「本当は断りたいのに、断ったら嫌われそう」「途中で考えが変わったけれど、一度言ったことを変えるのは無責任かもしれない」。人間関係の中で、このように自分の気持ちよりも相手を優先してしまうことは珍しくありません。
そんなときに役立つ考え方の一つが、アサーション権です。
アサーション権は、自分の意見を何でも押し通してよいという意味ではありません。自分には「断る」「考え直す」「助けを求める」「分からないと言う」といった選択肢があることを認めると同時に、相手にも同じ権利があると考えます。
大切なのは、「自分か相手か」のどちらかを優先することではなく、自分も相手も一人の対等な人として尊重することです。
この記事では、アサーション権の意味や代表的な内容、わがままとの違い、日常生活での活かし方まで分かりやすく整理します。
- アサーション権がどのような考え方なのか
- 断る・考え直す・助けを求めるなどの代表的な権利
- アサーション権とわがまま・自己中心的な要求との違い
- 自分と相手の権利を尊重しながら伝える具体的な方法
アサーション権とは

アサーション権とは、自分の気持ちや考え、希望などを大切にし、それらを適切に表現することを認める考え方です。
そもそもアサーションとは、自分だけを優先することでも、相手に合わせ続けることでもありません。厚生労働省の「こころの耳」では、アサーションを、相手の気持ちや考えを尊重しながら、自分の気持ちや考えをその場に適した方法で伝えるコミュニケーションとして説明しています。
その土台になるのが、「自分にも気持ちや希望を表現する権利がある」と考えることです。
たとえば、誰かから頼み事をされたとき、本当は難しいにもかかわらず、
「頼まれたのだから断ってはいけない」
と思い込んでいると、自分の意思を伝えることが難しくなります。
そこで、
「私は断ってもよい」
という選択肢を自分に認めます。
ただし、ここで重要なのは、アサーション権を法律上定められた具体的な権利の一覧のように考えないことです。アサーショントレーニングの中で、自分の思い込みを見直し、対等な自己表現をしやすくするために用いられる考え方と捉えると分かりやすいでしょう。
また、「アサーション権は全部で○個」と世界共通で決まっているわけでもありません。学ぶ体系によって、数や表現は異なります。たとえばアサーティブジャパンでは、プログラムの中で「12の権利」を扱っていることを説明しています。
そのため、項目数そのものを覚えるよりも、自分にも相手にも気持ち・意見・選択を持つ余地があるという基本的な考え方を理解することが大切です。

なぜ権利として考えるのか
「自分の希望を伝えてよい」と頭では分かっていても、実際の人間関係では難しいことがあります。
特に、相手を傷つけたくない気持ちが強い人や、人からどう思われるかを気にしやすい場面では、自分の希望を表現することに罪悪感を覚えることがあります。
たとえば、
- 断ったら冷たい人だと思われる
- 意見を変えたら信用を失う
- 助けを求めるのは迷惑だ
- 分からないと言うのは恥ずかしい
- 自分の希望より相手の希望を優先すべきだ
と考えてしまう場合です。
もちろん、人への配慮は大切です。しかし、配慮することと、自分の希望を常に後回しにすることは同じではありません。
アサーション権という形で考える意味は、こうした「○○しなければならない」という思い込みから少し距離を取り、本当に自分には選択肢がないのかを見直すことにあります。
「断らなければならない」のでも、「必ず引き受けなければならない」のでもありません。
「断ることもできるし、引き受けることもできる。そのうえで私はどうしたいだろう」
と考えられる状態をつくることが目的です。
「自分にはこの権利がある」と言い聞かせることよりも、「私は本当はどうしたいのだろう」と自分に問いかけてみるところから始めると、自分の気持ちを整理しやすくなります。
アサーション権の代表例
アサーション権にはさまざまな表現がありますが、ここでは日常生活で理解しやすい代表的な内容に整理して紹介します。
すべてを「いつでも必ず行使すべきルール」と考える必要はありません。自分が無意識に禁止している選択肢がないかを確認するための視点として読んでみてください。
断ることができる
アサーションを学ぶうえで、特に重要なのが「ノーと言うことができる」という考え方です。
頼まれたからといって、必ず引き受けなければならないわけではありません。
たとえば、
「今日中にこの仕事もお願いできない?」
と言われたとします。
すでに予定がいっぱいなら、
「今日は別の作業があるので引き受けられません」
と断ることも選択肢の一つです。
断ることは、相手そのものを否定することではありません。「その人は嫌いではないけれど、その依頼には応じられない」ということもあります。
また、断る理由を必要以上に詳しく説明しなければならないとは限りません。
「今回は難しいです」
だけで十分な場面もあります。
一方で、仕事上の役割や契約、法律上の義務などが関係する場合には、単に「断る権利がある」という一般論だけでは判断できません。アサーション権は、法的な義務までなくすものではない点には注意が必要です。
考えを変えることができる
一度決めたことを変更すると、
「言っていることが違うと思われるのでは」
と不安になる人もいるでしょう。
しかし、新しい情報を知ったり、状況が変わったり、自分の気持ちを整理したりした結果、考えが変わることはあります。
たとえば、
「参加すると伝えましたが、予定を確認したところ難しいことが分かりました。今回は欠席します」
と伝えることもできます。
もちろん、変更によって相手に影響が出る場合には、できるだけ早く伝える、謝意を示す、代替案を考えるといった配慮は必要です。
考えを変えられることと、影響への責任を持たなくてよいことは別です。
この二つを分けて考えることが、アサーションでは大切になります。
間違えることができる
「失敗してはいけない」と考えすぎると、自分の意見を言うこと自体が怖くなる場合があります。
しかし、人はいつも正しい判断ができるわけではありません。
分からないことを予想して間違えたり、よいと思って選んだ方法が結果的にうまくいかなかったりすることもあります。
アサーション権では、間違いを完全に避けることよりも、
「間違える可能性もある自分を認める」
という視点を持ちます。
ただし、
「間違えてもいいのだから責任を取らなくていい」
という意味ではありません。
自分のミスによって誰かに迷惑をかけたなら、謝る、訂正する、必要な対応をすることは大切です。
間違えることを認める権利と、その結果に向き合う責任は両立します。
分からないと言うことができる
会議や授業、仕事の説明などで、
「分かりません」
と言えず、分かったふりをしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、分からないことがあるのは自然です。
「ここまでの説明は理解できましたが、この部分だけもう一度説明してもらえますか」
と確認することも、アサーティブな自己表現の一つです。
分からないまま進めて後から大きな行き違いになるより、早めに確認したほうが双方にとって負担が小さくなる場合もあります。
助けを求めることができる
「自分のことは自分で解決しなければならない」と考える人ほど、助けを求めることに抵抗を感じる場合があります。
しかし、困っていることを伝えたり、協力を依頼したりすることも選択肢です。
たとえば仕事なら、
「今日中に一人で終えるのは難しいので、一部を手伝ってもらえないでしょうか」
と伝えられます。
ここで覚えておきたいのは、助けを求める権利があることと、相手に助ける義務が生じることは別だということです。
自分には頼む自由があります。
同時に、相手には断る自由があります。
この両方を認めることが、アサーション権の重要なポイントです。
自分の意見を持つことができる
周囲と違う意見を持つこと自体は、相手への攻撃ではありません。
「私は少し違う考えです」
と伝えることができます。
たとえば、
「みんなはこの案がいいと言っていますが、私はもう少し時間をかけて検討したいと思っています」
という伝え方です。
相手と違う意見を持つことと、相手の意見を否定することは分けて考えられます。
「あなたは間違っている」
ではなく、
「私はこう考えている」
と自分を主語にすると、違いを表現しやすくなります。
自分の気持ちを表現できる
うれしい、悲しい、困っている、不安だ、腹が立っているなど、自分の感情を認識し、必要に応じて言葉にすることもできます。
ただし、感情を持つことと、その感情のまま相手を攻撃することは別です。
たとえば、
「あなたは本当に無神経だ」
と人格を評価する代わりに、
「その言い方を聞いて、私は悲しく感じました」
と自分の経験として伝える方法があります。
感情には正解・不正解をつけにくいものです。
「そんなことで怒るべきではない」と感情そのものを否定するより、「私は今、怒っているんだな」と気づいたうえで、どう表現するかを選ぶことがアサーションにつながります。
すぐに答えなくてもよい
突然頼み事や提案をされたとき、その場ですぐに返事をしなければならないとは限りません。
「少し考えてから返事をしてもいいですか」
「予定を確認して、明日までに連絡します」
と保留する方法もあります。
特に、相手の勢いに押されると断れなくなる人にとって、「すぐに決めない」という選択肢を持っておくことは役立ちます。
時間を取ることで、
「私は本当に引き受けたいのか」
「無理なくできるのか」
を落ち着いて考えやすくなるからです。
自分で選ぶことができる
最終的に何を選ぶかを考えるのは自分です。
周囲からアドバイスをもらうことはできますが、その意見を必ず採用しなければならないわけではありません。
「心配してくれているのは分かります。ただ、今回は自分でこちらを選びたいと思っています」
と伝えることもできます。
ただし、選択には結果が伴います。
アサーション権は「好きにしても責任を負わなくてよい」という考えではありません。
自分で選び、その選択について自分が引き受けられる範囲を考えることまで含めて捉えるとよいでしょう。
相手にも同じ権利がある

アサーション権を理解するときに最も大切なのは、自分が持っている権利は、相手も持っているということです。
たとえば、あなたには相手にお願いする権利があります。
しかし、相手には断る権利があります。
反対に、相手にはあなたにお願いする権利がありますが、あなたにも断る権利があります。
この関係を整理すると、次のようになります。
| 自分に認めること | 相手にも認めること |
|---|---|
| 自分の意見を言う | 違う意見を言う |
| 頼み事をする | 頼み事を断る |
| 断る | 断られて残念に思う |
| 考えを変える | 変更について意見を言う |
| 助けを求める | 助けられないと伝える |
| 自分の気持ちを表す | 相手の気持ちを表す |
| 交渉する | 条件に同意しない |
たとえば、
「私は断る権利があるのだから、あなたは文句を言ってはいけない」
という考え方は、アサーションとは少し異なります。
自分には断る選択肢がありますが、相手にも、
「残念です」
「別の方法を相談できませんか」
と伝える自由があります。
お互いの希望が一致しないことはあります。
アサーションは、必ず意見を一致させる方法ではありません。
意見が違う状態でも、お互いを対等な存在として扱いながら話し合うための考え方です。
わがままとの違い
「自分の希望を言ったら、わがままになるのでは」と心配する人もいるでしょう。
アサーションとわがまま・攻撃的な自己主張との違いは、相手の権利も尊重しているかどうかを見ると整理しやすくなります。
たとえば友人から、
「今週末、引っ越しを手伝ってほしい」
と頼まれた場合を考えてみましょう。
自分の希望を抑える場合は、
「本当は予定があるけれど、断ったら悪いから行くよ」
となるかもしれません。
攻撃的に表現する場合は、
「そんなの自分でやれば? いちいち頼まないでよ」
となるかもしれません。
アサーティブに伝えるなら、
「声をかけてくれてありがとう。今週末は予定があるので、今回は手伝えないんだ」
という言い方が考えられます。
違いを整理すると次のとおりです。
| 表現のタイプ | 自分の希望 | 相手への配慮 |
|---|---|---|
| 非主張的 | 抑えやすい | 優先しすぎる |
| 攻撃的 | 強く押し通す | 軽視しやすい |
| アサーティブ | 適切に伝える | 同時に尊重する |
アサーションでは、自分が100%得をすることを目標にしているわけではありません。
相手と希望が異なるなら、必要に応じて話し合ったり、別の案を考えたりします。
「私はこうしたい。でもあなたにはあなたの考えがある」
という状態を認めることが出発点になります。
日常での使い方
アサーション権は、概念を覚えるだけでなく、日常の小さな場面に当てはめてみると理解しやすくなります。
ここでは、人間関係で起こりやすい例を見てみましょう。
仕事を断りたいとき
上司や同僚から追加の仕事を頼まれたとします。
反射的に、
「はい、分かりました」
と言う前に、自分の状況を確認します。
すでに仕事量が多いなら、
「今日中にAとBを仕上げる予定なので、この仕事まで対応するとどれかが遅れそうです。優先順位を相談してもいいでしょうか」
と伝えられます。
ここでは単に拒否するのではなく、
- 現在の状況
- 自分が困る点
- 希望する対応
を伝えています。
職場では役割や指示命令関係もあるため、「何でも自由に断れる」という意味ではありません。ただ、自分の状況を説明したり、優先順位を確認したり、相談したりすることまで諦める必要はありません。
誘いを断りたいとき
友人から食事に誘われたものの、今日は一人で休みたいという場合もあります。
「予定がないのだから行くべき」
と考える必要はありません。
休みたいことも、自分にとっては一つの予定です。
「誘ってくれてありがとう。今日は家でゆっくりしたいから、今回はやめておくね」
と伝える方法があります。
相手が残念に思う可能性はあります。
しかし、相手が残念に思うことと、あなたが断ってはいけないことは同じではありません。
家族と意見が違うとき
家族から進路や仕事、結婚などについて意見を言われることもあります。
相手があなたを心配している場合でも、最終的に自分の人生について考えるのはあなた自身です。
「心配してくれているのは分かっているよ。そのうえで、私はもう少し今の仕事を続けて考えたいと思っている」
というように、
相手の意図を受け止めることと、自分の意思を伝えることを両立させる方法があります。
相手の意見を聞くことは、相手の意見に従うことと同じではありません。
パートナーに希望を伝えるとき
恋人や夫婦の間では、
「言わなくても分かってほしい」
と思うこともあるでしょう。
しかし、自分の希望を相手が正確に察してくれるとは限りません。
「最近、一緒に過ごす時間が少なくて私は少し寂しいと感じている。今週どこかでゆっくり話す時間をつくれないかな」
というように伝えれば、自分の感情と希望を分けて示せます。
ここでも、相手が必ず希望どおりに応じるとは限りません。
アサーションとは、相手を動かす技術ではなく、自分が何を感じ、何を望んでいるのかを適切に伝え、相手の考えも聞くための方法だからです。

権利を伝える基本の流れ
アサーション権を知っても、「実際には何と言えばいいのか分からない」と感じることがあります。
その場合は、次の順番で整理してみてください。
- 起きていることを整理する
「いつも」「絶対」と決めつけず、実際に起きていることをできるだけ具体的に確認します。 - 自分の気持ちや希望を確認する
「私はどう感じているのか」「本当はどうしたいのか」を考えます。正解を探す必要はありません。 - 自分を主語にして伝える
「あなたが悪い」ではなく、「私はこう感じています」「私はこうしたいです」と自分の立場を表します。 - 具体的な希望を伝える
相手にしてほしいことがあるなら、「今後は○○してもらえますか」のように具体的にします。 - 相手の返事を聞く
相手にも断る、意見を言う、別の提案をする権利があります。返事を聞き、必要なら話し合います。
たとえば、家族に毎日のように突然電話をかけてこられて困っている場合、
「毎日突然電話してこないでよ」
だけでは、責められたように感じる人もいるでしょう。
そこで、
「仕事中に電話が来ると対応できなくて困ることがあるんだ。急ぎでなければ、先にメッセージを送ってもらえると助かる」
と伝える方法があります。
これでも相手が納得するとは限りません。
それでも、自分の状況と希望をできるだけ分かりやすく伝えることで、話し合うための材料を示すことはできます。
アサーションでは「完璧な言い方」を探しすぎないことも大切です。少し言葉につまっても、「私は今こう感じています」と自分の気持ちを言葉にできれば、十分な一歩になります。

権利を使うときの注意点

アサーション権は、人間関係を考えるうえで役立つ視点ですが、どんな状況でも同じように使える万能なルールではありません。
いくつか注意しておきたい点があります。
相手を従わせる権利ではない
「私はこう思う」と言うことはできます。
しかし、
「だからあなたは私の言うとおりにしなければならない」
とは限りません。
アサーションの目的は勝ち負けを決めることではなく、お互いの立場をできるだけ明確にすることです。
希望が一致しない場合には、妥協点を探すこともあれば、双方が別々の選択をすることもあります。
法律や契約上の義務とは別に考える
「断る権利がある」という言葉だけを切り取って、法律・契約・仕事上の義務まで無視できると考えるのは適切ではありません。
たとえば職場での業務命令、契約上の約束、保護者としての責任などは、それぞれ別の条件があります。
アサーション権は、法的な判断をするための基準ではありません。
法的な問題が関係する場合には、必要に応じて専門家や公的な相談窓口へ確認してください。
安全を優先したほうがよい場合もある
アサーションを学ぶと、
「どんな相手にも自分の意見をはっきり伝えなければ」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、安全を脅かされる可能性がある状況では、直接自己主張することが最善とは限りません。
暴力、脅迫、ハラスメントなどが疑われる場面では、その場を離れる、第三者へ相談する、適切な相談機関を利用するといった方法が必要になることもあります。
「アサーティブに話せなかった自分が悪い」と考える必要はありません。
アサーションは、危険を我慢してまで使うべき義務ではありません。
うまく言えないときの考え方
アサーション権を知ったからといって、翌日から何でもはっきり言えるようになるとは限りません。
これまで相手に合わせることが多かった人なら、断るだけでも強い緊張を感じることがあります。
そんなときは、大きな場面から変えようとせず、小さな場面から試してみる方法があります。
たとえば、
「今日はコーヒーではなく紅茶にしたい」
「その日は予定があるので別の日がいい」
「少し考えてから返事をしたい」
といった、自分にとって比較的伝えやすい希望から始めます。
そして、伝えたあとに、
「相手を不快にさせなかったか」
だけではなく、
「私は自分の気持ちを適切に伝えられただろうか」
という視点でも振り返ってみましょう。
相手が少し残念そうな顔をしたからといって、自分の伝え方が間違っていたとは限りません。
自分と相手の希望が違えば、残念に感じることはあります。
相手を一切不快にさせないことと、相手を尊重することは同じではありません。
自分の希望を伝えつつ、相手にも返事をする余地を残していたか。
そこを判断基準にすると、アサーションを実践しやすくなります。
まずは「断る」「頼む」「分からないと言う」「少し考える」の中から、自分が最も苦手だと感じるものを一つ選んでみてください。苦手な権利が分かるだけでも、自分が人間関係で何を我慢しやすいのかを見つめる手がかりになります。

アサーション権のよくある質問
- アサーション権は法律上の権利ですか?
-
一般にアサーショントレーニングで扱われる「アサーション権」は、法律上の権利一覧を意味するものではありません。
自分にも意見を言う、断る、考え直す、助けを求めるといった選択肢があると認め、対等なコミュニケーションにつなげるための考え方です。
そのため、法律や契約上の義務まで自由に拒否できるという意味ではありません。
- アサーション権はいくつありますか?
-
世界共通で「必ず○個」と決まっているわけではありません。
アサーショントレーニングの体系や指導者によって、項目数や表現が異なることがあります。
「正しい一覧を暗記する」ことより、自分にも相手にも意見・感情・選択を持つ余地があるという共通する考え方を理解するとよいでしょう。
- 断ることは相手を傷つけませんか?
-
相手が残念に感じる可能性はありますが、相手が残念に感じることと、あなたが断ってはいけないことは同じではありません。
「嫌だから無理」と突き放すのではなく、
「誘ってくれてありがとう。ただ、その日は予定があるので今回は難しいです」
というように、相手への配慮と自分の意思を両方表現できます。
相手を尊重することは、すべての依頼を受け入れることではありません。
- 相手が断ってきた場合も受け入れるべきですか?
-
相手にも断る権利があります。
あなたがお願いをすることができるのと同じように、相手も「できません」と答えることができます。
ただし、そこで話し合いが終わるとは限りません。
「では別の日ならどうですか」「別の方法を考えませんか」と相談することも可能です。
アサーションでは、要求を通すことより、双方の希望を明確にしたうえで必要に応じて調整することを大切にします。
- アサーション権を意識するとわがままになりませんか?
-
自分の権利だけを主張し、相手の気持ちや選択を無視すれば、アサーションとは異なるものになっていきます。
アサーションの基本は、
「私にも権利がある。そして、あなたにも同じように権利がある」
という対等な視点です。
自分の希望を伝えたあとに、「相手はどう考えているだろう」と耳を傾ける余地を残せているかを確認すると、自己中心的な要求との違いを判断しやすくなります。
まとめ
アサーション権とは、自分の気持ち、意見、希望、選択を大切にし、それらを適切に表現することを自分に認めるための考え方です。
代表的には、
- 断る
- 考えを変える
- 間違える
- 分からないと言う
- 助けを求める
- 自分の意見を持つ
- 気持ちを表現する
- すぐに答えず考える
- 自分で選ぶ
といった内容があります。
ただし、アサーション権は「自分の要求を相手に受け入れさせる権利」ではありません。
自分に断る権利があるなら、相手にも断る権利があります。自分に意見を言う権利があるなら、相手にも違う意見を言う権利があります。
この対等さこそが、アサーションの大切な土台です。
もしあなたがいつも相手を優先してしまうなら、最初から大きく自己主張を変えなくてもかまいません。
まずは日常の中で、
「私は本当はどうしたいのだろう」
と自分に尋ねてみてください。
そして「断る」「少し考える」「助けを求める」など、これまで自分に許してこなかった選択肢を一つだけ試してみることが、自分と相手の両方を尊重するコミュニケーションへの次の一歩になります。


