなく、自分がその出来事をどう受け止めたかを理解することです。
書くほど苦しくなるなら休む
気持ちを書き出すことが、いつでも楽になるとは限りません。
つらい経験を詳しく思い出すことで、かえって苦しさが強くなる場合もあります。
そのようなときは、「最後まで書かなければ」と無理をする必要はありません。
ノートを閉じる、別のことをする、信頼できる人と話すなど、自分が落ち着ける方法を優先してください。
強い不安、気分の落ち込み、眠れない状態などが続き、日常生活に支障が出ている場合は、自己理解ノートだけで解決しようとせず、医療機関や適切な専門機関への相談も検討してください。
迷った日に使える質問集
毎日同じテンプレートでは書きにくいときは、その日の状態に合わせて一つだけ質問を選ぶ方法もあります。
たとえば、次のような問いがあります。
- 今日いちばん印象に残ったことは?
- 今日いちばんうれしかった瞬間は?
- 今日いちばん嫌だったことは?
- そのとき、何を期待していた?
- 本当は何と言いたかった?
- 断りたかったことはあった?
- 無理をしたことはあった?
- 安心できた瞬間はあった?
- 誰といると自然体でいられた?
- 一人になりたいと思った瞬間は?
- 最近、何に時間を使いたいと思っている?
- 最近、減らしたいことは?
- 最近、増やしたいことは?
- 誰かを見てうらやましいと思ったことは?
- その人の何がうらやましかった?
- 今日、自分で選べたことは?
- 今日、人に合わせたことは?
- 今、いちばん守りたいものは?
- もし誰にも評価されなくてもやりたいことは?
- 今の自分に必要なものは何だと思う?
すべて答える必要はありません。
むしろ、一日に一つだけ選び、少し考えてみるくらいでも十分です。
1か月後に振り返る項目
自己理解ノートがある程度たまったら、月に一度くらい全体を眺めてみると、自分の変化や傾向が分かりやすくなります。
次の項目を確認してみてください。
| 振り返る項目 | 確認すること |
|---|---|
| よく出てくる感情 | 不安、安心、怒り、うれしさなど何が多かったか |
| ストレスを感じた場面 | どのような状況で負担を感じていたか |
| 心地よかった場面 | どんな時間や環境で落ち着いていたか |
| 繰り返している考え | 「〜しなければ」など同じ言葉がないか |
| 本当はしたかったこと | 希望として何度も出ている内容はないか |
| 人間関係 | 誰といるときに自然体でいられたか |
| 仕事・活動 | どんな作業に満足感があったか |
| 変化 | 月の初めと終わりで気持ちが変わっているか |
ここでも、結果を点数化する必要はありません。
「今月は思っていた以上に休みを求めていた」 「人と会った日は疲れると思っていたけれど、好きな人と話した日は元気になっている」
など、自分なりの発見が一つあれば十分です。
自己理解とは、自分について完璧な説明ができるようになることではありません。
「以前より、自分が何に反応しているか分かるようになった」と感じられれば、それも一つの変化です。
自己理解をさらに深めたいときは
自己理解ノートを続けていると、書くだけでは整理しきれないテーマが見つかることもあります。
たとえば、
「私はどうしていつも人に合わせてしまうのだろう」 「本当は仕事を変えたいのか、ただ疲れているだけなのか分からない」 「自分が大切にしたいことを、もう少しじっくり考えたい」
といった場合です。
そのようなときは、ノートだけで答えを出そうとせず、別の視点を取り入れてみるのも一つの方法です。
本を読む、人と話す、質問ワークを試すなど、自己理解にはさまざまな入り口があります。
カラットセラピーでは、カラーやタロットカード、心理学的な対話などを手がかりに、自分の気持ちや本音を見つめる考え方を紹介しています。
自分で取り組める方法から少しずつ学びたい場合は、実践レッスン動画付きの無料メール講座もあります。ノートで言葉にする方法とは違う角度から、自分自身を見つめるきっかけとして活用してみてください。
カラットセラピーの個人セッションでは、保志吏衣子との対話を通して、仕事や人間関係、生き方、将来の選択などの迷いを整理し、自分の本音と具体的な次の一歩を考えていきます。
自己理解ノートのよくある質問
- 自己理解ノートは毎日書いたほうがいいですか?
-
毎日書く必要はありません。
習慣として毎日書くほうが続けやすい人もいますが、気になる出来事があった日だけ書く方法でも構いません。
自己理解ノートでは、「何日続けたか」より、あとから振り返れる記録が残っていることのほうが大切です。
週に数回でも、似た感情や考えが繰り返されていることに気づければ、十分に自己理解の材料になります。
- 何を書けばいいか分からない日はどうすればいいですか?
-
無理に書かなくても構いません。
何か書きたい場合は、
「今日いちばん気になったことは?」 「今日いちばん安心したことは?」 「今の気分を一言で表すと?」
といった簡単な質問から始めてみてください。
「特に何も思いつかない」と書く日があっても問題ありません。
- ネガティブなことばかり書いても大丈夫ですか?
-
ネガティブな気持ちを書くこと自体が悪いわけではありません。
ただし、読み返すたびに自分を責めたり、つらい出来事を繰り返し思い出して苦しくなったりする場合は、書き方や頻度を変えてみてください。
「嫌だったこと」だけでなく、
「少し楽だったこと」 「助かったこと」 「本当はどうしたかったか」
も一緒に記録すると、状況を別の角度から見やすくなります。
- 手書きとスマートフォンはどちらが効果的ですか?
-
自己理解ノートの目的から考えると、どちらでも構いません。
紙に書くほうが考えやすい人もいれば、スマートフォンなら気づいた瞬間に記録できる人もいます。
続けやすさや、落ち着いて振り返りやすいかどうかを基準に選んでみてください。
途中で方法を変えても問題ありません。
- 自己理解ノートはどのくらい続ければ自分が分かりますか?
-
「何日続ければ自己理解できる」という決まった期間はありません。
一度書いただけで気づくこともあれば、数週間、数か月の記録を見比べて初めて気づくこともあります。
また、自分の気持ちや大切にしたいものは、環境や経験によって変化することもあります。
そのため、自己理解を完成させることを目標にするより、「今の自分について少し分かることが増えた」と考えるほうが続けやすいでしょう。
まとめ
自己理解ノートは、自分について上手に文章を書くためのものではありません。
出来事・感情・考え・希望を分けて記録し、あとから自分の傾向を振り返ることに意味があります。
何が起きたのか、そのとき何を感じたのか、どんなことを考えたのか、本当はどうしたかったのか。この4つを少しずつ書いていくだけでも、自分が大切にしていることや、負担を感じやすい状況が見えてくることがあります。
そして、自己理解では一度で「私はこういう人間だ」と答えを決める必要はありません。
「こういう場面では焦りやすい」 「私は自由に選べることを大切にしているのかもしれない」 「疲れているときは、一人の時間が必要らしい」
と、小さな発見を積み重ねていくことが大切です。
毎日書けなくても、長文にならなくても構いません。あなた自身が続けやすい方法を選び、自分を評価するためではなく、自分の気持ちを知るためのノートとして使ってみてください。


