「断りたいけれど、角が立ちそう」「お願いしたいのに、相手の負担を考えると言い出しにくい」「不満を伝えると、つい責める言い方になってしまう」。人間関係では、言いたいことがあっても、どのような言葉にすればよいか迷う場面があります。
そんなときに役立つ考え方の一つが、自分も相手も尊重しながら気持ちや希望を伝えるアサーションです。
ただし、アサーションには「この言い方さえ使えばうまくいく」という万能な例文があるわけではありません。同じ言葉でも、相手との関係や状況、声の調子によって受け取られ方は変わります。
大切なのは、例文を丸暗記することではなく、事実・自分の感じ方・希望を整理し、相手を責めない言葉へ置き換えることです。この記事では、断る、頼む、意見を伝える、注意するといった身近な場面ごとに、アサーションの例文と考え方を紹介します。
- アサーションらしい言い方の基本
- 断る・頼む・意見を伝えるときの具体的な例文
- 職場や日常生活で相手を責めずに伝えるコツ
- 例文を自分の状況に合わせて作り替える方法
アサーションの例文の基本

アサーションの例文を見る前に、「アサーティブに話す」とはどのような状態なのかを整理しておきましょう。
アサーションでは、自分の意見や希望を我慢して相手に合わせ続けるのでもなく、自分の要求だけを一方的に押し通すのでもなく、自分の考えを率直に表現しながら、相手にも事情や意見があることを尊重します。
たとえば、急な仕事を頼まれたものの、今日は対応できないとします。
何も言えずに引き受けてしまえば、自分の負担が大きくなるかもしれません。一方で、「無理です。急に言われても困ります」と強く返せば、自分の状況は伝わっても、相手を責める印象になりやすくなります。
アサーティブに伝えるなら、次のような表現が考えられます。
「今日は17時までに仕上げる仕事があるため、今からすべて対応するのは難しいです。明日の午前中までであれば対応できます」
ここでは、「あなたの頼み方が悪い」と評価するのではなく、自分が置かれている状況と、できる範囲を伝えています。
アサーションでは、主に次の要素を整理すると言葉を作りやすくなります。
- 事実:何が起きているのか
- 自分の気持ちや影響:自分はどう感じるか、何に困っているか
- 希望:相手にどうしてほしいか
- 代替案:難しい場合に、ほかに何ができるか
すべてを毎回入れる必要はありません。大切なのは、「相手が悪い」という評価ではなく、自分から見えている事実と自分の希望を中心に話すことです。
アサーティブな言い方との違い
アサーションは、単に「やさしく言うこと」ではありません。言いたいことを曖昧にしすぎれば、自分の希望そのものが相手に伝わらなくなるからです。
同じ「残業を頼まれたけれど断りたい」という場面でも、言い方には違いがあります。
| 伝え方 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 我慢する | 「……分かりました」 | 本当は難しくても自分の希望を伝えていない |
| 攻撃的に伝える | 「無理です。いつも急すぎます」 | 相手への批判が中心になりやすい |
| 遠回しに伝える | 「今日はちょっと予定があって……」 | 断っているのか判断しにくい |
| アサーティブに伝える | 「今日は予定があるため残業はできません。明日の朝なら対応できます」 | 自分の事情と意思を明確にしつつ代替案を示している |
アサーティブな表現では、「私はどうするか」「私はどうしてほしいか」を明確にすることがポイントです。
相手に嫌われない言い方を探すことが目的ではありません。どれほど丁寧に伝えても、相手が残念に感じたり、意見が一致しなかったりすることはあります。
アサーションは、必ず相手を納得させる技術ではなく、違いがあることを前提に、自分と相手の双方を尊重してコミュニケーションを取るための考え方として捉えると分かりやすいでしょう。
「正しい言い方」を探しすぎると、かえって言葉が出なくなることがあります。まずは「私は何に困っていて、どうしてほしいのか」を一文で整理してみると、自分に合う表現を作りやすくなります。

断るときのアサーション例文
断る場面では、「断ったら悪いのではないか」という気持ちから、曖昧な返事をしてしまうことがあります。アサーションでは、相手の依頼を受け止めたうえで、できないことはできないと伝えます。
仕事を頼まれたとき
急な仕事を追加で頼まれたものの、すでに予定が埋まっている場合です。
例文
「お声がけありがとうございます。今日はA社の資料作成を優先する必要があるため、この仕事まで今日中に終えるのは難しいです。明日の午前中までであれば対応できます」
単に「忙しいので無理です」と言うのではなく、難しい理由と対応可能な範囲を伝えています。
優先順位を自分だけでは決められない場合は、次のようにも言えます。
「現在AとBの業務を進めています。この仕事を優先する場合、どちらを後ろにするか相談させてもらえますか」
仕事を断ることと、業務そのものを拒否することは同じではありません。期限や優先順位を調整することで対応できる場合は、その条件を伝える方法があります。
飲み会や誘いを断るとき
例文
「誘ってくれてありがとう。今日はゆっくり休みたいので、今回は参加しないことにします。また都合が合うときに声をかけてもらえるとうれしいです」
「用事がある」と理由を作らなくても、自分の意思として断ることはできます。
詳しい事情を説明したくない場合は、
「ありがとうございます。今回は参加を見送ります」
だけでも構いません。
アサーションとは、何でも詳しく説明することではありません。伝えたくない私的な事情まで開示する必要はなく、必要な範囲で自分の意思を明確にすることが大切です。
頼み事を繰り返されたとき
一度断っても再び頼まれる場合には、説明を増やし続けるより、同じ意思を落ち着いて繰り返すほうが分かりやすいことがあります。
例文
「事情があるのは分かりました。ただ、今回は引き受けられません」
さらに求められたら、
「申し訳ありませんが、先ほどお伝えしたとおり、今回は対応できません」
と伝えます。
断るたびに新しい理由を付け足すと、その理由を解決すれば引き受けてもらえると受け取られることもあります。「できない」という意思そのものを伝えることも必要です。

頼むときのアサーション例文
何かをお願いするときは、「察してほしい」と期待するのではなく、具体的にしてほしい行動を伝えることがポイントです。
同僚に仕事を頼むとき
例文
「明日の会議資料を15時までにまとめる必要があります。可能であれば、この表の確認を14時までにお願いできますか」
「少し手伝ってほしい」よりも、何をいつまでにしてほしいのかが明確です。
一方で、依頼は命令ではありません。
「難しければ教えてください」
と加えれば、相手が事情を伝えられる余地を残せます。
上司に相談の時間を頼むとき
例文
「今後の業務の進め方について相談したいことがあります。今週、20分ほどお時間をいただくことはできますか」
相談内容と必要な時間を具体的にすると、相手も判断しやすくなります。
急ぎの場合には、
「明日までに判断する必要があるため、可能であれば今日中に10分ほど相談したいです」
のように期限を伝えることもできます。
家族に家事を頼むとき
「私ばかり家事をしている」と感じているときに、
「どうして何もやってくれないの?」
と伝えると、相手への評価や批判が中心になりやすくなります。
例文
「夕食の準備と片付けが重なると負担を感じています。今日は食後の食器洗いをお願いしたいです」
ポイントは、「あなたは家事をしない人だ」と決めつけるのではなく、今困っていることと、してほしい行動を分けて伝えることです。
意見を伝えるアサーション例文
相手と意見が違うときにも、賛成するふりをする必要はありません。アサーションでは、相手の考えを否定せずに、自分の考えを別の意見として提示します。
会議で反対意見を伝えるとき
例文
「短期間で実施できるという点はメリットだと思います。一方で、問い合わせ対応の負担が増える可能性が気になっています。開始前にサポート体制も確認しておきたいです」
最初に必ず相手を褒めなければいけないわけではありませんが、どの部分に賛成し、どの部分に懸念があるかを分けると、単なる否定になりにくくなります。
「それは違います」ではなく、
「私はこの点を別の角度から考えています」
と、自分の視点として示す方法もあります。
上司の考えと違うとき
例文
「その進め方も理解できます。ただ、現在の人数で今週中にすべて実施すると、確認時間が足りなくなることが気になっています。私は、まずAまで進めて結果を確認してからBへ進むほうが安全だと考えています」
上司と部下など立場に差がある関係では、どのような言い方をしても自由に意見を言えるとは限りません。職場の文化や相手との関係、安全性なども考える必要があります。
アサーションは、「どんな相手にも必ず本音を言うべき」という考え方ではありません。
友人と考えが違うとき
例文
「そう考える人がいるのは分かるよ。私は今回は少し違っていて、無理に続けるより距離を置くほうがいいと思っている」
相手の意見を理解することと、同意することは別です。
「そういう考え方なんだね」と受け止めたうえで、「私はこう思う」と続ければ、自分の考えを保ちながら会話を続けることができます。
注意するときのアサーション例文

注意や改善のお願いでは、「いつも」「普通は」「常識でしょ」といった評価の言葉を減らし、具体的な行動を取り上げることが役立ちます。
遅刻が続いている人に伝えるとき
例文
「今週、開始時刻を過ぎてから参加することが3回ありました。予定していた説明を繰り返す必要が出ているので、明日からは開始時刻までに参加してほしいです。難しい事情があるなら教えてください」
「時間にだらしない」と人格を評価するのではなく、起きている行動と、その影響について話しています。
大きな声が気になるとき
例文
「電話中の声がこちらの席まで聞こえていて、作業に集中しにくく感じています。可能であれば、少し声の大きさを下げてもらえますか」
「うるさいです」だけでは、相手が責められたと感じる可能性があります。
「私は集中しにくい」と、自分への影響として伝えることで、何が問題なのかを具体的にできます。
約束が守られなかったとき
例文
「昨日までに連絡をもらう予定でしたが、まだ確認できていません。予定を決めたいので、今日18時までに返事をもらえると助かります」
「いつも連絡が遅い」と過去の不満をまとめてぶつけるより、今解決したい問題に絞ったほうが、相手にも必要な行動が伝わりやすくなります。
職場で使えるアサーション例
職場では、立場や役割、期限が関係するため、「自分の希望を言えば終わり」とはいかない場面があります。ここでは、仕事で起こりやすい状況を短い例文で紹介します。
仕事量が多すぎる
「現在、A・B・Cを今日中に進める予定です。新しい業務も今日中に対応する場合、すべてを予定どおり終えるのは難しいです。どれを優先するか相談させてください」
締め切りを延ばしてほしい
「確認に想定より時間が必要になっています。今日17時ではなく、明日10時までに変更していただけると、必要な確認をしたうえで提出できます」
急な依頼に対応できない
「今日は予定している作業で時間が埋まっているため、今からの対応は難しいです。明日の午後であれば着手できます」
会議で発言を遮られた
「すみません。今の説明を最後までお伝えしてから、ご意見を伺ってもよいでしょうか」
指示が曖昧で分からない
「認識を合わせたいので確認させてください。今回はAまで完成させればよいでしょうか。それともBまで必要でしょうか」
ミスを指摘されたが認識が違う
「ご指摘ありがとうございます。私が確認した資料では、この数字はAになっています。念のため、どの資料を基準にするか一緒に確認してもよいでしょうか」
自分だけに仕事が集中している
「今週は追加業務を4件担当していて、通常業務の時間を確保しにくくなっています。今後の追加依頼について、チーム内で分担を相談したいです」
このように職場では、「嫌です」「困ります」だけで終わらせず、業務への影響や必要な調整を具体的にすることが重要です。
日常で使えるアサーション例
アサーションは職場だけのコミュニケーション方法ではありません。家族、友人、パートナーなど、距離が近い関係ほど「言わなくても分かってほしい」という期待が生まれやすいため、希望を言葉にすることが役立つ場合があります。
一人で過ごしたい
「今日は少し一人でゆっくり過ごしたいです。嫌なことがあったわけではないので、また明日話せるとうれしいです」
電話を切りたい
「もう23時なので、今日はそろそろ休みたいです。続きはまた今度聞かせてください」
借りたものを返してほしい
「先月貸した本を今週使いたいので、金曜日までに返してもらえるかな」
苦手な話題をやめてほしい
「その話題について今は話したくありません。別の話に変えてもらえると助かります」
勝手に予定を決めてほしくない
「予定を決める前に、一度私の都合も確認してほしいです。次からは先に相談してもらえますか」
連絡頻度について伝える
「仕事中はすぐに返信できないことがあります。急ぎでなければ、返事は夜まで待ってもらえるとうれしいです」
自分の希望も聞いてほしい
「あなたが行きたい場所も大事にしたいです。今回は私も希望を伝えたいので、両方を出してから決めませんか」
身近な関係だからこそ、言葉にしなければ分からないことがあります。アサーションでは、「本当に大切に思っているなら察してくれるはず」と考えるのではなく、自分の希望をできる範囲で具体的に伝えていきます。
相手を責めない言い換え例
アサーションの例文を自分で作るときには、「あなたは」という言葉を使ってはいけないわけではありません。ただし、相手への評価が中心になっていないかを確認してみるとよいでしょう。
たとえば、
「あなたは話を聞いてくれない」
と言いたくなった場合、本当に伝えたいことを整理してみます。
実際には、
「私が話している途中で別の話題になると、最後まで話せなかったと感じる。まず最後まで聞いてほしい」
ということかもしれません。
ほかにも、次のように置き換えられます。
| 責める印象になりやすい表現 | アサーティブな言い換え例 |
|---|---|
| いつも遅いよね | 10時の約束で10時20分になったので、次回は時間までに来てもらいたいです |
| ちゃんとして | この部分を今日中に確認して、終わったら連絡してください |
| どうして分かってくれないの | 私はこの点を特に心配しています。もう少し話を聞いてもらいたいです |
| 勝手に決めないで | 私にも予定があるので、決める前に相談してほしいです |
| 普通そんなことしないよ | 私はそのやり方だと困ります。次からは先に確認してください |
| もういい | 今は気持ちを整理したいので、30分ほど時間を置いてから話したいです |
ここで重要なのは、表面的に丁寧語へ変えることではありません。
「あなたは本当に無責任ですね」を「無責任だと思います」と言い換えても、相手への評価が中心であることは変わりません。
何が起きたのか、自分は何に困っているのか、どう変えてほしいのかまで具体化することが、アサーティブな表現につながります。
例文を自分の言葉にする方法

ここまでのアサーション例文を、自分の状況に合わせるための手順を紹介します。話す前にメモへ書くだけでも整理しやすくなります。
- 起きている事実を書く
「いつも」「全然」「普通」といった評価はいったん外し、「昨日の会議で説明中に3回話が変わった」のように、できる範囲で具体的な出来事を書きます。 - 自分への影響を整理する
「困る」「不安」「集中できない」「予定を変更する必要がある」など、自分が何を感じ、何に影響が出ているのか考えます。 - 希望を具体的にする
「ちゃんとしてほしい」ではなく、「次回は前日までに連絡してほしい」のように、相手が行動として理解できる形へ変えます。 - 相手の事情も聞ける形にする
必要であれば、「難しい事情があれば教えてください」「ほかに可能な方法はありますか」と、話し合える余地を残します。
たとえば、「上司から急に仕事を振られて腹が立つ」という状態を整理するとします。
事実は「今日締め切りの業務を進めているところへ、別の今日締め切りの仕事を依頼された」。
影響は「両方を今日中に終えるのは難しく、焦っている」。
希望は「優先順位を決めてほしい」。
ここまで整理できれば、
「現在Aの業務を今日中に終える予定で進めています。Bも今日中となると、両方を十分に確認して仕上げるのは難しいです。どちらを優先するか相談させてください」
という表現にできます。
感情が強くなっているときは、その場ですぐに完璧な言葉を作ろうとしなくても構いません。「今はすぐに答えられないので、少し考えてから返事をします」と伝え、自分が何を望んでいるのか整理する時間を取る方法もあります。

うまく伝わらないときの考え方
アサーティブに話せば、必ず相手が理解してくれるわけではありません。丁寧に断っても押し切ろうとする人もいれば、意見の違いそのものに不満を感じる人もいます。
そのため、アサーションを「相手を思いどおりに動かす話術」と考えないことが大切です。
相手が反対する場合
あなたが希望を伝える権利があるのと同じように、相手にも別の希望を伝える余地があります。
たとえば、
「今日は残業できません」
と伝えたときに、
「どうしても今日必要です」
と返されることがあります。
その場合には、
「今日必要なのですね。ただ、私は18時以降は対応できません。17時までにできる範囲を進めるか、明日の朝対応することはできます」
と、自分のできる範囲を再度伝えます。
双方の希望が一致しなければ、最終的には調整や判断が必要です。
相手が怒った場合
相手が怒ったからといって、必ずしも自分の伝え方が間違っていたとは限りません。同時に、「アサーティブに言ったのだから自分には問題がない」と決めつける必要もありません。
声の大きさ、タイミング、言葉の選び方など、改善できる点がないか振り返ることはできます。
ただし、相手の感情をすべて自分が引き受ける必要はありません。
「怒らせないために何も言わない」という状態が続いているなら、自分がどこまでなら受け入れられるのかを考えてみることも大切です。
その場で言えなかった場合
あとになって「やっぱり嫌だった」と気づくこともあります。
その場で言えなかったからといって、必ず諦めなければいけないわけではありません。
「先ほどの件ですが、一度は引き受けると答えたものの、予定を確認すると難しいことが分かりました。改めて相談してもよいでしょうか」
のように、あとから伝え直せる場合もあります。
アサーションは、一度で完璧にできることを目指すものではありません。自分の気持ちや希望に気づき、それを少しずつ言葉にできるようになることも大切な過程です。

アサーションで避けたい表現
アサーションを意識していても、相手を責める表現や曖昧な表現が入り込むことがあります。特に次のような言葉には注意してみましょう。
「いつも」「絶対」「全然」
「あなたはいつも遅れる」
「絶対に私の話を聞いてくれない」
といった表現は、過去の出来事をまとめて評価する形になりやすくなります。
できれば、
「昨日と今日、予定の時間から20分ほど遅れていた」
のように、今話し合いたい出来事へ絞ります。
「普通は」「常識では」
自分にとって当然に感じることでも、相手が同じ基準を持っているとは限りません。
「普通は先に連絡するでしょう」
ではなく、
「予定を調整したいので、変更するときは前日までに連絡してほしいです」
と希望を伝えるほうが具体的です。
「どうせ」「言っても無駄」
まだ伝えていない段階で相手の反応を決めつけてしまうと、自分の希望を伝える機会そのものを失うことがあります。
もちろん、これまで何度伝えても改善がなかった場合や、安全に話せない関係では事情が異なります。
相手との関係やこれまでの経緯を踏まえて、直接伝えるのか、距離を取るのか、第三者へ相談するのかを考えることも必要です。
アサーションのよくある質問
- アサーションの簡単な例文は?
-
基本形としては、「今こういう状況です。私はこう感じています。こうしてもらいたいです」と整理すると考えやすくなります。
たとえば、
「予定より30分遅れていて、この後の予定に間に合うか心配です。あと何分くらいかかるか教えてもらえますか」
という形です。
ただし、毎回すべての要素を入れる必要はありません。「今日は対応できません」のように、意思を短く伝えるだけで十分な場合もあります。
- 断るときに理由は必ず説明するべきですか?
-
必ず詳しい理由を説明する必要はありません。
「今回は参加できません」「今日は対応できません」と意思を伝えるだけでもよい場面があります。
理由を添えることで相手が理解しやすくなる場合は説明しても構いませんが、プライベートな事情など、話したくないことまで説明する必要はありません。
- アサーションとわがままの違いは何ですか?
-
自分の希望を伝えること自体が、わがままとは限りません。
アサーションでは、自分の希望を伝えると同時に、相手にも事情や希望があることを前提にします。
「私はこうしてほしい」と伝えることと、「私の希望どおりにしなければならない」と要求することは別です。
相手が断ったり、別案を出したりする余地も含めてコミュニケーションを取ることが大切です。
- 相手を傷つけないアサーションの言い方はありますか?
-
どのような言葉でも、相手がまったく傷つかないことを保証することはできません。
ただし、人格を評価する言い方を避け、具体的な出来事と自分への影響、希望を伝えることで、不必要に相手を責める表現は減らせます。
「あなたは無責任です」ではなく、
「昨日までに連絡をもらう予定でしたが、まだ届いていません。今日中に状況を教えてください」
のように伝える方法があります。
- アサーティブに言っても聞いてもらえない場合は?
-
まず、自分の希望をもう一度短く伝える方法があります。
それでも相手が受け入れない場合、話し合いで調整できるのか、別の方法が必要なのかを考えます。
特に、職場でのハラスメント、継続的な威圧、家庭内での暴力など、安全性に関わる問題では、伝え方を工夫することだけで解決しようとせず、適切な相談先や第三者の支援を利用することも重要です。
まとめ
アサーションの例文は、正解としてそのまま覚えるものではありません。
「断るならこの一文」「注意するならこの言葉」と決めてしまうよりも、今何が起きているのか、自分はどう感じているのか、相手に何を希望しているのかを整理し、自分の言葉に置き換えることが大切です。
言い方に迷ったときは、まず次の3点だけ考えてみてください。
- 相手への評価ではなく、どんな事実が起きているか
- その出来事によって、自分にどんな気持ちや影響があるか
- 自分は具体的にどうしてほしいのか
そして、必要に応じて相手の事情や別の選択肢も聞いてみます。
アサーションを意識していても、いつでも冷静に伝えられるとは限りません。あとになって言いたいことに気づいたり、言葉が強くなってしまったりすることもあるでしょう。
そんなときも、「本当は何を伝えたかったのだろう」と振り返ることで、次のコミュニケーションに生かせます。
自分を我慢させることでも、相手を言い負かすことでもなく、自分の気持ちと相手の存在の両方を大切にしながら、必要なことを言葉にしていくこと。それが、アサーションを日常で活用するうえでの基本です。


