「自己肯定感が低いのは、親のせいなのでは」と考えると、親を責めたい気持ちと、「いつまでも親のせいにしていてはいけない」という気持ちの間で揺れることがあります。
子どもの頃にどのような言葉をかけられ、どのように気持ちを受け止めてもらったかは、自分自身の見方をつくる一つの要素です。そのため、親との関係や家庭環境が自己肯定感に影響することはあります。
ただし、自己肯定感が低い原因をすべて親だけに求める必要はありません。 人は成長するなかで、友人関係、学校、仕事、恋愛、成功や失敗など、さまざまな経験の影響を受けます。そして大人になったあとにも、自分への見方は少しずつ変えていくことができます。
大切なのは、「親のせいか、親のせいではないか」を白黒で決めることではありません。過去に受けた影響を必要以上に否定せず、そのうえで「今の自分はどう感じているのか」「これからどんな関係や考え方を選びたいのか」を整理していくことです。
- 親や家庭環境が自己肯定感にどのように影響する可能性があるのか
- 自己肯定感の低さを親だけのせいにできない理由
- 過去の家庭環境による影響と現在の自分を分けて考える方法
- 親を無理に許さず、自分の自己肯定感を育て直していく考え方
親の影響はあるがすべてではない

自己肯定感が低いとき、「育てられ方が原因なのでは」と考えるのは不自然なことではありません。ただ、親の影響があることと、親だけが原因であることは分けて考える必要があります。
子どもは最初から、自分自身について客観的な評価基準を持っているわけではありません。
「失敗しても大丈夫」 「あなたの気持ちを聞かせて」 「できないことがあっても、あなたの価値は変わらない」
このような関わりを経験することもあれば、反対に、
「どうしてこんなこともできないの」 「お兄ちゃんはできたのに」 「泣くほどのことじゃない」 「言うことを聞く良い子でいなさい」
といったメッセージを繰り返し受け取ることもあります。
もちろん、一つの言葉だけで自己肯定感が決まるわけではありません。また、同じ家庭で育ったきょうだいでも、受け止め方やその後の自己評価が異なることがあります。
それでも、身近な大人との関係を通じて、「自分はどのような存在なのか」「失敗したときにも受け入れてもらえるのか」「自分の気持ちを表現してよいのか」といった感覚が形づくられていく可能性はあります。
一方で、その後の自己肯定感には、友人や先生との関係、学校での経験、恋愛、職場、人から認められた経験、自分で何かをやり遂げた経験なども関係します。
つまり、
親との関係は自己肯定感に影響する要素の一つではあるけれど、それだけで人生全体が決まるわけではない
と捉えるのが現実的です。
自己肯定感に影響しやすい家庭環境
家庭環境の影響を考えるときは、親が「良い親だったか、悪い親だったか」と判定するより、自分がどのような関わりを繰り返し経験してきたのかを見ていくほうが整理しやすくなります。
否定や比較が多かった
子どもの頃から否定や比較を繰り返し受けると、「自分はそのままでは足りない」と感じることがあります。
たとえば、
- テストで90点でも、できなかった10点を指摘された
- きょうだいや友人と頻繁に比較された
- 得意なことより苦手なことばかり注意された
- 容姿や性格について否定的な言葉をかけられた
といった経験です。
こうした経験があったからといって、必ず自己肯定感が低くなるわけではありません。
ただ、長期間繰り返されれば、「できていない部分を探す」「他人より劣っているところを確認する」という考え方が習慣になる可能性があります。
その結果、大人になって褒められても素直に受け取れず、「たまたまうまくいっただけ」「もっとできる人がいる」と自分の価値を小さく評価してしまうことがあります。
条件付きで認められていた
「良い成績を取れば認めてもらえる」「言うことを聞けば褒めてもらえる」という経験が重なると、成果や行動と自分自身の価値が強く結びつくことがあります。
すると大人になってからも、
「役に立たなければ嫌われる」 「期待に応えなければ価値がない」 「失敗した自分は認められない」
と感じやすくなることがあります。
努力すること自体は悪いことではありません。問題になりやすいのは、成果が出なかったときに「失敗した」ではなく、「自分には価値がない」まで結論づけてしまうことです。
気持ちを受け止めてもらえなかった
悲しい、怖い、悔しい、嫌だという感情を表現したときに、
「そんなことで泣かないの」 「気にしすぎ」 「あなたが我慢すればいい」
などと言われ続けると、自分の感情を信用しにくくなる場合があります。
大人になってからも、「嫌だけれど、私がわがままなのかもしれない」「つらいけれど、もっと大変な人がいる」と、自分の気持ちをすぐに打ち消してしまうことがあります。
自己肯定感を考えるうえでは、能力だけでなく、自分の感情や希望を自分で尊重できるかどうかも大切です。
過干渉や強いコントロールがあった
親が子どものことを心配するのは自然なことです。ただし、進路、友人、服装、趣味などについて、本人の意思より親の考えが常に優先されていた場合、自分で判断する経験が少なくなることがあります。
その結果、
「自分の選択に自信がない」 「正解を誰かに決めてもらいたい」 「反対されると、自分が間違っている気がする」
と感じることがあります。
これは「自分で決める力がない」という意味ではありません。これまで自分で選び、その結果を経験する機会が少なかったのであれば、大人になってから小さな選択を重ねていくことで、自分の判断への信頼を育てていくことができます。
家庭内で安心しにくかった
家庭のなかで強い緊張が続いていた場合、自分の気持ちより周囲の状態を優先する癖がつくこともあります。
たとえば、「今日は親の機嫌が悪くないか」「怒らせないためにはどうすればいいか」と常に周囲を気にしていた場合です。
すると大人になってからも、人の表情や声色に敏感になり、
「相手が不機嫌なのは自分のせいかもしれない」 「嫌われないように合わせなければ」
と考えやすくなることがあります。
ただし、このような反応だけから過去の家庭環境や心理状態を断定することはできません。自分に当てはまる部分があるかを、あくまで自己理解の手がかりとして考えてみてください。
「親のせい」と思ってもいい
「親のせいだと思ってはいけない」と自分に言い聞かせる必要はありません。過去の経験について怒りや悲しみを感じること自体は、誰かへの責任転嫁とは限らないからです。
「もっと認めてほしかった」 「話を聞いてほしかった」 「あの言葉は今でも傷ついている」
そのような気持ちがあるなら、まず「私はそう感じている」と認識することが大切です。
ここで区別しておきたいのが、原因と責任です。
たとえば、「子どもの頃に繰り返し比較された経験が、今の他人と比較する癖に影響しているかもしれない」と理解することと、「今の人生がうまくいかないのは全部親の責任だ」と結論づけることは同じではありません。
前者は自己理解につながります。
どこから今の考え方が生まれたのかが分かれば、「これは昔から身につけてきた考え方なのかもしれない。今もそのまま採用する必要はあるだろうか」と考え直せるからです。
一方、「全部親のせいだから、自分には何もできない」という考え方になると、現在の選択肢まで小さくしてしまう可能性があります。
「誰が悪かったのか」だけを考え続けて苦しくなったときは、「私はその経験から、どんな考え方を身につけたのだろう」と問い直してみてください。責任の追及ではなく、自分の現在地を理解する方向へ視点を移しやすくなります。
親以外の経験も影響する
自己肯定感について考えるとき、家庭環境だけに原因を絞り込まないことも大切です。私たちの自己評価は、その後の多くの人間関係や経験からも影響を受けます。
たとえば、
- 学校で仲間外れやいじめを経験した
- 先生や指導者から強く否定された
- 容姿や成績を周囲と比較され続けた
- 恋愛で大切にされなかった経験がある
- 職場で失敗を責められ続けた
- SNSで他人と比較することが増えた
- 大きな失敗をして自信を失った
といった出来事も、自分への評価に影響する可能性があります。
反対に、家庭で十分に認められた感覚が少なくても、その後に安心できる友人やパートナー、先生、同僚などと出会うことで、自分への見方が変化することもあります。
人との関係と自己評価は、子ども時代だけで完成するものではありません。
だからこそ、「家庭環境の影響があったなら、もう変えられない」と考える必要もないのです。

大人になって現れやすい考え方

幼い頃の経験が現在に影響している場合、それは「自己肯定感が低い」という一言だけではなく、日常のさまざまな考え方として現れることがあります。
ここでは代表的な例を紹介しますが、当てはまるからといって親との関係が原因だと断定できるものではありません。
褒め言葉を受け取れない
「すごいですね」と言われたとき、
「そんなことありません」 「誰でもできます」 「今回は偶然です」
と反射的に否定してしまうことがあります。
謙虚さとして言っている場合もありますが、心のなかでも本当に自分の良さを認められないのであれば、「良いところを認めてはいけない」という考え方がないか確認してみてもよいでしょう。
褒められたら自信満々になる必要はありません。
まずは「ありがとうございます」と受け取るだけでも十分です。
失敗すると自分全体を否定する
自己肯定感が揺らぎやすい人は、一つの失敗を自分全体の評価に広げてしまうことがあります。
「仕事でミスをした」が、 「私は仕事ができない」になり、 さらに、 「私は何をやってもだめだ」 へと広がっていくイメージです。
しかし、本来「したこと」と「自分自身」は分けて考えられます。
失敗した事実を認めることと、自分の存在価値まで否定することは別です。
相手に嫌われないことを優先する
頼まれごとを断れない、自分の希望を言えない、相手の機嫌が悪いと必要以上に不安になるといった傾向が現れることもあります。
その背景に「良い子でいれば認めてもらえる」「反対すると嫌われる」といった学習がある場合もありますが、性格や現在の人間関係など、ほかの要因も考えられます。
大切なのは原因を決めつけることではなく、「私は今、相手の気持ちと自分の気持ちのどちらを優先しているだろう」と確認することです。
正解を人に求めてしまう
何かを選ぶたびに家族や友人へ確認し、「それでいいよ」と言われないと決断できないこともあります。
もちろん、相談することは悪いことではありません。
ただ、「意見を参考にする」のではなく、「誰かが許可してくれないと選べない」状態になっているなら、自分で決める練習が役立つことがあります。
過去の影響と向き合う方法
親との関係が今の自己肯定感に影響していると感じるなら、過去を無理に忘れようとするより、「過去に何があり、それが今の自分にどう残っているのか」を少しずつ整理してみましょう。
事実と解釈を分ける
まず、過去の出来事と、そこから自分が導いた意味を分けて考えます。
たとえば、
「テストで90点を取ったとき、親から『あと10点だったね』と言われた」
というのが出来事だとします。
そこから、
「100点でなければ価値がない」 「結果を出さないと認めてもらえない」
という考えを身につけた可能性があります。
ここで重要なのは、「親は絶対にそういう意味で言った」と断定することではありません。
自分がどう受け取ったのかに注目します。
親の意図とは別に、その言葉で傷ついたのであれば、その気持ちまで否定する必要はありません。
自分の中に残った言葉を探す
何か失敗したとき、頭のなかでどんな言葉が聞こえるでしょうか。
「こんなこともできないの?」 「もっと頑張らなきゃ」 「迷惑をかけてはいけない」 「ちゃんとしていないと嫌われる」
こうした言葉が繰り返し浮かぶなら、それが今の自分に必要なルールなのか考えてみます。
昔は周囲に適応するために必要だった考え方でも、大人になった今は必要なくなっている場合があります。
自分への言葉を現実的に変える
自己肯定感を高めようとして、
「私は完璧」 「私は何でもできる」
と無理に思い込む必要はありません。
信じられない肯定的な言葉を繰り返すより、現実に合った言葉へ修正するほうが受け入れやすいことがあります。
たとえば、
「失敗した私はだめ」 ではなく、 「失敗したことは残念だけれど、それだけで私全体の価値は決まらない」
「誰からも嫌われてはいけない」 ではなく、 「すべての人に好かれることはできない。合わない人がいてもいい」
「完璧にできないなら意味がない」 ではなく、 「まずできるところまでやってみよう」
というように変えていきます。
自己肯定感は、自分を大げさに褒めることではありません。
うまくいかない自分や迷っている自分も含めて、必要以上に否定しないことから始められます。
小さな選択を自分で決める
親の意見を優先する習慣が長かった人ほど、「自分はどうしたいのか」と聞かれても分からないことがあります。
その場合、人生を左右する大きな決断から始めなくても構いません。
- 今日何を食べたいかを自分で決める
- 休日をどう過ごしたいか考える
- 行きたくない誘いを一度断ってみる
- 欲しいものを他人の評価ではなく自分の基準で選ぶ
- 決めたあとに「この選択でよかった点」を確認する
小さな選択を繰り返すことで、「自分で決めても大丈夫だった」という経験を積み重ねることができます。
自己肯定感を「高い・低い」の二択で評価し続けると、それ自体が新しい自己否定になることがあります。「今日は自分の気持ちを一つ尊重できた」と、小さな変化を見ることも大切です。
親との関係はどうすればいい?

過去の影響に気づくと、「親と話し合わなければいけないのか」「許したほうがいいのか」と悩む人もいます。しかし、自己肯定感を育て直すために、必ず親との関係を修復しなければならないわけではありません。
無理に親を許さなくていい
「過去を乗り越えるためには親を許すべき」と考える必要はありません。
許すかどうかは個人によって異なります。
自分のなかで整理できれば十分な人もいますし、親との距離を保つほうが安心できる人もいます。
大切なのは、「許せない自分は未熟だ」と新たに自分を責めないことです。
話し合うことだけが解決ではない
親に過去の気持ちを伝えることで整理できる場合もあります。
しかし、親が必ず理解してくれるとは限りません。
「そんなこと言っていない」 「あなたのためだった」 「昔のことをいつまで言っているの」
と受け止められる可能性もあります。
そのため、「親に分かってもらえれば自分は回復できる」と、相手の反応だけに自分の心の整理を預ける必要はありません。
話すかどうかは、現在の関係性や安全性を考えたうえで選びましょう。
距離を取る選択もある
親子だからといって、どんな関係でも我慢して維持しなければならないわけではありません。
会う頻度を減らす、電話にすぐ出ない、話したくない話題を断るなど、自分を守るための距離を考えることもできます。
一方で、親との関係を完全に断つことが必ず正解というわけでもありません。
「世間ではどうすべきか」ではなく、現在の自分が安心して生活するために必要な距離はどの程度なのかを考えることが大切です。
自己肯定感を育て直すヒント
自己肯定感は、一度形成されたら変わらない性格ではありません。現在の自分への接し方や、人との関係を見直していくことで、少しずつ異なる感覚を育てられる可能性があります。
「できたこと」を事実として見る
自己評価が厳しい人は、失敗は覚えていても、できたことをすぐ忘れる傾向があります。
そのため、無理に自分を褒めるのではなく、事実を記録する方法があります。
- 苦手な電話を一本かけた
- 疲れていたので予定を一つ断った
- 分からないことを質問した
- 朝起きて仕事に行った
- 自分の希望を一度伝えた
どれも、他人と比較する必要はありません。
「すごいか、すごくないか」ではなく、「実際にできた」という事実を見る練習です。
自分への厳しいルールを見つける
ノートに「私は○○しなければならない」と思っていることを書き出してみる方法もあります。
| 自分の中のルール | 本当に必要か | 新しい考え方 |
|---|---|---|
| 迷惑をかけてはいけない | 誰にも一切迷惑をかけないのは難しい | 困ったときは助けを求めてもいい |
| 失敗してはいけない | 学ぶ過程では失敗も起こる | 修正できる失敗ならやり直せばいい |
| 親の期待に応えなければならない | 今の人生を生きるのは自分 | 意見は聞いても最終的には自分で選ぶ |
| 人に嫌われてはいけない | 全員と合うことはできない | 合わない人がいても自分の価値とは別 |
「昔からそうしてきたから」という理由だけで守っているルールがないか確認してみてください。
安心できる人との関係を大切にする
過去の人間関係だけではなく、現在どのような関係のなかにいるかも重要です。
安心できる関係では、
- 意見が違っても人格を否定されない
- 失敗しても必要以上に責められない
- 「嫌だ」「困った」と言える
- 相手の希望と自分の希望を両方扱える
- 無理をしなくても関係が続く
といった経験を得られることがあります。
「人に合わせなければ愛されない」という感覚が強かった人にとって、こうした関係は新しい経験になります。
自己肯定感を一人だけで何とかしようとせず、安心できる関係のなかで違う経験を積んでいくという視点も持ってみてください。

自分を責める癖にも気づく
自己肯定感が低いことに気づいたあと、「こんな性格になった自分が悪い」と、さらに自分を責めてしまうことがあります。
けれども、これまで身につけてきた考え方のなかには、当時の環境で自分を守ったり、人間関係を維持したりするために役立っていたものもあるかもしれません。
たとえば、親の機嫌をよく観察することが必要だった環境では、「周囲の感情を素早く察する」という習慣が身につくことがあります。
それが大人になって負担になっているなら、必要なのは「こんな自分はだめだ」と否定することではありません。
「昔は必要だった。でも今は、毎回そこまで相手を気にしなくても大丈夫かもしれない」
と、現在に合わせて調整していくことです。
自分の考え方を変えるとは、過去の自分を否定することではありません。
過去には必要だったものを理解したうえで、今の自分に合う方法を選び直していくことです。
一人で整理しにくいときは相談する
親との関係や自己肯定感について考えていると、子どもの頃のつらい記憶が次々と思い出されたり、考えれば考えるほど自分を責めたりすることがあります。
そのようなときは、一人だけで答えを出そうとしなくても構いません。
信頼できる人に話したり、必要に応じて心理職や医療機関など専門家へ相談したりする方法があります。
特に、
- 過去の出来事を思い出すと強い苦痛が続く
- 日常生活や仕事、人間関係に大きな支障が出ている
- 不安や落ち込みが長く続いている
- 睡眠や食事など生活に影響が出ている
- 自分を傷つけたい気持ちや消えてしまいたい気持ちがある
といった場合は、「自己肯定感を上げれば解決する」と考えず、医療機関や公的な相談窓口など適切な支援先につながることを優先してください。
カラットセラピーでも、自分の気持ちや人間関係について整理したい方に向けて個人セッションを行っています。
カラットセラピーは医療や心理療法の代わりになるものではありませんが、カラーやタロットカードを一方的な未来予測に使うのではなく、対話の手がかりにしながら、「自分は何を感じているのか」「本当はどうしたいのか」を見つめていくことを大切にしています。
自分だけで考えていると同じところを行き来してしまうときには、第三者との対話を通じて言葉にしてみることも一つの方法です。
親のせいと感じるときのよくある質問
- 自己肯定感が低いのは本当に親のせいですか?
-
親との関係や家庭環境が影響している可能性はありますが、親だけが原因とは限りません。
自己肯定感には、家庭だけでなく、友人関係、学校、恋愛、仕事、成功・失敗の経験などさまざまな要素が関係します。
そのため「親が原因かどうか」を一つに決めるより、「どの経験から、今のどんな考え方を身につけたのか」を整理するほうが、これからの変化につながりやすくなります。
- 親を責めるのはよくないことですか?
-
過去の経験について怒ったり、「あのときこうしてほしかった」と感じたりすることまで否定する必要はありません。
つらかった経験を「親も大変だったから」と急いでなかったことにすると、自分の気持ちまで置き去りにしてしまう場合があります。
ただし、親を責め続けることで自分自身が苦しくなっているなら、「誰が悪かったか」だけでなく、「その経験が今の自分にどんな影響を残しているのか」に視点を移してみることも大切です。
- 親を許さないと自己肯定感は上がりませんか?
-
必ずしも許す必要はありません。
親を許すことと、自分自身を理解して大切にすることは別の問題です。
「許さなければ前へ進めない」と思うことで苦しくなるのであれば、無理に結論を出さなくても構いません。まずは自分の気持ちや、現在必要な距離を確認することを優先してよいでしょう。
- 大人になってからでも自己肯定感は変えられますか?
-
子どもの頃の経験をなかったことにはできませんが、大人になってからの経験や人間関係、自分への接し方を通じて、自分に対する見方が変化することはあります。
たとえば、自分の希望を小さなことから選ぶ、できたことを事実として確認する、安心できる人との関係をつくる、自分を否定する言葉を現実的な表現に変える、といった積み重ねが考えられます。
「一気に自己肯定感を高める」ことより、以前より自分を責める回数が少し減った、嫌なことに嫌と言えた、といった変化を見ることが大切です。
- 親との関係を改善したほうがいいですか?
-
改善することが自分にとって望ましいなら、対話を試みる方法もあります。しかし、必ず関係を修復しなければならないわけではありません。
話し合うことで安心できる人もいれば、一定の距離を取ったほうが心が安定する人もいます。
親子関係について世間一般の「正しい形」を探すより、「今の自分が安心して生活するためには、どのくらいの距離がちょうどよいか」を考えてみてください。
まとめ
自己肯定感が低いと感じたとき、親との関係や家庭環境を振り返ることには意味があります。
子どもの頃に否定や比較が多かった、気持ちを受け止めてもらえなかった、親の期待に応えることを強く求められたなどの経験が、現在の自分への見方に影響している場合もあるからです。
一方で、自己肯定感は親との関係だけで決まるものではありません。
友人、学校、恋愛、仕事をはじめ、その後のさまざまな経験も関係します。そして、過去を変えられなくても、現在どのような人と関わり、自分にどんな言葉をかけ、どんな選択を重ねるかは見直していくことができます。
「親のせいだと思ってはいけない」と過去の傷つきを否定する必要もなければ、「親のせいだから私は変われない」と決めつける必要もありません。
まずは、
「私は何がつらかったのか」 「そこからどんな思い込みを身につけたのか」 「その考え方は、今の私にも必要なのか」 「これからは自分をどう扱っていきたいのか」
と、一つずつ自分に問いかけてみてください。
過去の影響を理解することは、過去に縛られるためではありません。
これからの自分が、以前とは違う選択をできるようになるための自己理解として役立てていくことができます。


